暗号資産(仮想通貨)をだまし取られた場合、返金される確率を一律に「何%」と示すことはできません。被害ごとに送金方法や相手の所在、発覚までの時間が異なるためです。
ただし、回収の見込みを判断するポイントはあります。特に重要なのは、次の3つです。
- 銀行振込か、暗号資産の直接送付か
- 相手の身元を特定できるか
- 被害からどのくらい時間が経っているか
一般に、銀行振込を利用し、相手が国内に実在し、被害から日が浅いほど、取れる手段は多くなります。一方、暗号資産を海外の匿名相手へ直接送り、時間も経っている場合は、回収が難しくなる傾向があります。
この記事では、返金の見込みを左右する3つの条件、被害に気づいた直後の対応、状況別の相談先を解説します。
まず確認:返金の見込みを左右する3つの条件
確認すること | 比較的、手段が残りやすいケース | 回収が難しくなりやすいケース |
|---|---|---|
送金方法 | 日本円を銀行口座へ振り込んだ | 暗号資産をウォレットへ直接送った |
相手の情報 | 国内の人物・会社で、手がかりがある | 海外の匿名アカウントで、情報が少ない |
経過時間 | 被害に気づいてすぐ | 被害から長い時間が経っている |
これはあくまで目安です。条件がよくても返金が保証されるわけではなく、反対に難しい条件があるからといって、すぐに諦める必要もありません。まずは証拠を残し、できるだけ早く適切な窓口へ相談することが重要です。
1.送金方法:銀行振込か、暗号資産の直接送付か
最初に確認したいのは、相手へどのように資金を渡したかです。
指定された銀行口座へ日本円を振り込んだ場合は、銀行や警察への連絡によって、振込先口座が凍結される可能性があります。口座に資金が残っていれば、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金を受け取れる場合もあります。
一方、暗号資産を相手のウォレットアドレスへ直接送った場合、この制度は利用できません。銀行預金の振込ではないためです。
さらに、送付先が個人管理のウォレットであれば、口座凍結を依頼できる事業者が存在しません。海外の取引所へ送られている場合も、日本から対応を求める手続きは複雑になります。
2.相手の情報:身元を特定できるか
返還請求や裁判を進めるには、原則として請求する相手を特定する必要があります。
相手が国内にいる人物や会社で、SNSアカウント、電話番号、振込先口座などの手がかりが残っていれば、身元を調べられる可能性があります。状況によっては、弁護士会照会などの手続きが使えるためです。
ただし、手続きをしても、登録情報が偽名や他人名義で、加害者本人にたどり着けないことがあります。海外企業が運営するサービスや匿名アカウントが使われている場合は、情報の取得がさらに難しくなります。
3.経過時間:被害から何日たっているか
被害に気づいたら、できるだけ早く動くことが重要です。
時間がたつほど、相手のアカウントや偽の投資サイトが削除され、証拠を集めにくくなります。送った暗号資産も複数のアドレスや取引所へ移され、資産の行方を追いにくくなります。
また、返還を求める権利には時効があります。具体的な期限は請求の根拠や事情によって異なりますが、時間がたつほど選択肢が減ると考えてください。
被害に気づいたら、すぐにやること
被害後の行動で変えられるのは、主に「これ以上被害を広げないこと」と「早く動くこと」です。まず、次の3点を実行してください。
追加の送金を止める
「税金を払えば出金できる」「保証金が必要」などと言われても、追加でお金や暗号資産を送らないでください。支払っても出金できず、被害が増えるおそれがあります。
証拠を保存する
相手とのメッセージ、SNSアカウント、投資サイトのURL、振込明細、ウォレットアドレス、取引ID(トランザクションハッシュ)などを保存します。相手にブロックされたり、サイトが消えたりする前に、画面のスクリーンショットも残しておきましょう。
秘密鍵などを誰にも渡さない
シードフレーズ(リカバリーフレーズ)や秘密鍵は、警察、弁護士、取引所を名乗る相手にも渡してはいけません。知られると、ウォレットに残っている資産まで移されるおそれがあります。
詳しい対応手順は、暗号資産の詐欺に遭ったときの対処法|気づいた直後にやるべき行動で解説しています。
被害者の約3割が「泣き寝入り」―Claboの調査結果
Claboは2026年4月10日、暗号資産への投資経験がある国内在住の男女746名を対象に、インターネット調査を実施しました(参照:相談先は世代で真逆?暗号資産詐欺被害者の悲痛な実態と対策|Clabo)。
詐欺被害に遭った人へ相談先や対応を尋ねた結果は、次のとおりです。
相談先・対応 | 回答数 | 割合 |
|---|---|---|
取引所のサポート | 37人 | 35.2% |
SNSで相談 | 37人 | 35.2% |
