暗号資産(仮想通貨)を取引所に預けていると、自分に落ち度がなくても不利益を受けることがあります。取引所の破綻や出金の停止、口座の凍結のように資産を動かせなくなるものから、告知のない手数料の変更や取扱銘柄の上場廃止まで、原因が事業者の側にあるトラブルです。株式会社Claboが暗号資産の保有経験がある300人に尋ねたところ、こうしたトラブルのいずれかをこれまでに経験した方は42.3%にのぼりました。一方で、国内の取引所が破綻したときに預けた暗号資産がどう扱われるかを正しく答えられた方は27.0%でした。本記事では、トラブルに遭った方の資産がどうなったのか、そして「もしものとき」の仕組みがどこまで知られているのかを、調査結果から読み解きます。

この調査でわかったこと

  • 事業者側の事情によるトラブル(破綻・出金停止・口座凍結・システム障害・告知のない手数料などの変更・上場廃止)のいずれかを、これまでに経験した方は42.3%(127人/回答者300人)でした。
  • 経験した127人に、最も困ったトラブルで預けていた資産がどうなったかを尋ねると、「全額が手元に戻った」は33.9%(43人)でした。「一部が戻り、一部は戻らなかった」「まったく戻らなかった」は合わせて52.8%(67人)です。
  • 二段階認証のアプリや端末、登録していたメールアドレスなどを失い、口座にログインできなくなった経験がある方は43.7%(131人/300人)でした。復旧の手続きをした109人に限ると、44.0%(48人)はまだ復旧できていません。
  • 国内の取引所が破綻した場合の扱いを正しく答えた方は27.0%(81人/300人)です。16.0%(48人)は「銀行預金と同じように、公的な制度で一定額まで保護される」と考えていました。
  • 海外の取引所に預けた資産は、国内と同じ保護を受けられないと答えた方は31.7%(95人/300人)でした。20.7%(62人)は「日本人が利用している以上、同じ保護を受けられる」と答えています。
  • 預け先のトラブルに備えて「特に何もしていない」方は45.0%(135人)でした。

いま取引所に暗号資産を預けている方は、記事の後半にある【確認リスト】事業者トラブルに備えて確かめたい3つのことから先にお読みください。

本調査の分母と範囲

  • 回答者 300人(トラブルの経験・ログイン手段の喪失・正解のある設問・置き場所と備えの分母)
  • └ 事業者側のトラブルを経験した 127人(42.3%)=最も困ったトラブルについて、時期・金額・解決までの期間・行動・資産の行方・困ったことを尋ねた分母
  • └ ログインの手段を失い、口座に入れなくなった経験がある 131人(43.7%)
  • └ そのうち、手続きをして復旧できた 61人=復旧までの期間を尋ねた分母
  • 本調査の「事業者側のトラブル」には、詐欺やハッキングなど第三者による被害は含みません。

事業者側のトラブルを経験した人は42.3%|破綻から上場廃止まで6種類の内訳

取引所やウォレットのサービスを提供する事業者の側の事情で起きたトラブルについて、6つの種類を示し、経験したものをすべて選んでもらいました。1つ以上を経験した方は42.3%(127人)で、「いずれも経験がない」は57.7%(173人)でした。

事業者側の事情で起きたトラブルの経験(複数回答/分母=回答者300人)

トラブルの種類

%

人数

取扱いのあった銘柄が上場廃止になった

14.0%

42

長時間のシステム障害で売買や入出金ができなかった

13.7%

41

事前の告知なくサービス内容や手数料が変更された

12.0%

36

自分の口座が凍結された、利用を制限された

10.0%

30

事業者が破綻した、またはサービスを終了した

9.0%

27

出金や送金が停止された、大幅に遅れた

8.7%

26

いずれも経験がない

57.7%

173

6つの種類は8.7%〜14.0%の範囲に収まり、特定の種類に偏ってはいません。上場廃止(14.0%)とシステム障害(13.7%)の差は1人です。破綻や出金停止のような大きな出来事だけでなく、システム障害や告知のない手数料の変更まで、事業者側の事情は幅広い形で利用者に及んでいます。

