暗号資産(仮想通貨)は、スマホで支払いに使えるうえ、株式やFXと同じように値動きで利益を狙える資産です。そのため、電子マネーや株式、FXと同じ種類のものだと考えられがちです。

ただ、株式やFXと同じ感覚で売買すると、利益にかかる税金を見誤り、手元に残る金額を大きく読み違えるおそれがあります。暗号資産は株式やFXとは法律上の扱いが異なり、税金の計算方法も別に定められているためです。

暗号資産を売買する前に、ほかの商品とどこが同じで、どこが違うのかを知っておく必要があります。この記事では、暗号資産を誰が発行し、何が価格を決めるのかという前提から、電子マネー・株式・FXそれぞれとの違い、見直しが進む税金の扱いまでを解説します。

暗号資産は誰が発行し、何が価格を決めるのか

電子マネーや株式、FXと暗号資産を並べて比べるとき、基準になるのは「誰が発行しているのか」と「何が価格を決めているのか」の2点です。まずは、法律が暗号資産をどう定めているのかと、実際にどのように発行されているのかを、順に確かめていきます。

暗号資産は法定通貨ではない

暗号資産は、円やドルのように国や中央銀行が発行し、その価値を保証している法定通貨ではありません。金融庁や日本銀行も、暗号資産は法定通貨ではないと説明しています。価格は、暗号資産を持っている人どうしの売り買いで決まり、日々上がったり下がったりします。

法律上の扱いを定めているのは資金決済法です。資金決済法は、不特定の相手への代金の支払いに使えて、不特定の相手と売り買いでき、電子的に記録して移転できる財産的価値を暗号資産としています。円や外国の通貨、通貨建ての資産は含みません。発行者がいるかどうかも、ブロックチェーンを使っているかどうかも、この定義の条件には入っていません。

暗号資産は誰が発行しているのですか?

暗号資産の発行のしかたは、銘柄によって違います。多くの銘柄には、プロジェクトの運営団体や企業といった発行者がいて、トークンを生成し、管理しています。一方で、ビットコインのように特定の発行者を置かず、プログラムに決められた規則に従って新しく発行される銘柄もあります。

国内の取引所が扱う銘柄の概要は、業界団体の日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)が「取扱暗号資産の概要説明書」にまとめています。この資料では、イーサリアムの発行主体はEthereum Foundation、ビットコインの発行主体は「プログラムによる自動発行」と書かれています。企業が発行した銘柄もあり、Palette Token(PLT)はHashpaletteが発行し、2021年にCoincheckのIEO(取引所を通じた新規販売)で売り出されました。

2026年7月に成立した改正金融商品取引法も、発行のしかたによって扱いを分けています。発行する権限を特定の者だけが持つ暗号資産(IEOで売り出されるトークンなど)は、売り出す際に発行者自身が情報を公表し、ビットコインなどそれ以外の暗号資産は、取り扱う業者が情報を公表すると定めています。

電子マネー・株式・FXとの違いを表で比較

4つを並べると、違いは価値の保証・価格が動く理由・法律・税金の4点にはっきり表れます。

暗号資産

電子マネー

株式

FX

用途

支払い・投資

支払い

投資

投資

価値の保証

発行者の有無は銘柄による。金額の保証はない

発行者が入金額どおりの支払いに応じる

金額の保証はない。株主には配当などを受け取る権利がある

金額の保証はない

価格が動く理由

業績や金利のような裏付けがなく、売り買いの需給で動く

動かない

会社の業績

各国の政策金利や経済指標

根拠となる法律(2026年9月時点)

資金決済法(証拠金取引は金融商品取引法。施行後は現物も金融商品取引法)

資金決済法

金融商品取引法

金融商品取引法

利益にかかる税金(2026年分)

原則として雑所得の総合課税

利益は生じない

上場株式は申告分離課税(20.315%)

国内業者の取引は申告分離課税(20.315%)

法律の行は、2026年9月時点の状態です。暗号資産の現物の売買を扱う業者は、今は資金決済法に基づいて登録されています。先に触れた改正金融商品取引法が施行されると、暗号資産の売買も、株式やFXと同じ金融商品取引法の規制に移ります。ただし位置づけは、有価証券とは別の金融商品です。施行は公布から1年以内とされ、日付はまだ決まっていません。この登録も、暗号資産交換業から暗号資産取引業へ、名前と根拠が変わります。詳しくは金融商品取引法の改正を解説した記事をご覧ください。

表のどの行を重視するかは、何と比べたいかで変わります。

  • 電子マネーと比べたい人:「価値の保証」の行
  • 株式と比べたい人:「価格が動く理由」と「税金」の行
  • FXと比べたい人:「税金」の行と、レバレッジの上限(「レバレッジ上限と税金の違い」で解説)

