暗号資産(仮想通貨)に関するトラブルが増加していることをご存じでしょうか。特に近年は、SNSやマッチングアプリをきっかけとした投資詐欺などが問題となっており、金融庁や消費者庁が注意喚起をおこなうなど、社会的な問題として取り上げられる機会も増えています。
暗号資産に関するトラブルといっても、その内容はさまざまです。投資詐欺の疑いがあるケースもあれば、投資スクールや情報商材などの契約トラブル、暗号資産交換業者との問題が発生する場合もあります。
こうしたトラブルが起きた場合、まず迷うのが「どこに相談すればよいのか」という点ではないでしょうか。暗号資産に関する相談窓口はひとつではなく、トラブルの内容によって適切な相談先が異なります。代表的な相談先として挙げられるのが、消費生活センター、警察、そして金融庁です。それぞれ役割が異なるため、状況に応じて適切な窓口に相談することが重要になります。
この記事では、暗号資産のトラブルが起きたときに利用できる主な相談窓口と、それぞれの役割の違いについて解説します。どのようなケースでどこに相談すべきなのかを整理していきます。
消費者生活センターを使うべきケース

消費生活センターは、商品やサービスの契約トラブルなど、消費者と事業者の間で発生した問題について相談できる窓口です。暗号資産に関する問題でも、事業者との契約や勧誘に関するトラブルであれば相談対象になる場合があります。専門の相談員に状況を整理してもらい、今後の対応方法についてアドバイスを受けることができます。
また、消費生活センターでは、必要に応じて事業者への連絡方法や解決に向けた手続きについても案内してくれます。トラブルの内容によっては、警察や関係機関への相談を勧められることもあります。
ここでは、具体的にどのようなケースで利用できるのか確認していきます。
投資詐欺などの被害に遭った場合
暗号資産に関するトラブルのなかでも、特に相談が多いのが投資詐欺です。近年は、SNSやマッチングアプリを通じて投資話を持ちかけられ、暗号資産の購入や送金を求められるケースが報告されています。
SNSで簡単に稼げる副業を紹介された。暗号資産のサイトで指示されたタスクをこなすと高額報酬が貰えるというが、違約金を請求された。
参照:国民生活センター
マッチングアプリで知り合った女性から暗号資産の運用を勧められた。儲かったので引出を求めたら税金を請求された。
参照:国民生活センター
よくあるのは「確実に利益が出る」や「元本は保証されている」などと説明され、暗号資産を指定されたウォレットや投資サイトに送金してしまうケースです。最初は少額の利益が表示されることもありますが、その後は出金できなくなったり、追加の送金を求められたりすることがあります。
こうしたトラブルに遭った場合、消費生活センターに相談することで、状況の整理や今後の対応についてアドバイスを受けることができます。相談内容によっては、警察などの関係機関への相談を案内される場合もあります。
暗号資産の投資詐欺は、手口が巧妙化しており、被害に気づくまで時間がかかることも少なくありません。不審な投資勧誘を受けた場合や、被害の可能性がある場合には、早めに相談することが重要です。
スクールやコミュニティで契約トラブルが起きた場合
暗号資産に関するトラブルには、投資スクールやコミュニティなどの契約をめぐる問題もあります。例えば、暗号資産の投資方法を学べるとして高額な受講料を支払ったものの、説明されていた内容と実際のサービスが大きく異なるケースです。
また、投資コミュニティやオンラインサロンに入会したものの、具体的な情報提供がほとんどなく、期待していたサポートを受けられないといった相談もあります。さらに、自動売買ツールや投資ノウハウなどの高額な情報商材の購入を勧められ、契約を迫られるケースも報告されています。
このような場合、契約内容や勧誘の方法によっては、消費者契約法などの観点から契約の取り消しや返金が認められる可能性があります。消費生活センターに相談することで、契約内容の確認や今後の対応についてアドバイスを受けることができます。
強引な勧誘や誇張広告による契約を迫られた場合
暗号資産におけるトラブルのひとつに、強引な勧誘や誇張された広告によって契約を迫られる事案が報告されています。例えば「必ず利益が出る」や「誰でも簡単に稼げる」など、投資のリスクを十分に説明しないまま契約を勧められるケースです。
また、SNSやセミナーなどを通じて投資話を持ちかけられ、長時間の説明や心理的な圧力によって契約を迫られるケースもあります。こうした勧誘では、冷静に判断する時間が与えられないまま契約してしまうことも少なくありません。
このような場合、勧誘の方法や説明内容によっては、消費者契約法の規定により契約の取り消しが認められる可能性があります。消費生活センターでは、勧誘の状況や契約内容を整理したうえで、解約や返金に向けた対応についてアドバイスを受けることができます。
暗号資産に関連するサービスで強引な勧誘を受けた場合や、広告内容と実際のサービスに大きな差があると感じた場合には、消費生活センターへの相談を検討すると良いでしょう。
警察に相談すべきケース

