「長期保有が中心」と自己申告する投資家ほど、資産を取引所に置きっぱなしにしている。
そんな逆説的な実態が、746人を対象としたアンケート調査から浮かび上がりました。

自身の投資スタイルを「ガチホ(長期保有)」と回答した投資家は226人で、最大勢力の30.3%を占めました。
ところが、このガチホ派の長期保有資産の保管先を尋ねたところ、59.3%が「取引所に放置」と回答──全投資スタイル中で最も高い数値となっています。

さらに興味深いのは、ガチホ派の2FA全設定率は45.1%と全スタイル中最高であるにもかかわらず、ウォレット移行未経験率も45.1%に達するという二重構造です。
「鍵はかけるが、金庫の場所は他人任せ」という、防御意識と行動の深刻な乖離が見えてきます。

本記事では、ガチホ派という人格の矛盾を多角的に分析し、長期保有戦略が機能するための条件をデータから読み解きます。

投資家の最大勢力「ガチホ派」226人──その6割が取引所放置という矛盾

投資スタイル

回答数

割合

ガチホ(長期保有)

226人

30.3%

短期トレード

210人

28.2%

両方

178人

23.9%

運用メイン(ステーキング等)

78人

10.5%

特になし

54人

7.2%

30.3%の最大勢力ガチホ派──「長期保有」の自己申告

本調査で投資スタイルを尋ねたところ、最大勢力となったのは「ガチホ(長期保有)」の226人、全体の30.3%でした。
3人に1人が長期保有を主軸に据えている計算であり、暗号資産市場における支配的な戦略であることが確認されます。

長期保有とは、短期的な価格変動に一喜一憂せず、数年単位で資産を保有し続ける戦略を指します。
ビットコインやイーサリアムといった主要銘柄の長期的な値上がりを期待する投資家にとって、最もシンプルで再現性の高いアプローチとされています。

しかし、「長期保有」という戦略が成立するためには、その資産が安全に保管されていることが大前提です。
保有期間が長くなればなるほど、その間に発生しうるセキュリティリスクも積み重なるからです。

ガチホ派の59.3%が「取引所に放置」──全スタイル中ワースト

投資スタイル

n数

取引所放置率

HW率

ガチホ(長期保有)

226人

59.3%

8.8%

短期トレード

210人

50.0%

10.5%

両方

178人

32.6%

14.6%

運用メイン

78人

24.4%

16.7%

特になし

54人

63.0%

5.6%

投資スタイル別に長期保有資産の保管先をクロス集計すると、衝撃的な数値が浮かび上がりました。
ガチホ派の59.3%が「取引所に放置」していると回答しており、これは「特になし」層を除けば全投資スタイル中で最も高い数値です。

本来であれば長期保有こそコールドウォレットでの厳重管理が望ましいはずなのに、現実は真逆の構造となっています。
さらに注目すべきは、ハードウェアウォレット(HW)使用率です。

ガチホ派の8.8%という数値は、両方派や運用メイン派を下回っており、自己管理意識が最も希薄なグループであることがわかります。
「動かさない」という戦略が「動かす手間をかけない」にすり替わっている実態が、データから明確に読み取れます。

「ウォレット移行未経験」45.1%──ガチホ派ほど取引所から動いていない

投資スタイル

n数

移行未経験率

ガチホ(長期保有)

226人

45.1%

短期トレード

210人

32.9%

両方

178人

23.0%

運用メイン

78人

34.6%

半数近いガチホ派が一度も自己ウォレットを使っていない

取引所からウォレットへの移行経験を尋ねたところ、ガチホ派の45.1%が「移行したことがない」と回答しました。
ガチホ派226人のうち102人が、暗号資産を購入してから一度も自己ウォレットに移したことがないという計算になります。

最も活発に資産を動かさないはずのガチホ派が、結果として「資産を取引所から一切動かさない」という行動パターンに陥っているのです。
「長期保有」と「移行手続きを行わない」は、本来まったく別の概念です。

にもかかわらず、ガチホ派の半数近くが両者を同一視してしまっている現状は、戦略と実装の重大な乖離を示しています。

移行のハードルが「ガチホ」を加速させている可能性

なぜガチホ派ほどウォレット移行を行わないのでしょうか。
背景には、ウォレット移行作業に伴う心理的・技術的なハードルがあると考えられます。
シードフレーズの管理、ネットワーク選択、テスト送金など、移行プロセスは初心者にとって決して簡単ではありません。

