国内の振込は数秒で終わり、手数料も数百円で済む。ところが同じ金額を海外に送ろうとすると、一日以上かかり、数パーセントが消える。100万円なら6万円だ。技術が遅れているからではない。原因はもっと動かしがたいところにある。そこに、国境が存在するからだ。
砂時計を思い浮かべてほしい。上も下も広いのに、真ん中だけが細くくびれている。国境をまたぐお金は、必ずこのくびれを通る。そして、そこに陣取っているのはごく少数の銀行だ。この砂時計の細い部分を、ここでは「首」と呼ぶ。手数料と待ち時間は、距離の対価ではない。首の通行料である。
2026年、日本では円建てステーブルコインによる実店舗決済が始まり、国内初のUSDCレンディングも登場した。首を通らずにお金を送る経路が、制度上の可能性から実際に使えるものへ変わりつつある年だ。一方、7月に成立した改正金融商品取引法の施行は2027年度中で、何をどこまで通すかの線はこれから引かれようとしている。
国境をまたぐお金は、必ず誰かの首を通る
アメリカのベンチャーキャピタルVariantのDaniel Barabander氏が公開した「Hourglass Markets(砂時計市場)」という論考がある。砂時計市場とは、価値がひとつの信頼の層から別の層へ移らなければならないのに、細い仲介者の首を通るしかない市場のことだ。
説明はスーパーのレジから始まる。会計のときに「50米ドル、30日後に払います」と書いた借用書を差し出したら、笑われて追い返されるだろう。商品は今もらうのに支払いは後で、店はあなたが約束を守るか知らないからだ。
ではなぜ、現実の支払いは成立しているのか。あなたと店が同じ銀行に口座を持っていれば、双方がその銀行を信じているので、帳簿の書き換えだけで決済が終わる。信頼が、共通の一段上の層に集約された。別々の銀行なら、もう一段上へ積む。両行が中央銀行に口座を...