なお、この42.3%は「これまでに」経験した方の割合で、1年あたりの発生率ではありません。口座の凍結や出金停止に直面したときの原因別の対処は暗号資産の口座凍結・出金停止の解除方法で、過去に起きた取引所の破綻事例は暗号資産の代表的な事件で解説しています。

トラブル後の資産|全額戻ったのは33.9%

トラブルを経験した127人には、6つの種類のうち最も困ったものを1つ選んでもらいました。そのうえで、その1件について、起きた時期、預けていた金額、解決までの期間、最初にとった行動、資産の行方を尋ねています。

最も困ったトラブルの内容・時期・金額

最も困ったトラブルは、「出金や送金の停止・遅延」が33.9%(43人)で最も多くなりました。「口座の凍結・利用制限」(22.8%)と「事業者の破綻・サービス終了」(18.1%)が続きます。いずれも、預けた資産を自分の意思で動かせなくなるトラブルです。

最も困った事業者側のトラブル(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

トラブルの種類

%

人数

出金や送金の停止・遅延

33.9%

43

口座の凍結・利用制限

22.8%

29

事業者の破綻・サービス終了

18.1%

23

長時間のシステム障害

11.8%

15

告知なきサービス内容や手数料の変更

9.4%

12

取扱銘柄の上場廃止

3.9%

5

最も困ったものとして「出金や送金の停止・遅延」を選んだ方は43人で、トラブルの経験を尋ねた設問でこれを選んだ26人を上回っています。経験として選ばなかった種類を、最も困ったものとして選んだ方がいる計算になり、2つの設問の回答は整合していません。そのため本記事では、2つの設問を結びつけた読み方はしていません。

トラブルが起きた時期は、「1年以上3年未満」が42.5%(54人)、「3年以上5年未満」が30.7%(39人)で、「1年未満」は7.9%(10人)でした。

最も困ったトラブルが起きた時期(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

時期

%

人数

1年未満

7.9%

10

1年以上3年未満

42.5%

54

3年以上5年未満

30.7%

39

5年以上前

13.4%

17

覚えていない

5.5%

7

そのとき事業者に預けていた資産は、「50万円以上100万円未満」が33.1%(42人)で最も多く、50万円以上を合わせると54.3%(69人)でした。少額を試しに預けていた場面ばかりではないことがわかります。

トラブルが起きたときに預けていた資産(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

金額

%

人数

10万円未満

17.3%

22

10万円以上50万円未満

24.4%

31

50万円以上100万円未満

33.1%

42

100万円以上500万円未満

14.2%

18

500万円以上

7.1%

9

そのとき資産は預けていなかった

2.4%

3

覚えていない

1.6%

2

資産の行方と解決までの期間

預けていた資産が最終的にどうなったかを尋ねると、「全額が手元に戻った」は33.9%(43人)でした。「一部が戻り、一部は戻らなかった」が30.7%(39人)、「まったく戻らなかった」が22.0%(28人)で、一部または全部が戻らなかった方は合わせて52.8%(67人)です。「現在も手続きや話し合いが続いている」は7.9%(10人)でした。

預けていた資産の最終的な行方(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

資産の行方

%

人数

全額が手元に戻った

33.9%

43

一部が戻り、一部は戻らなかった

30.7%

39

まったく戻らなかった

22.0%

28

現在も手続きや話し合いが続いている

7.9%

10

そのとき資産は預けていなかった

5.5%

7

この設問は、最も困ったトラブル1件についての回答です。トラブルの種類はさまざまで、システム障害や手数料の変更のように、資産の返還が問題になりにくいものも含まれます。そのため、トラブルの種類ごとに資産が戻った割合を示すことはできません。また「戻らなかった」は人数の割合で、失った金額の割合ではありません。

トラブルを経験した方への設問で「そのとき資産は預けていなかった」と答えた方(金額の設問で3人、この設問で7人)は、設問の前提と整合しない回答のため、本記事では解釈に使っていません。