暗号資産と電子マネーの違い

PayPayやSuicaの残高も暗号資産も、スマホの画面に金額として表示され、どちらも支払いに使えるため、同じ種類のお金に見えます。見分ける手がかりになるのは、表示されている金額を誰が引き受けているのかという点です。この点に注目しながら、身近なPayPayの残高がどちらに当たるのかまで整理します。

金額どおりの支払いを引き受ける相手がいるか

電子マネーは、発行者が、入金された金額どおりの支払いに応じます。1万円をチャージすれば、翌日も1万円分の買い物に使えます。暗号資産の側には、発行者がいる銘柄であっても、この支払いを引き受ける者がいません。1万円で買った暗号資産の価値は、翌日には上がっていることも、下がっていることもあります。

JVCEAの概要説明書でも、発行者がいる銘柄を含むほとんどの銘柄で、支払いに備えて用意された資産は「なし」とされています。保有者が発行者に支払いを求める権利もなく、価値は保有者どうしの自由な売買で決まると書かれています。

一方、前払式の電子マネーには、利用者を守る仕組みがあります。使われていない残高が1,000万円を超える発行者は、その2分の1以上を、供託や保全契約、信託によって保全しなければなりません。ただし、前払式の電子マネーの残高は、原則として現金には払い戻せません。払い戻しが認められるのは、発行者が事業をやめる場合などに限られます。

PayPayは暗号資産ですか?

PayPayの残高は、暗号資産ではありません。円建てで、チャージした金額のまま支払いに使え、時間がたっても金額は変わりません。

PayPayの残高は、法律上の扱いが1種類ではありません。PayPay残高利用規約では、出金できない「PayPayマネーライト」は前払式支払手段とされています。銀行口座へ出金できる「PayPayマネー」は、資金移動業のルールで扱われます。どちらの残高も、暗号資産の枠組みの外にあります。

暗号資産(仮想通貨)と株式の違い

Claboが2026年3月に992人へ行った調査では、資金の配分を「暗号資産のみ」と答えた人は7.9%にとどまり、「暗号資産はサブ・3割以下」と答えた人が38.8%でした。株式などと並べて暗号資産を持つ場合、株式で身につけた判断のしかたを暗号資産にも当てはめてよいかが問題になります。保有して得られるもの・取引の条件・税金の3つの面から、株式との違いを比べます。

保有者の権利と値動きの理由の違い

株式を持つと、株主として配当を受け取る権利や、会社を清算したときに残った財産の分配を受ける権利を持ちます。株主優待を用意している会社もあります。暗号資産は、発行者がいる銘柄であっても、保有者に一般にこうした権利はありません。金融審議会の報告も、暗号資産は一般に法的な権利を表すものではなく、収益の配当や残余財産の分配は行われないと整理しています。

そのため、株価は会社の業績を手がかりに売買されるのに対し、暗号資産には業績のような手がかりがなく、価格は買いたい人と売りたい人のバランスで決まります。発行者がいる銘柄では、発行者の活動や、供給量をどう設計しているかが価格に影響することもあります。

暗号資産にも、保有して新たな暗号資産を受け取れるステーキングという仕組みがあります。ただし、これは発行者が利益を分ける配当ではありません。ネットワークの運営に参加した対価として受け取るものです。

取引時間と最低投資金額の違い

東京証券取引所で株式を売買できるのは、平日の9:00〜11:30と12:30〜15:30です(2026年9月時点)。買うときは、原則として100株単位になります。暗号資産は、取引所の定期メンテナンスの時間を除いて、原則24時間365日売買できます。最低購入額は取引所によって違い、1単位に満たない量を少額から買える取引所もあります。

市場が閉まる時間がないため、暗号資産の価格は夜間や休日にも動き続け、株式の取引終了時刻のように相場から離れる区切りがありません。

税金の違いと分離課税への見直し

2026年9月時点で、上場株式を売った利益は、ほかの所得と分けて20.315%の税率で課税されます(申告分離課税)。暗号資産の利益は、原則として雑所得として給与などと合算され、所得が多いほど税率が上がります。住民税を含めた税率は、最高で55%です(復興特別所得税を含めると55.945%)。同じ額の利益でも、手元に残る金額は人によって変わります。

暗号資産の利益を20.315%の分離課税に変える法律は、2026年3月に成立しています。ただし、適用されるのは、改正金融商品取引法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の売却からです。施行日はまだ決まっておらず、施行が2027年中になれば、2028年1月からになる見込みです。その場合、2027年分までは今の総合課税のままです。対象は、登録された取引業者を通じた取引に限られます。

今は、暗号資産の損失を株式やFXの利益と相殺できません。見直し後も、暗号資産の売却で出た損失を差し引けるのは、ほかの暗号資産の売却益だけで、株式の利益とは相殺できません(財務省の解説)。Claboの調査では、損失を株式やFXの利益と相殺できないと正しく答えられた人は、300人中43%(129人)と半数に届きませんでした。見直しの詳細は分離課税の記事、総合課税と分離課税の仕組みは税制の違いの記事で詳しく解説しています。