「いつかやろう」と先延ばしにしているうちに、保有期間がそのまま長期化し、結果的に「ガチホ」と自己定義してしまう投資家も少なくないでしょう。
しかし、移行作業を後回しにすればするほど、保有資産は取引所リスクに晒され続けます。

取引所の破綻、ハッキング、出金停止といった事態は、過去の事例を見れば決して稀なものではありません。
長期保有を本気で目指すのであれば、最初の数十分の作業を惜しまず、自己管理体制を構築することが必須条件となります。

意外な事実──ガチホ派の2FA全設定率は45.1%で最高

投資スタイル

n数

全設定率

未設定+知らない率

ガチホ(長期保有)

226人

45.1%

19.5%

短期トレード

210人

26.7%

21.9%

両方

178人

22.5%

20.8%

運用メイン

78人

12.8%

35.9%

防御意識は最も高い──でも資産は取引所のまま

ガチホ派の意外な側面として浮かび上がったのが、二段階認証(2FA)の全サービス設定率の高さです。
ガチホ派の45.1%が「全てのサービスに設定済み」と回答しており、これは全投資スタイル中で最高の数値となりました。

セキュリティの重要性を最も強く認識しているのは、皮肉にもガチホ派なのです。
ところが同じガチホ派が、長期保有資産の59.3%を取引所に放置しています。

「鍵はかけるが、金庫の場所は他人任せ」という、奇妙な防御の二重構造がここに存在しているのです。

セキュリティ意識と行動の乖離──何が止めているのか

ガチホ派のHW所有率は46.9%、2FA全設定率は45.1%──いずれも他のスタイルと比較しても遜色のない水準です。
にもかかわらず、長期保有資産の59.3%が取引所に放置されているという矛盾は、いったいどう説明できるのでしょうか。

考えられる仮説の一つは、「セキュリティ知識はあるが、移行作業の優先度が低い」というものです。
2FAの設定は数分で完結するのに対し、ウォレット移行はシードフレーズ管理から送金確認まで、数十分から数時間を要する作業です。

「面倒な作業」を後回しにし続けた結果、長期保有期間がそのまま放置期間になっている可能性があります。
もう一つの仮説は、取引所への信頼です。
「2FAを設定しておけば取引所でも安全」という認識が、ガチホ派の中で一定の合理性を持って共有されているのかもしれません。

ガチホ派の中の「最も無防備な層」を特定する

保有額

n数

取引所放置率

1万円未満

42人

69.0%

1〜10万円未満

70人

67.1%

10〜50万円未満

44人

50.0%

50〜100万円未満

32人

50.0%

100〜500万円未満

23人

43.5%

1万円未満ガチホ派の69.0%が取引所放置──「少額だから」の自己正当化

ガチホ派の中で最も取引所放置率が高かったのは、保有額1万円未満の層で69.0%に達しました。
少額のガチホ派ほど、長期保有資産を取引所に置きっぱなしにしている実態が明確に表れています。

「少額だから盗まれても痛くない」「ウォレット移行のコストに見合わない」といった経済合理性が、放置を正当化する理由として機能していると考えられます。
しかし、保有額が10倍、100倍に成長したときに、すでに自己管理体制が整っているかどうかは、長期投資家として極めて重要な観点です。

少額のうちに移行作業を経験しておくことで、本格的な保有額になってから慌てる必要がなくなります。
「練習」という意味でも、少額時点でのウォレット移行は強く推奨されるべき行動です。

1年未満の新規ガチホ派67.4%──始めたばかりの油断

投資経験年数

n数

取引所放置率

1年未満

43人

67.4%

1〜2年未満

63人

65.1%

2〜3年未満

53人

54.7%

3〜5年未満

35人

45.7%

5年以上

32人

59.4%

経験年数別に見ると、投資1年未満のガチホ派の取引所放置率は67.4%と高水準です。
新規参入直後のガチホ派ほど取引所に資産を預けたままにする傾向が顕著に表れています。
新規参入時は、取引所での売買に慣れることが最優先となり、ウォレット移行までは手が回らないのが実情でしょう。

しかし、暗号資産投資の最初の1〜2年は、操作ミスや詐欺被害、紛失トラブルが集中する時期でもあります。
本来であれば、最も防御を固めるべきフェーズなのです。
新規参入直後にガチホを選ぶのであれば、購入後すぐにウォレット移行までを一連のフローとして組み込む意識が必要です。