解決までの期間は、「1週間以上1か月未満」が37.8%(48人)で最も多くなりました。1か月以上かかった方と、現在も解決していない方を合わせると30.7%(39人)です。事業者側のトラブルは、数日で片づくとは限りません。

トラブルの解決までにかかった期間(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

期間

%

人数

1日以内

5.5%

7

2日以上1週間未満

17.3%

22

1週間以上1か月未満

37.8%

48

1か月以上半年未満

17.3%

22

半年以上

10.2%

13

現在も解決していない

3.1%

4

解決する性質のものではない

4.7%

6

覚えていない

3.9%

5

最初の行動と困ったこと

トラブルが起きたとき最初にとった行動は、「事業者の公式サイトや公式SNSで告知を探した」が32.3%(41人)、「SNSや掲示板で他の利用者の状況を確認した」が25.2%(32人)でした。「金融庁や消費生活センターなどの公的な窓口に相談した」(15.7%)と「事業者のサポート窓口に問い合わせた」(15.0%)は、ほぼ並びます。まずは自分で情報を集めようとする方が多いことがうかがえます。

トラブルが起きたときに最初にとった行動(単一回答/分母=トラブルを経験した127人)

行動

%

人数

事業者の公式サイトや公式SNSで告知を探した

32.3%

41

SNSや掲示板で他の利用者の状況を確認した

25.2%

32

金融庁や消費生活センターなどの公的な窓口に相談した

15.7%

20

事業者のサポート窓口に問い合わせた

15.0%

19

特に何もせず、状況が変わるのを待った

9.4%

12

弁護士などの専門家に相談した

2.4%

3

その他

0.0%

0

困ったことは、上位の4項目が23.6%〜26.8%の範囲に並び、特定の項目に偏ってはいませんでした。見通しが立たない、別の取引所に資産を移せない、税金の扱いが分からない、事業者の説明が足りないといった困りごとが、同じくらいの割合で挙がっています。「特に困らなかった」は4.7%(6人)にすぎず、ほとんどの方が何らかの困りごとを抱えていました。

トラブルのときに困ったこと(複数回答/分母=トラブルを経験した127人)

困ったこと

%

人数

いつ解決するのか見通しが分からなかった

26.8%

34

他の取引所に資産を移せず、売買の機会を逃した

26.0%

33

税金の扱いがどうなるか分からなかった

25.2%

32

事業者から十分な説明がなかった

23.6%

30

どこに相談すればよいか分からなかった

20.5%

26

手続きが煩雑で負担が大きかった

19.7%

25

事業者と連絡が取れなかった

16.5%

21

特に困らなかった

4.7%

6

「どこに相談すればよいか分からなかった」と答えた方も20.5%(26人)いました。事業者側のトラブルで相談先に迷ったときは、金融庁の金融サービス利用者相談室や、身近な消費生活センターを案内する消費者ホットライン(188)を利用できます。

ログイン手段を失った経験は43.7%|復旧をめぐる楽観と悲観の誤解

ここからは、事業者側の事情ではなく、利用者がログインの手段を失った場面を見ていきます。原因は利用者の側にあっても、口座を取り戻すには事業者の手続きに頼るしかありません。

二段階認証のアプリや端末、登録していたメールアドレスなどを失い、取引所の口座にログインできなくなった経験がある方は43.7%(131人)でした。内訳は、手続きをして復旧できた方が20.3%(61人)、手続きをしたが復旧できていない方が16.0%(48人)、手続きをせず放置した方が7.3%(22人)です。復旧の手続きをした109人に限ると、44.0%(48人)はまだ口座を取り戻せていません。

ログイン手段を失い、口座に入れなくなった経験(単一回答/分母=回答者300人)

回答

%

人数

あり、手続きをして復旧できた

20.3%

61

あり、手続きをしたが、復旧できていない

16.0%

48

あり、復旧の手続きをせず放置した

7.3%

22

経験はない

56.3%

169

復旧できた61人に期間を尋ねると、「2日以上1週間未満」が50.8%(31人)で、「1日以内」の16.4%(10人)と合わせて67.2%(41人)が1週間未満で復旧していました。「1週間以上1か月未満」は24.6%(15人)、「1か月以上」は6.6%(4人)です。

