株式投資や投資信託の利益は、原則として「分離課税」によって課税されます。税率はおおむね一定であり、所得が増えても税率は大きく変わりません。一方、暗号資産の利益は「総合課税」の対象です。給与所得など他の所得と合算して税額を計算する仕組みとなっており、所得が増えるほど税率が高くなる特徴があります。
このように、同じ投資による利益であっても、株式投資と暗号資産では税金の計算方法が異なります。税制の違いを理解しておくことは、暗号資産取引の仕組みを正しく把握するうえで重要です。この記事では、総合課税と分離課税の基本的な仕組みや違いを整理したうえで、暗号資産の税制との関係について解説します。
総合課税とは

総合課税とは、複数の所得を合算して税額を計算する課税方式です。給与所得や事業所得、不動産所得などを合計し、その合計額に対して所得税が計算されます。暗号資産の利益は、この総合課税の対象です。
総合課税では、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税が適用されます。所得税の税率は5%から45%まで段階的に設定されており、住民税(通常10%)を含めると、所得の状況によっては税率が最大55%になる場合があります。
課税される所得金額
税率
控除額
1,000円 から 1,949,000円まで
5%
0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで
10%
97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで
20%
427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで
23%
636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで
33%
1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで
40%
2,796,000円
40,000,000円 以上
45%
4,796,000円
参照:所得税の税率|国税庁
例えば、給与所得が500万円あり、暗号資産の取引で100万円の利益が出た場合、総合課税では所得を合算して600万円の所得として税額を計算します。そのため、暗号資産の利益も給与所得と同じ税率の影響を受けることになります。
このように、総合課税は複数の所得をまとめて課税する仕組みであり、所得が多いほど税負担が大きくなりやすい特徴があります。
分離課税とは

分離課税とは、特定の所得を他の所得と合算せず、個別に税額を計算する課税方式です。給与所得や事業所得などとは切り離して税金を計算する点が特徴です。代表的な例として、株式投資の売却益や配当所得があります。これらは「申告分離課税」と呼ばれる方式が採用されており、税率は原則として20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)です。
分離課税では、所得の金額が増えても税率は基本的に変わりません。例えば、株式投資で50万円の利益が出た場合でも、500万円の利益が出た場合でも、同じ税率で税額が計算されます。このように、分離課税は他の所得と切り離して課税する仕組みであり、税率が一定である点が大きな特徴といえます。
総合課税と分離課税の違い

それぞれの特徴から分かる通り、総合課税と分離課税の主な違いは「他の所得と合算して課税されるかどうか」にあります。
総合課税では、給与所得や事業所得など複数の所得を合算し、その合計額に対して税額を計算します。所得が増えるほど税率が高くなる累進課税が適用されるため、所得の多い人ほど税率が高くなる仕組みです。
一方、分離課税は特定の所得を他の所得と切り離して課税します。給与所得などとは合算せず、それぞれ独立して税額を計算する点が特徴です。株式投資の売却益などは分離課税の対象であり、税率は原則として約20%とされています。
例えば、給与所得が500万円ある人が投資で利益を得た場合を考えてみます。総合課税であれば投資の利益も給与と合算され、所得全体に応じた税率が適用されます。一方、分離課税の場合は投資の利益だけを切り離して計算するため、給与所得の影響を受けません。
このように、総合課税と分離課税は税額の計算方法が大きく異なります。現在の日本の税制だと、暗号資産の利益は総合課税(雑所得)として扱われます。そのため、給与所得など他の所得と合算して税額が計算される仕組みです。この点は、株式投資などが分離課税であることと大きく異なるポイントです。暗号資産の税制を理解するためには、まず総合課税と分離課税の違いを把握しておくことが重要といえるでしょう。
暗号資産の税制は分離課税になる可能性がある

現在の日本では、暗号資産の利益は雑所得に分類され、総合課税の対象となっています。この件について、政府・与党は暗号資産の税制を見直す方針を示しています。2026年度の税制改正大綱では、一定の条件のもとで暗号資産の所得を分離課税の対象とする方針が明記されました。
居住者等が、暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して暗号資産(金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等に限る。以下「特定暗号資産」という。)の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等については、他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率により課税する。
この制度が導入された場合、株式投資などと同様に、一定の税率で税額を計算する仕組みになる可能性があります。また、株式投資と同じように、損失を翌年以降に繰り越して利益と相殺できる3年間の繰越控除制度の導入も示されています。
特定暗号資産を暗号資産取引業を行う者に対して譲渡等をしたことにより生じた損失の金額のうちに、その譲渡等をした日の属する年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額の計算上控除してもなお控除しきれない金額があるときは、一定の要件の下で、その控除しきれない金額についてその年の翌年以後3年内の各年分の特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額からの繰越控除を可能とする。
ただし、新しい税制はすぐに適用されるわけではありません。暗号資産の位置づけを「金融商品」とする法整備などが前提となっており、制度の施行時期はその法改正のタイミングに連動するとされています。そのため、法整備の進み方によっては、新しい税制の適用が2028年以降になる可能性も指摘されています。今後、暗号資産の税制は大きく変わる可能性があるため、制度改正の動向を継続して確認していくことが重要です。
まとめ

総合課税と分離課税は、所得税の計算方法の違いを示す課税方式です。総合課税は複数の所得を合算して税額を計算する仕組みであり、所得が増えるほど税率が高くなる累進課税が適用されます。一方、分離課税は特定の所得を他の所得と切り離して課税する方式です。株式投資などでは申告分離課税が採用されており、税率は原則として約20%となっています。
現在、日本では暗号資産の利益は雑所得として扱われ、総合課税の対象です。そのため、給与所得などと合算して税額が計算される仕組みになっています。ただし、税制改正の議論では、暗号資産の所得を分離課税とする制度の導入が検討されています。今後、制度が変更される可能性もあるため、暗号資産の税制については最新の情報を確認しておくことが重要です。

