暗号資産の長期保有において、あなたは資産をどのように管理していますか。
本調査では、暗号資産投資家を対象に、保管先の実態や移行の判断基準を分析しました。

結果として、46.9%の投資家が利便性の高い取引所を保管先として選ぶ一方、年齢や経験年数、保有額によって管理手法が大きく分かれることが判明しました。
特にハードウェアウォレットの所有率(55.9%)と実利用率(11.3%)には、無視できない乖離が存在しています。

本記事では、世代ごとの傾向や保有資産額に応じた移行基準を深掘りします。
なぜこれほど多くの投資家が取引所を利用し続けるのか、そして真の自己管理へと踏み出すためのヒントを紐解きます。

長期保有の暗号資産46.9%が取引所に放置

保管先の約半数が取引所利用を選択

保管先

回答数

割合

取引所に放置

350

46.9%

ソフトウェアウォレット

211

28.3%

複数に分散して保管

101

13.5%

ハードウェアウォレット

84

11.3%

長期保有者に対し、資産の保管先を尋ねた結果、46.9%という半数近い投資家が「取引所に放置」していることが明らかになりました。
暗号資産を安全に管理する重要性が啓蒙される一方で、依然として利便性を優先して取引所に預け入れたままの層が大多数を占めているのが実情です。

手軽に取引できるメリットがある反面、取引所破綻やセキュリティ事故のリスクを考慮すれば、この数値は決して看過できません。
セキュリティ対策が叫ばれる昨今においても、現実的な管理手法は依然として取引所に依存しているという構図です。

多くの投資家にとって、自己管理のハードルは依然として高いものなのでしょう。
利便性とセキュリティのバランスについて、改めて一考を促す必要性があるといえます。

ソフトウェアウォレット利用は28.3%

取引所への預け入れに次いで多かった回答は、28.3%の「ソフトウェアウォレット」という結果でした。
インストールして利用するウォレットはモバイル端末との相性も良く、取引所から脱却するための初歩的なステップとして多くの投資家に選ばれています。

取引所に資産を置いたままにするリスクを回避しつつ、ハードウェアウォレットほど導入コストをかけたくない層の受け皿となっているようです。
一方で、分散管理やハードウェアウォレットを選択する層は限定的です。

分散して保管する投資家は13.5%、専用デバイスを用いるハードウェアウォレット利用者は11.3%に留まりました。
強固なセキュリティを求める層は、投資家全体から見ればまだ少数派であるといえます。

ウォレット移行未経験が約4割に達する

項目

回答数

割合

移行したことがある

463

62.1%

移行したことがない

283

37.9%

ウォレットへの移行経験を尋ねた項目では、37.9%が「移行したことがない」と回答しました。
つまり、長期保有者であっても約3人に1人以上は、購入した取引所以外に資産を移動させた経験がないことになります。

保有資産を自ら管理下に置くという行為は、初心者には心理的・技術的な障壁が高いのかもしれません。
対して、62.1%の投資家は取引所以外の管理方法を一度は試しているというデータも出ました。

この数字は、一度試せば定着する可能性があることも示唆しています。
まずは少額からのウォレット管理を推奨し、移行の成功体験を積んでもらうことが、セキュリティ意識を高める近道となるのではないでしょうか。

年齢上昇で取引所放置が加速

年代

取引所放置

ソフトウェアWL

20代

39.9%

32.7%

30代

45.0%

30.0%

40代

48.0%

26.0%

50代

53.0%

22.0%

60代

58.3%

18.8%

年代別でみる保管先の差異

今回の調査で、年齢が高くなるにつれて「取引所に放置」する割合が明確に上昇する傾向が確認されました。
20代では39.9%に留まっていた取引所依存率が、50代で53.0%、60代では58.3%まで達しています。

資産管理の利便性を優先する傾向は、世代を重ねるごとに強まるようです。
一方で、ソフトウェアウォレットの利用率は、年齢とともに低下する結果となりました。

20代の32.7%に対し、60代では18.8%と約半分まで減少しています。
若年層ほど新しいツールを柔軟に取り入れる適応力が高く、高齢層ほど既存のサービスに留まる保守的な側面が浮き彫りとなりました。

若年層が示す独自の管理志向

20代の投資家においては、ソフトウェアウォレット利用率が32.7%と全世代でトップとなりました。
年代が上がるにつれてこの数値が低下する構造から、若年層ほどスマホアプリで完結する利便性を重視する傾向が読み取れます。

彼らにとって、ウォレットの利用は日常的なデジタル体験の延長線上にあるのでしょう。
複雑なデバイス設定を嫌い、スマホアプリで完結する利便性を重視していることがうかがえます。

暗号資産の次世代を担う若年層は、取引所という中央集権的な環境から自律的な管理へとシフトし始めています。

高齢層に強い取引所への信頼

なぜ高齢層になるほど、取引所に資産を預け続ける傾向があるのでしょうか。
それは、自らシードフレーズを管理し、資産を守るという行為に伴う「紛失リスク」への忌避感が強いからだと考えられます。