ログインの復旧までにかかった期間(単一回答/分母=手続きをして復旧できた61人)

期間

%

人数

1日以内

16.4%

10

2日以上1週間未満

50.8%

31

1週間以上1か月未満

24.6%

15

1か月以上

6.6%

4

覚えていない

1.6%

1

二段階認証のアプリを入れた端末を失った場合に口座がどうなるかも、正解のある設問で尋ねました。正解の「本人確認を含む所定の手続きが必要で、すぐに元に戻せるとは限らない」を選んだのは44.3%(133人)でした。「サポートに連絡すれば、その日のうちに解除してもらえる」という楽観的な誤解が18.0%(54人)、「一度失うと、二度とログインできなくなる」という悲観的な誤解が10.0%(30人)で、誤解は合わせて28.0%(84人)です。「わからない」は27.7%(83人)でした。

二段階認証の端末を失った場合の口座の扱い(単一回答/分母=回答者300人)

回答

%

人数

本人確認を含む所定の手続きが必要で、すぐに元に戻せるとは限らない(正解)

44.3%

133

わからない

27.7%

83

サポートに連絡すれば、その日のうちに解除してもらえる

18.0%

54

一度失うと、二度とログインできなくなる

10.0%

30

国内の主要な取引所の公式案内を確認すると、手続きは取引所ごとに異なります。本人確認をしたうえで二段階認証を解除する取引所(bitFlyerのよくある質問)もあれば、解除そのものには応じず、問い合わせを通じてSMSや電話による認証に切り替える取引所(GMOコインのサポート)もあります。登録したメールアドレスと電話番号が変わっていなければ、利用者自身で解除できる取引所(コインチェックのよくある質問)もあります。いずれの案内にも、復旧にかかる日数は書かれていません。

「サポートに連絡すれば、その日のうちに解除してもらえる」と考えていると、手続きが長引いたときに慌てることになります。復旧するまでの間は、売買も出金もできません。反対に「一度失うと、二度とログインできなくなる」と思い込むと、戻せたはずの口座を放置することになりかねません。ログインできなくなったときの原因別の対処は、二段階認証が使えない原因と対処法で解説しています。

もしものときの保護|分別管理を正しく答えた人は27.0%

取引所が破綻したときに、預けていた暗号資産がどう扱われるかについても尋ねています。国内の取引所(法律上の呼び名は「暗号資産交換業者」)に預けた場合と、海外の取引所に預けた場合の2つについて、正解のある設問で理解度を確かめました。

国内の交換業者が破綻したとき

国内の交換業者が破綻した場合に預けていた暗号資産がどうなるかを尋ねたところ、正解の「法令で会社の資産と分けて管理することが義務づけられており、返還される仕組みがある」を選んだのは27.0%(81人)でした。「銀行預金と同じように、公的な制度で一定額まで保護される」が16.0%(48人)、「会社の資産と一体で扱われるため、返還は期待できない」が21.3%(64人)で、誤解は合わせて37.3%(112人)です。最も多かったのは「わからない」の35.7%(107人)でした。

国内の交換業者が破綻した場合の預け資産(単一回答/分母=回答者300人)

回答

%

人数

わからない

35.7%

107

法令で会社の資産と分けて管理することが義務づけられており、返還される仕組みがある(正解)

27.0%

81

会社の資産と一体で扱われるため、返還は期待できない

21.3%

64

銀行預金と同じように、公的な制度で一定額まで保護される

16.0%

48

資金決済法は、暗号資産交換業者に対し、利用者から預かった暗号資産を自社の暗号資産と分けて管理すること(分別管理)と、利用者の金銭を信託会社などに信託することを義務づけています(資金決済法 第63条の11)。さらに、交換業者が倒産した場合、利用者は分けて管理された暗号資産などから、ほかの債権者に先立って弁済を受ける権利を持ちます(同法 第63条の19の2)。金融庁はこの規定を、交換業者の倒産時に預かっていた暗号資産を顧客に優先的に返還するためのものと説明しています(金融庁の制度整備に関する資料)。