5年以上のベテランでも59.4%──慣れと放置は別物

驚くべきことに、投資歴5年以上のベテランガチホ派でも、取引所放置率は59.4%という高水準を維持しています。
3〜5年未満で45.7%まで低下した放置率が、5年以上で再び上昇している点は注目に値します。

ベテラン層の高い放置率は、単なる怠慢というよりも、「これまでトラブルがなかった」という経験則に基づく判断と解釈できます。
過去5年以上にわたって取引所で資産を保管し続けて問題が起きなかった経験が、現状維持バイアスを強化している可能性があります。

しかし、過去にトラブルがなかったことは、未来のトラブルがないことを保証しません。
ベテランほど、慣れに流されず管理体制を定期的にアップデートする姿勢が求められます。

ガチホ派が直面する被害──9.7%が実際に資金喪失

項目

該当数

割合

詐欺・フィッシング遭遇

120人

53.1%

実際に資金を失った

22人

9.7%

紛失経験あり(復旧+資産喪失)

62人

27.4%

HW所有

106人

46.9%

詐欺・フィッシング遭遇率53.1%──取引所放置がリスクを増幅

ガチホ派226人のうち、何らかの詐欺・フィッシングに遭遇した経験を持つ層は53.1%、人数にして120人に達しました。
半数を超えるガチホ派が、詐欺の脅威と直接的に接触している実態が確認できます。

特に取引所に資産を放置している層は、取引所を装った偽サイトや偽DMの標的になりやすい傾向があります。
ウォレットへ移行している場合と比較して、取引所保管ユーザーは「ID・パスワード」という比較的脆弱な認証手段に依存している点も問題です。

たとえ2FAを設定していても、取引所そのものがハッキングされれば被害は免れません。

紛失・資産喪失経験27.4%──守るつもりが守れていない

紛失や資産喪失の経験を持つガチホ派は、復旧成功と資産喪失を合わせて62人(27.4%)に上りました。
さらに、紛失しかけた経験まで含めると107人(47.3%)が、資産防衛上のヒヤリハットを経験している計算になります。

「守るつもり」で長期保有を選んだはずのガチホ派が、結果として防衛失敗を多数経験している事実は、戦略と実装のスマッチを如実に物語っています。
取引所放置という選択が、本来守りたかった資産を逆に危険にさらしているのです。

「持っているのに使っていない」「設定はしたが移行は後回し」という、行動の最後の一歩が踏み出せない状態こそ、ガチホ派最大の課題といえるでしょう。

まとめ

本調査を通じて、最大勢力であるガチホ派226人のうち59.3%が長期保有資産を取引所に放置している実態が浮き彫りとなりました。
特に矛盾的なのは、ガチホ派の2FA全設定率が45.1%と全投資スタイル中で最高にもかかわらず、ウォレット移行未経験率も45.1%に達する点です。

セキュリティ意識は最も高いのに、資産そのものは取引所のまま──「鍵はかけるが金庫の場所は他人任せ」という防御の二重構造が、ガチホ派最大の課題となっています。
結果として、ガチホ派の53.1%が詐欺に遭遇し、9.7%が実際に資金を失っています。

「長期保有」と「自己管理」をセットにする思考転換こそが、ガチホ派にとっての最重要課題です。
今日から始められる3ステップは以下の通りです。

第一に、ソフトウォレットまたはハードウェアウォレットを選択し導入します。

第二に、少額のテスト送金で移行プロセスを練習します。

第三に、シードフレーズを安全な物理的場所で保管します。

「動かさない」という長期保有戦略は、「動かすべきタイミングで動かさない」という油断とは根本的に異なります。

調査概要

調査実施日:2026年4月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:国内在住の男女(暗号資産に投資している人、投資したことのある人)
有効回答数:746名
実施機関:株式会社Clabo

調査設問項目

  • 暗号資産(仮想通貨)の投資経験はありますか?
  • 暗号資産への投資経験年数はどのくらいですか?
  • 保有している暗号資産の総額はどのくらいですか?
  • あなたの投資スタイルはどれですか?
  • 取引所からウォレットへ移行したことはありますか?
  • 長期保有している暗号資産はどこに保管していますか?
  • ハードウェアウォレットを持っていますか?
  • 2段階認証(2FA)は設定していますか?