泣き寝入りした | 31人 | 29.5% |
どこに相談すればよいかわからない | 29人 | 27.6% |
消費生活センター | 28人 | 26.7% |
弁護士 | 24人 | 22.9% |
警察 | 22人 | 21.0% |
複数回答のため、合計は100%を超えます。また、割合はこの設問への回答者を母数としており、調査対象者746名全体に占める割合ではありません。
「泣き寝入りした」と答えた人は29.5%で、消費生活センター、弁護士、警察へ相談した人の割合をそれぞれ上回りました。被害に遭っても、相談先がわからず行動できない人が少なくないことがうかがえます。
なお、この調査でわかるのは「どこへ相談したか」であり、「返金に成功したか」ではありません。相談率を返金成功率と読み違えないよう注意が必要です。
状況別の相談先
相談先には、それぞれ異なる役割があります。迷う場合は一つに絞らず、複数の窓口へ相談して構いません。
銀行・暗号資産交換業者
銀行振込をした場合は、振込先の銀行と自分が利用した銀行へ早急に連絡します。暗号資産を取引所から送った場合は、利用した取引所のサポートにも連絡し、送付先アドレスや取引IDを伝えてください。
連絡すれば必ず送金を止められるわけではありませんが、時間がたつ前に相談することが重要です。
消費生活センター
業者との契約や取引上のトラブルについて、対応方法の助言を受けられます。消費者ホットライン「188」へ電話すると、最寄りの消費生活相談窓口につながります。
警察
詐欺の被害として相談する窓口です。緊急ではない場合は、警察相談専用電話「#9110」を利用できます。相談時には、相手とのやり取りや送金記録などの証拠を整理して持参すると、状況を伝えやすくなります。
相手が海外の匿名アカウントであったり、被害から時間がたっていたりすると、捜査や相手の特定に時間がかかる場合があります。
金融庁の相談窓口
無登録業者から勧誘を受けた場合など、暗号資産を扱う業者に問題があると考えられるときの相談先です。ただし、金融庁が個別に返金交渉を代行するわけではありません。
窓口の詳しい使い分けは、暗号資産の詐欺被害・トラブルはどこに相談?警察など3つの相談窓口で解説しています。警察への相談については、暗号資産トラブルの解決に時間がかかる理由|詐欺で警察が動かないと感じたときの対処法も参考にしてください。
弁護士
相手の特定や返還請求、訴訟など、法的な手続きを依頼したい場合の相談先です。
費用は一般に、依頼時に支払う着手金、回収額に応じた成功報酬、手続きに必要な実費などで構成されます。着手金は、回収できなかった場合でも返還されないことがあります。契約前に、費用の総額や追加費用が発生する条件を確認しましょう。
弁護士に依頼しても、返金が保証されるわけではありません。相手を特定できない、資産がすでに海外へ移されている、個人管理のウォレットに移されているといった場合は、法的手続きを取っても回収が難しいことがあります。
費用や依頼先の選び方は、暗号資産(仮想通貨)詐欺は弁護士で回収できる?費用と法律事務所の選び方で解説しています。調査会社の役割については、暗号資産(仮想通貨)詐欺の返金は調査会社に頼める?役割と見極め方をご覧ください。
「返金保証」をうたう業者に注意
「必ず取り戻せる」「返金確率100%」などと断言する業者には注意してください。回収できるかどうかは、送金方法、相手の特定、経過時間、資産の移動先などに左右されます。調査前から返金を保証することはできません。
また、詐欺被害者へ近づき、回収費用などの名目でさらにお金をだまし取る「二次被害」もあります。特に、次のような相手とはすぐに契約しないでください。
- 「必ず返金できる」と断言する
- 「今日中」などと契約を急がせる
- 業務内容や費用を十分に説明しない
- 高額な費用を前払いで求める
- シードフレーズや秘密鍵を聞き出そうとする
弁護士資格のない者が、報酬を得る目的で返金交渉や法律事務を請け負うと、弁護士法72条に違反する非弁行為にあたるおそれがあります。契約前に、運営者の情報、資格、具体的な業務内容を確認してください。
まとめ
暗号資産詐欺の返金確率を、一律の数字で示すことはできません。回収の見込みは、主に次の3条件で変わります。
- 銀行振込か、暗号資産の直接送付か
- 相手の身元を特定できるか
- 被害からどのくらい時間が経っているか
被害に気づいたら、追加送金を止め、やり取りや送金履歴を保存し、銀行・取引所・警察などへ早めに相談してください。返還請求などの法的手続きが必要な場合は、弁護士への相談も選択肢になります。
ただし、どの相談先を利用しても返金が保証されるわけではありません。「必ず返金できる」とうたう業者や、契約を急がせる相手には十分注意してください。


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