ただし、これは全額の返還を保証する制度ではありません。優先して返還を受けられるのは分けて管理された資産の範囲に限られ、足りない分を補う公的な制度はありません。預金保険の対象となる金融機関は銀行や信用金庫などに限られ、暗号資産交換業者は含まれていません(預金保険法 第2条)。銀行預金と同じように保護されると考えた16.0%の方は保護を大きく見積もり、返還は期待できないと考えた21.3%の方は小さく見積もっていることになります。

返還の仕組みがあっても、すぐに戻るとは限りません。国内の登録業者だったFTX Japanは、2022年11月、親会社を含むFTXグループの経営危機を受けて、関東財務局から業務停止命令と、資産を国内に保有するよう求める命令を受けました(金融庁の公表資料)。翌12月に命令が延長された際の公表文には、同社が出金・出庫サービスの再開に向けてシステム開発に取り組んでいるものの、「再開の具体的な時期について示せる段階にはない」と記されています(関東財務局の公表資料)。報道によれば、分けて管理されていた資産の出金が再開されたのは2023年2月で、約3か月半かかりました。取引所が倒産したときの資産の扱いは、暗号資産取引所が倒産したら資産はどうなるかで詳しく解説しています。

海外の取引所に預けたとき

海外の取引所に預けた資産が、日本国内の取引所と同じ保護を受けられるかも尋ねました。「日本の法令の対象外なので、同じ保護は受けられない」を選んだのは31.7%(95人)です。「日本人が利用している以上、同じ保護を受けられる」は20.7%(62人)、「取引所によっては、日本と同等の保護を受けられる」は14.0%(42人)、「わからない」は33.7%(101人)でした。

海外取引所に預けた資産は国内と同じ保護か(単一回答/分母=回答者300人)

回答

%

人数

わからない

33.7%

101

日本の法令の対象外なので、同じ保護は受けられない(正解)

31.7%

95

日本人が利用している以上、同じ保護を受けられる

20.7%

62

取引所によっては、日本と同等の保護を受けられる

14.0%

42

日本に住む人を相手に暗号資産の交換業を営むには、資金決済法にもとづく登録が必要です(第63条の2)。登録を受けていない海外の業者が日本の居住者を勧誘することも禁じられています(第63条の22)。先に見た分別管理や優先的な返還の仕組みは、登録を受けた交換業者に課されたものです。そのため、日本で登録を受けていない海外の取引所に預けた資産には、これらの保護が及びません。選択肢にある「日本の法令の対象外」というより、「日本の登録を受けていないため、利用者を守る規定の対象にならない」と理解するのが正確です。

金融庁も、無登録の業者については「投資者等の保護のための態勢が確保されているか」を当局で確認できないと注意を呼びかけています(金融庁「無登録業者との取引は要注意」)。無登録で日本の居住者を勧誘している海外の業者には警告書を出し、その名称を公表しています(金融庁の警告書の発出先一覧)。

FTX Japanの例でも、この違いは表れました。報道によれば、FTX Japanの分として約10万人・190億円が返還の対象になった一方、モバイルアプリから海外のFTXを利用していた分(10億円超)は、FTX Japanの分別管理の対象外として返還の対象から外されています(東洋経済オンライン)。

なお、「取引所によっては、日本と同等の保護を受けられる」という回答(14.0%)も、一概に誤りとは言えません。海外の大手取引所が日本法人を設けて日本で登録を受けている場合、その日本法人の口座は国内の登録業者の口座として扱われるからです。大切なのは、自分が使っている口座が、日本で登録を受けた業者のものかどうかです。海外取引所を使うときのリスクは、海外の暗号資産取引所は危険かで整理しています。

暗号資産の規制については、2026年7月に金融商品取引法などの改正法が成立し、今後は資金決済法から金融商品取引法へ移る予定です(金融庁の法案説明資料)。施行は公布から1年以内とされており、本記事の制度の説明は2026年9月時点の法令にもとづいています。