もしもの事態を想定したとき、サポート体制が整っている取引所に頼る方が安全だと判断しているのかもしれません。
ハードウェアウォレットなどの自己管理手法は、技術的なトラブルが起きた際の自己責任の重みが障壁となります。

「資産を自分で守る」という概念よりも、「信頼できる第三者に守ってもらう」という安心感を重視する保守的な考え方が、高齢層の投資スタイルを形作っているといえます。
これは、彼らが長年培ってきた金融リテラシーの賜物とも解釈できるでしょう。

経験で変わる保管先選択

投資経験年数

取引所放置

1年未満

57.7%

1〜2年

50.0%

2〜3年

45.0%

3〜5年

38.8%

5年以上

40.0%

経験の浅い層ほど取引所依存が高い

今回の調査からは、暗号資産への投資経験が浅い層ほど、資産を取引所に置いたままにする傾向が強いことが浮き彫りになりました。
特に投資歴1年未満の投資家では、57.7%と過半数が「取引所に放置」を選択しています。

資産管理の重要性を学ぶ前段階であるため、まずは取引所の利便性を享受することが優先されているようです。
投資歴が長くなるにつれ、この依存率は徐々に低下していきます。

1~2年で50.0%、2~3年で45.0%と推移しており、経験を積むことで少しずつ自律的な管理への関心が高まっていることが伺えます。
初めて暗号資産を購入した投資家にとって、外部ウォレットへの移行という作業は、単なる機能利用以上の心理的なハードルがあるのかもしれません。

投資3〜5年でHW利用率が上昇

興味深いのは、投資歴3~5年の層において、ハードウェアウォレットの利用率が23.3%と突出して高まっている点です。
この期間は、相場の変動を一度は経験し、保有資産の規模拡大やセキュリティに対する危機意識が芽生えるタイミングなのかもしれません。

「取引所がハッキングされたらどうなるのか」といったリスクを具体的に想定し、自己防衛手段を講じ始めた層が一定数存在します。
一方で、投資歴5年以上のベテラン層では、ハードウェアウォレットの利用率が必ずしも最大化されていません。

これは、彼らがすでに独自の管理ルールを確立していたり、資産の一部をコールドウォレットに隔離したりと、より高度で多様な管理手法を実践している結果だとも推察できます。
経験年数に応じた、最適な保管方法への習熟度が見て取れます。

経験で変わる資産の自己管理意識

暗号資産投資において、セキュリティ対策は「どこまでやるか」という投資家個人の判断に委ねられています。
投資歴が浅いうちは「取引所に任せる」ことが正解でも、資産が増え経験が蓄積されることで、管理の主導権を自らに取り戻そうとする動機が強まるのです。

この変化こそが、暗号資産という新たな資産クラスにおける成熟のプロセスといえるでしょう。
自らウォレットを管理することは、紛失リスクという新たな責任を負うことでもあります。

しかし、そのリスクを理解しコントロールできるようになった時、真の意味で暗号資産を所有しているといえるのかもしれません。
投資家の成長段階に合わせて、適切なセキュリティ知識を啓蒙していくことが、業界全体に求められています。

「いくらから移すか」は保有額に比例

移行基準の分布に見る投資家の慎重さ

移行の基準金額

回答数

割合

1万〜5万円

166

22.3%

1万円未満

152

20.4%

5万〜10万円

150

20.1%

10万〜50万円

107

14.3%

移さない

68

9.1%

50万円以上

57

7.6%

金額に関係なく移す

46

6.2%

暗号資産をウォレットへ移行する際の「基準金額」を調査したところ、1万円から5万円という少額段階から移行を開始する層が22.3%で最多となりました。
続いて1万円未満が20.4%、5万〜10万円が20.1%と続いており、約6割の投資家が10万円以下の保有時点で自己管理に踏み切っています。

早期に取引所から資産を引き揚げ、自らコントロールしようとする意思が見て取れます。
一方で、「移さない」と回答した層も9.1%存在しました。

これらは、取引所のセキュリティを信頼しているのか、あるいは移行作業の手間を敬遠しているのか、理由は様々でしょう。
しかし、金額に関わらず取引所に置いたままにするリスクはゼロではありません。

どのような基準であれ、自分なりの「移行ルール」を持つことが、資産防衛の第一歩といえます。

保有額が左右する判断基準のリアル

保有額

移行の基準(最多回答)

1万円未満

1万円未満で移す (67.1%)

100万〜500万円

50万円以上で移す (32.4%)

保有額別に移行基準をクロス集計すると、資産規模に応じて基準が明確にスライドすることが判明しました。
1万円未満の少額保有者は、67.1%が「1万円未満」の段階ですぐにウォレットへ移しています。