暗号資産とFXの違い

暗号資産の取引画面はFXの取引画面とよく似ており、どちらもチャートを見ながら売買のタイミングを計り、レバレッジをかけて値上がりと値下がりの両方で利益を狙えます。売買している対象と取引の条件を比べたうえで、よく混同される「暗号資産FX」という呼び名も取り上げます。

取引しているものの違い

FXは、米ドルと円のような2つの通貨の交換レートの変動を利用し、決済したときの差額をやり取りする取引です。通常、外貨そのものを受け取るわけではありません。暗号資産の現物取引では、暗号資産そのものを買います。買った暗号資産は、自分の資産として持ち続けることも、自分のウォレットへ送ることもできます。

為替レートを動かすのは、各国の政策金利や経済指標です。2つの通貨の金利差は、スワップポイントとして損益にも影響します。一方、暗号資産には、株式の章で見たとおり業績のような手がかりがなく、金利や経済指標に当たるものもありません。価格は、売り買いの需給で決まります。

レバレッジ上限と税金の違い

個人が取引できるレバレッジの上限は、FXが25倍、国内の暗号資産の証拠金取引が2倍です。10万円を預けた場合、取引できる金額は、FXでは250万円分まで、暗号資産では20万円分までです。損失が膨らんだときに強制的に決済される仕組みは、ロスカットの解説で詳しく扱っています。

2026年9月時点で、国内業者で取引したFXの利益は、株式と同じく20.315%の申告分離課税です。暗号資産の証拠金取引の利益は、今は現物と同じく総合課税です。分離課税への見直しでは証拠金取引も対象に含まれ、FXと同じ「先物取引の課税の特例」の枠組みに入る見込みです。

「暗号資産FX」は外国為替FXとは別物

「暗号資産FX」は、国内では、暗号資産を対象にした証拠金取引(レバレッジ取引)を指す呼び名として使われています。取引の形はFXに似ていますが、売買の対象は法定通貨ではなく暗号資産です。外国為替FXとは、別の取引になります。

暗号資産の証拠金取引は、2020年5月から金融商品取引法の規制を受けています。取り扱う業者には、金融商品取引業の登録が必要です。上限の2倍も、この規制のもとで、暗号資産の種類によらず一律に決められています。

暗号資産と混同しやすいステーブルコイン・デジタル通貨

暗号資産のニュースでは、「ステーブルコイン」や「デジタル通貨」という言葉が、暗号資産と区別されないまま使われることがよくあります。言葉が似ていても、法律上の扱いまで同じとは限りません。それぞれが暗号資産とどういう関係にあるのか、よく出る2つの疑問に答えます。

ステーブルコインは暗号資産と同じですか?

法定通貨と同じ額で発行し、同じ額での払い戻しを約束するステーブルコインは、日本の法律では「電子決済手段」という別の区分に当たり、暗号資産ではありません。2023年6月1日に施行された改正資金決済法で、この区分が設けられました。国内では、SBI VCトレードが2025年3月に電子決済手段を扱う業者として初めて登録され、USDCを取り扱っています。

ただし、ステーブルコインと呼ばれるものすべてが、暗号資産の外にあるわけではありません。法定通貨での払い戻しを約束せず、暗号資産を担保にしたり、プログラムで供給量を調整したりして価格の安定を図るタイプ(例:DAI)は、暗号資産に当たりえます。仕組みと種類について詳しくは、ステーブルコインの解説をご覧ください。

デジタル通貨と暗号資産は何が違いますか?

デジタル通貨は、法律で定められた言葉ではなく、電子的に扱えるお金をまとめて呼ぶ言葉です。電子マネー・暗号資産・CBDC(中央銀行デジタル通貨)がここに含まれ、暗号資産はその一部に当たります。

CBDCは、中央銀行が発行するデジタルの法定通貨で、国が価値を保証する点で暗号資産と違います。日本銀行はパイロット実験を続けている段階で、2026年6月に進捗の報告書を公表しましたが、発行は決まっていません。詳しくは、CBDCと暗号資産の違いの解説をご覧ください。

まとめ

気になる銘柄があれば、買う前に、発行者がいるかどうかと発行の仕組みを確かめてください。国内の取引所が扱う銘柄なら、JVCEAの「取扱暗号資産の概要説明書」で、発行者・発行の方法・価値の決まり方を確認できます。

利益にかかる税金は、見直しが適用されるまでの総合課税(施行が2027年中になれば2027年分まで)と、見直し後の分離課税に分けて見積もります。改正金融商品取引法の施行日が決まったら、適用が始まる時期をもう一度確認しましょう。