資産の置き場所と備え|「特に何もしていない」は45.0%

最後に、いまの資産の置き場所と、預け先のトラブルへの備えを尋ねました。まず、これまでに口座を開設したことのある取引所の数は、「1社」が43.7%(131人)で最も多くなりました。1社の口座しか持っていないと、その取引所が止まったときに、資産を移したり売買を続けたりできる別の取引所がありません。

口座を開設したことのある取引所の数(単一回答/分母=回答者300人)

取引所の数

%

人数

1社

43.7%

131

2社

24.0%

72

3社

10.7%

32

4社以上

7.7%

23

覚えていない

14.0%

42

現在の置き場所は、「1つの取引所にまとめている」が29.3%(88人)、「複数の取引所に分けている」が23.7%(71人)でした。自分のウォレットに分けている方や移している方は、合わせても2割に届きません。

現在の暗号資産の置き場所(単一回答/分母=回答者300人)

置き場所

%

人数

1つの取引所にまとめている

29.3%

88

複数の取引所に分けている

23.7%

71

取引所と自分のウォレットに分けている

12.3%

37

ほとんどを自分のウォレットに移している

5.7%

17

特に決めていない

19.7%

59

現在は保有していない

9.3%

28

預け先のトラブルに備えて行っていることを尋ねると、「特に何もしていない」が45.0%(135人)でした。この設問は、現在は暗号資産を保有していない方も含めた回答者全員に尋ねています。行っている備えは、「複数の取引所に資産を分けている」と「二段階認証の復旧用コードを控えている」がいずれも17.0%(51人)で、ほかの4つも15.0%〜16.7%と、どれも1割台半ばに並んでいます。

事業者のトラブルに備えて行っていること(複数回答/分母=回答者300人)

備え

%

人数

複数の取引所に資産を分けている

17.0%

51

二段階認証の復旧用コードを控えている

17.0%

51

使わない資産は自分のウォレットに移している

16.7%

50

取引履歴や残高のスクリーンショットを保存している

16.3%

49

金融庁への登録の有無を確認している

16.3%

49

事業者の財務状況や運営会社を確認している

15.0%

45

特に何もしていない

45.0%

135

「金融庁への登録の有無を確認している」方は16.3%でした。前の章で見たとおり、分別管理や優先的な返還の仕組みは、日本で登録を受けた業者に限って働きます。登録の有無は、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧で確認できます。

自分のウォレットに移せば、事業者のトラブルからは切り離せます。ただしその代わりに、秘密鍵やシードフレーズを自分で管理する責任を負うことになります。ウォレットの種類と選び方は暗号資産ウォレットの種類で、取引所に預けたままにしている方の実態は長期保有者の取引所放置に関する調査や長期保有者の保管基準に関する調査で扱っています。

【確認リスト】事業者トラブルに備えて確かめたい3つのこと

本調査で誤解が多かった点を、確認する順に並べました。いま取引所に資産を預けている方は、手元の口座について確かめてみてください。

A:預け先の登録の有無

  • 使っている取引所が、金融庁の暗号資産交換業者登録一覧に載っているかを確認してください。分別管理と優先的な返還の仕組みは、日本で登録を受けた業者に限って働きます。
  • 海外の取引所を使っている場合は、口座が日本法人のものか、海外の本体のものかを確かめてください。FTX Japanの例では、海外のFTXを利用していた分は返還の対象から外れました。
  • 本調査では20.7%の方が「日本人が利用している以上、同じ保護を受けられる」と考えていました。

B:「返還される仕組み」の範囲

  • 国内の登録業者が破綻しても、利用者は分けて管理された資産から優先して返還を受けられます。ただし全額の保証ではなく、返還までに時間がかかることもあります。
  • 預金保険のような公的な補償はありません。本調査で正しく答えた方は27.0%で、16.0%は銀行預金と同じように保護されると考えていました。
  • 資産を1つの取引所にまとめている方(29.3%)は、置き場所を分けることも選択肢に入れてください。1社が止まっても、別の口座で売買や出金を続けられます。

