AIエージェントに資産運用を任せる時代が、想像より早く来ている。海外ではすでに、AIが自分のウォレットを持ち、相場を判断し、他のAIに代金を支払っている。日本の投資家がその種のサービスに触れるのも、そう遠い話ではない。
しかし委ねる前に、一つだけ確認しておくべきことがある。そのAIが間違えたとき、誰が責任を取るのか。
現時点での答えは「誰も取らない」だ。世界のどの法制度も、この問いに明確な答えを用意していない。そして2026年に入ってから、その空白の中で実際に資産が消える事故が続いている。攻撃されたケースもあれば、誰も攻撃していないのに消えたケースもある。共通しているのは、消えたあとに向かう先がどこにもないという点だ。
技術だけが先に走り、制度が置き去りになった。その空白を、業界は自力で埋めようとしている。2026年7月に立ち上がったのは、1,001体のAIが裁判官を務める「インターネット裁判所」だった。
モールス信号で盗まれた
2026年5月4日に起きた事件から始めたい。
攻撃者はまず、Baseチェーン上でGrokに紐づくウォレットに、無料のNFTを一つ送りつけた。「Bankr Club Membership」というトークンだ。このNFTを保有すると、Bankrbotというエージェント基盤の中でウォレットの権限が自動的に拡張される。送金・スワップなど、それまで制限されていたWeb3の操作が解禁される仕組みだった。
次に攻撃者は、X上でGrokに返信を送った。その内容は、モールス信号で符号化された指示だった。
Grokはそれを解読し、平文にして公開返信の中で@bankrbotをタグ付けした。Bankrbotはその返信を正規の指示として処理し、3億DRBトークン——報道された時価で約17万4,000〜20万米ドル相当——を攻撃者のウォレットへ送金した。