保有額が少ないからこそ、管理のハードルが低く、即座に自律管理へ移行できるという側面があるようです。
これに対し、100万円から500万円のミドル層では、「50万円以上」で移行するという回答が32.4%で最多となりました。

ある程度の資産規模になってから、ようやく重い腰を上げてウォレットへ移すという保守的な心理が働いていると考えられます。
資産額の増加に伴い、紛失リスクと手間を天秤にかけ、移行タイミングを慎重に見極めている様子が伺えます。

保有額拡大に伴う管理意識の変化

少額層と中間層を比較すると、保有額の増加とともに移行の基準金額も明確に引き上がっていく構造が見えてきます。
1万円未満で即座に移行する層が約7割を占める一方、100万円規模まで保有額が増えると、移行を判断するハードル自体が「50万円以上」へとシフトしていきます。

これは保有額が増えるほど、移行作業に伴うミスのリスクと、その被害規模も同時に大きくなるためです。
慎重な判断は理にかなっていますが、取引所放置期間が長引けば、その間のリスクも累積していきます。

たとえ少額であっても、定期的にウォレットへ移行する習慣を持つことが、資産規模が拡大した際の防衛体制構築に直結するのです。
金額に関係なく自身のウォレットで管理するという意識は、暗号資産投資家としての成熟度を測る一つの指標といえるかもしれません。

HWウォレット所有率55.9%に対し長期保管利用は11.3%

項目

割合

ハードウェアウォレット所有率

55.9%

ハードウェアウォレット非所有率

11.3%

所有率55.9%という高い保有実態

今回の調査で、暗号資産投資家の半数を超える55.9%がハードウェアウォレットを所有しているという事実が判明しました。
セキュリティ意識の高まりを受け、専用デバイスを購入する投資家は着実に増えています。

まさに、多くの投資家が「万が一」に備える準備を整えているといえるでしょう。
しかし、先述の保管先データを見ると、ハードウェアウォレットを長期保管に利用している層はわずか11.3%に留まります。

所有率と利用率の間に、大きな乖離が生じているのです。
「持ってはいるが、活用しきれていない」という投資家が、実は相当数存在することをこの数字は物語っています。

利用率を押し下げる技術的な壁

なぜこれほどまでに所有と利用の差が開いてしまうのでしょうか。
その背景には、ハードウェアウォレット特有の「管理の複雑さ」や、操作ミスによる資産喪失への心理的な恐怖感が強く関わっていると考えられます。

送金先のアドレス間違いや、デバイスの紛失・故障といったトラブルへの懸念が、日常的な利用を躊躇させるのです。
多くの投資家にとって、ハードウェアウォレットは「安心を買う」ための保険のような存在なのかもしれません。

実際に資産を移すことはせず、とりあえず手元に置いておくことで精神的な安定を得ている状態です。
しかし、取引所に資産を置いたままの状態では、根本的なセキュリティリスクの解消には至りません。

所有から活用へ意識の転換を

ハードウェアウォレットは、ただ所有しているだけでは資産を守れません。
真価を発揮するのは、資産を取引所から切り離し、自身の管理下へ移動させたときです。

所有という最初のステップをクリアしている投資家が多い今、次に取り組むべきは、そのデバイスを日常的な管理手段として組み込むことです。
長期保有する資産こそ、攻撃リスクの低いコールドウォレットに隔離すべきです。

一度設定してしまえば、高い安全性が担保されます。
「持っているだけ」の段階を脱却し、保有デバイスをフル活用して暗号資産を自ら守る、一歩進んだ投資スタイルへの転換が期待されます。

まとめ

暗号資産の管理手法は、投資家の成長段階を映し出す鏡といえます。
今回の調査で、長期保有者の約半数が取引所に資産を預け入れている実態が明らかになりました。

利便性を重視する姿勢は一定の合理性を持つ一方、セキュリティリスクを考慮すれば、自律的な管理への移行は不可欠です。
特に年齢が上がるほど取引所依存度が高まる傾向や、ハードウェアウォレットの所有と実際の活用に乖離がある点は、今後の課題といえるでしょう。

保有資産額に応じて「移行の基準」を自分なりに設定し、所有するデバイスを適切に運用することが、成熟した投資家への近道です。
暗号資産を自らの手で守ることは、紛失リスクを負うことと引き換えに、真の所有権を手にする行為に他なりません。

本調査の結果を機に、自身のセキュリティ対策を今一度見直してみてください。

調査概要

調査実施日:2026年4月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:国内在住の男女(暗号資産に投資している人、投資したことのある人)
有効回答数:746名
実施機関:株式会社Clabo

調査設問項目

  • 暗号資産(仮想通貨)の投資経験はありますか?
  • 暗号資産への投資経験年数はどのくらいですか?
  • 保有している暗号資産の総額はどのくらいですか?
  • 取引所からウォレットへ移行したことはありますか?
  • いくらくらいから自分のウォレットに移しますか?
  • 長期保有している暗号資産はどこに保管していますか?
  • ハードウェアウォレットを持っていますか?