C:ログイン手段を失ったときの備え

  • 二段階認証の復旧用コードと、取引所に登録しているメールアドレス・電話番号を控えておいてください。機種変更の前には、認証アプリの移し方を確認しておくと安心です。
  • 失った場合は、取引所の案内に沿って本人確認などの手続きを進めます。復旧までの日数は、各取引所の案内に示されていません。本調査で正しく答えた方は44.3%でした。
  • 手続きの詳細は二段階認証が使えない原因と対処法で確認できます。

まとめ:トラブルの身近さと、追いつかない制度の理解

取引所やウォレットの事業者側の事情によるトラブルは、本調査の回答者の42.3%が経験していました。経験した127人のうち、最も困ったトラブルで預けていた資産が全額戻った方は33.9%にすぎません。ログインの手段を失った経験がある方も43.7%おり、手続きをした方の44.0%はまだ復旧できていません。

一方で、「もしものとき」の仕組みはあまり知られていません。国内の取引所が破綻したときの扱いを正しく答えられた方は27.0%で、海外の取引所でも日本人なら同じ保護を受けられると考えた方が20.7%いました。トラブルの身近さに対して、制度の理解が追いついていません。預け先のトラブルに備えて「特に何もしていない」方も45.0%います。

国内の登録業者には、預かった資産を分けて管理し、破綻したときに優先して返還する仕組みがあります。ただしそれは全額の保証ではなく、日本で登録を受けていない業者には及びません。預け先が登録業者かどうか、1か所にまとめすぎていないか、ログインの手段を失ったときの備えがあるかを、確認リストで一度確かめておくことをおすすめします。

調査概要と数値の読み方

調査名:暗号資産の事業者リスクに関する実態調査

調査主体:株式会社Clabo

調査方法:インターネットリサーチ(モニタパネル)

調査期間:2026年9月16日

調査対象:暗号資産を現在保有している、または過去に保有していた方

有効回答数:300

回答者の構成:男性233人(77.7%)、女性67人(22.3%)です。年代は40代29.3%、50代26.3%、60代以上20.0%、30代18.0%、20代6.3%で、40代以上が75.7%を占めます。既婚59.7%・未婚40.3%で、職業は会社員(正社員)が57.7%です。

回答者の暗号資産の投資歴(単一回答/分母=回答者300人)

投資歴

%

人数

半年未満

14.3%

43

半年以上1年未満

18.7%

56

1年以上3年未満

27.0%

81

3年以上5年未満

15.3%

46

5年以上

24.7%

74

回答者の現在の暗号資産の保有額(単一回答/分母=回答者300人)

保有額

%

人数

10万円未満

24.0%

72

10万円以上50万円未満

15.7%

47

50万円以上100万円未満

21.7%

65

100万円以上500万円未満

13.7%

41

500万円以上

8.3%

25

現在は保有していない

16.7%

50

回答者の暗号資産の投資スタイル(単一回答/分母=回答者300人)

投資スタイル

%

人数

長期保有が中心

41.0%

123

数か月単位の売買

23.0%

69

短期売買が中心

8.7%

26

決めていない

27.3%

82

数値の読み方について、10点を補足します。

  • 本調査は設問ごとに分母が変わります。回答者300人、事業者側のトラブルを経験した127人、ログインの手段を失い手続きをして復旧できた61人のほか、本文ではログインの手段を失った131人と、そのうち手続きをした109人を分母にした割合も示しています。割合はすべて何を分母としたかを明示しています。
  • 合計の割合は人数から計算しているため、各項目の割合を足した値と0.1ポイント異なる場合があります。
  • トラブルの時期・金額・解決までの期間・最初の行動・資産の行方・困ったことは、最も困ったトラブル1件についての回答です。トラブルの種類ごとには集計していません。
  • 最も困ったトラブルの設問では、トラブルの経験を尋ねた設問で選ばなかった種類を選んだ方がいる計算になり、2つの設問の回答は整合していません。本記事では2つを結びつけた読み方はしていません。
  • 「現在は保有していない」と答えた方は、置き場所の設問では28人、保有額の設問では50人で、設問によって一致していません。
  • 正解のある設問(二段階認証の端末を失った場合・国内の取引所の破綻・海外の取引所の保護の3問)の正解は、本記事で示した制度に基づいて判定しています。
  • トラブルの経験の有無と、置き場所や備えの回答は、回答者ごとに突き合わせていません。
  • 複数回答の設問(トラブルの経験、困ったこと、トラブルへの備え)は、各項目の人数を足し合わせても分母にはなりません。
  • トラブルを経験した127人を性別に分けると女性は34人で、分母が50人を下回るため参考値の扱いになります。本記事では性別の比較を扱っていません。回答者の75.7%が40代以上で、20代は19人です。結果はこの構成を反映しています。
  • 図解の割合は小数第2位まで表示しています。本文と表の割合は、人数を分母で割って小数第1位に丸めた値ですので、図解の表示と末尾の桁が異なる場合があります。

主な調査設問

本調査で実際に尋ねた設問は次のとおりです。SAは単一回答、MAは複数回答を表します。

  • 対象条件:暗号資産を現在保有している、または過去に保有していた方
  • Q1 口座を開設したことのある暗号資産取引所の数(SA)
  • Q2 取引所やウォレットの事業者側の事情で起きたトラブルの経験(MA)
  • Q3 経験したトラブルのうち、最も困ったもの(SA)
  • Q4 そのトラブルが起きた時期(SA)
  • Q5 そのとき事業者に預けていた資産の額(SA)
  • Q6 解決までにかかった期間(SA)
  • Q7 最初にとった行動(SA)
  • Q8 預けていた資産の最終的な行方(SA)
  • Q9 そのとき困ったこと(MA)
  • Q10 二段階認証の手段や登録メールアドレスなどを失い、口座にログインできなくなった経験(SA)
  • Q11 復旧までにかかった期間(SA)
  • Q12 二段階認証のアプリを入れた端末を失った場合、取引所の口座はどうなると思うか(SA)
  • Q13 現在の暗号資産の置き場所(SA)
  • Q14 預け先の事業者のトラブルに備えて行っていること(MA)
  • Q15 国内の暗号資産交換業者が破綻した場合、預けていた暗号資産はどうなると思うか(SA)
  • Q16 海外の暗号資産取引所に預けた資産は、日本国内の取引所と同じ保護を受けられると思うか(SA)
  • Q17〜Q19 暗号資産の投資歴・現在の保有額・投資スタイル(SA)
  • 属性:年代/性別/居住地/未既婚/職業/業種/世帯年収/居住形態/子どもの有無

Q3〜Q9はQ2で1つ以上のトラブルを選んだ方に、Q11はQ10で「あり、手続きをして復旧できた」と答えた方に尋ねました。設問文の全文や、本記事に掲載していない集計についてはお問い合わせください。

本調査データの引用について

本記事の調査結果は、出典を明記いただければ引用・転載いただけます。図表もあわせてご利用いただけます。

出典:株式会社Clabo「暗号資産の事業者リスクに関する実態調査」(2026年9月/有効回答300)

Webメディア・ニュース記事でご利用の場合は、あわせて本記事へのリンクをお願いいたします。本調査は設問ごとに分母が異なりますので、数値を引用される際は分母を必ず併記してください。とくにトラブルの内容・資産の行方・解決までの期間はトラブルを経験した127人、ログインの復旧期間は復旧できた61人が分母であり、回答者300人を分母にした数値ではありません。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、投資助言・法律上の助言ではありません。特定の事業者の利用を勧めたり、評価したりするものではありません。個別のトラブルについては、利用している事業者のほか、公的な相談窓口や弁護士などの専門家にご相談ください。

掲載している数値は回答者の自己申告に基づくアンケート結果であり、実際の経験や理解度と一致することを保証するものではありません。調査結果は2026年9月時点の回答に基づきます。制度や事例の記述は2026年9月時点の情報です。