暗号資産に関するトラブルには、犯罪に該当する可能性があるケースもあります。このような場合は、消費生活センターではなく、警察への相談を検討する必要があります。
例えば、暗号資産の投資話を持ちかけられ資金をだまし取られた場合や、アカウントの不正アクセスによって暗号資産が送金されてしまった場合などです。こうしたケースは、詐欺や不正アクセスなどの犯罪に該当する可能性があります。被害状況を確認したうえで事件として捜査される可能性があるため、犯罪の疑いがある場合は、早めに警察へ相談することが重要です。
ここでは、警察への相談が検討される主なケースについて紹介します。
投資詐欺の可能性が高い場合
暗号資産の投資を名目に資金を騙し取られた可能性がある場合は、警察への相談を検討する必要があります。例えば、投資を勧められて暗号資産を送金したものの、出金できなくなったり、運営者と連絡が取れなくなったりするケースです。
また、出金するために「手数料」や「保証金」などの名目で追加の送金を求められる場合もあります。このようなケースでは、最初から資金をだまし取る目的で勧誘が行われている可能性があります。
こうした被害が疑われる場合は、詐欺事件として扱われる可能性があります。警察に相談する際は、相手とのメッセージの履歴や送金記録、利用したサイトの情報などを整理しておくと状況を説明しやすくなります。
不正アクセスやアカウントを乗っ取られた場合
暗号資産取引所のアカウントやウォレットが第三者に不正アクセスされ、保有していた暗号資産が送金されてしまうケースもあります。このような場合は、不正アクセスや不正送金の被害に該当する可能性があります。
不正アクセスとは、簡単にいえば「アクセス権限を持たない人が許可なくコンピューターやシステムに侵入する行為」です。たとえパスワードを何らかの形で入手していた場合でも、正当な権限がない状態でログインすれば違法となる可能性があります。
例えば、取引所を装ったメールやメッセージに記載されたリンクから偽サイトに誘導され、ログイン情報を入力してしまうケースです。また、マルウェアなどによって認証情報が盗まれ、アカウントが不正に利用されるケースも報告されています。
こうした行為は、不正アクセス行為の禁止等に関する法律の第三条にておこなってはならないと定められており、他人のIDやパスワードを利用して、アクセス権限のないシステムにログインするのは違法です。このような被害が発生した場合は、まず暗号資産交換業者に連絡し、アカウントの利用停止などの対応を依頼することが重要です。そのうえで、被害の状況を整理し、警察へ相談することも検討すると良いでしょう。
金融庁に相談すべきケース

暗号資産に関する問題には、暗号資産交換業者(取引所)や暗号資産関連サービスの運営に関わるものもあります。このような場合は、暗号資産交換業者を監督する行政機関である金融庁へ相談や情報提供を検討することもできます。
※ただし、金融庁は個別のトラブルを直接解決する機関ではありません。契約トラブルや被害の相談については、消費生活センターや警察への相談が適している場合もあります。
金融庁への相談は、公式サイトに設けられている相談窓口からおこなうことが可能です。また、金融庁のウェブサイトでは、暗号資産交換業者の登録状況も公開されています。利用しているサービスが登録業者かどうかを確認したい場合にも活用できます。
ここでは、どのようなケースで金融庁への相談を検討すべきなのか、主な例を紹介します。
無登録の暗号資産交換業者の疑いがある場合
日本では、暗号資産の売買や交換サービスを提供する事業者は、金融庁の登録を受ける必要があります。これらの事業者は「暗号資産交換業者」と呼ばれ、資金決済法にもとづいて監督されています。
しかし、金融庁の登録を受けていないにもかかわらず、日本の利用者を対象にサービスを提供している事業者が確認されることもあります。例えば、日本語のウェブサイトで暗号資産投資を勧誘しているケースや、日本の利用者に口座開設を促しているケースなどです。
実際に金融庁は、登録を受けていない海外の暗号資産取引所に対して警告を出したことがあります。2024年には、BybitやKuCoin、Bitgetなど複数の海外取引所に対し、日本で無登録のまま暗号資産交換業をおこなっていたとして警告が出されました。
また、無登録で暗号資産の販売を行い、刑事事件に発展したケースもあります。例えば、暗号資産「ワールドフレンドシップコイン(WFC)」を登録なしで販売していたとして、運営者が起訴された事例が報じられています。
交換業者として国に登録せず「ワールドフレンドシップコイン」(WFC)と呼ばれる暗号資産(仮想通貨)を販売したとして、警視庁組織犯罪対策4課は8日、取引を担っていた運営会社代表、紙屋道雄容疑者(71)ら7人を資金決済法違反容疑で逮捕した。
参照:日本経済新聞
このように、無登録の事業者によるサービス提供は問題となる場合があります。利用しているサービスに不安がある場合は、金融庁が公表している暗号資産交換業者の登録一覧を確認することが重要です。登録状況に疑問がある場合には、金融庁の相談窓口を通じて情報提供しましょう。
暗号資産交換業者の対応に問題がある場合
暗号資産交換業者の対応に疑問を感じる場合も、金融庁への相談を検討できるケースがあります。
事業者は、金融庁の登録を受けたうえで資金決済法に基づいてサービスを提供しています。しかし、取引所の対応をめぐって利用者が不安を感じるケースも珍しくありません。例えば、出金手続きが長期間おこなわれない場合や、サービス停止などの重要な対応について十分な説明がない場合などです。
このような場合は、まず利用している暗号資産交換業者に問い合わせることが基本となります。そのうえで、対応に問題があると感じる場合には、金融庁の相談窓口を通じて情報提供をおこなうことも可能です。
金融庁は個別のトラブルを直接解決する機関ではありませんが、利用者から寄せられた情報は、暗号資産交換業者の監督や利用者保護の取り組みに活用される場合があります。
暗号資産関連サービスの制度や規制に関する相談
暗号資産に関するサービスには、法律の対象となるのか分かりにくいものもあります。例えば、新しい投資サービスや暗号資産を利用したビジネスなどの場合、どのような規制が適用されるのか判断が難しいことがあります。
金融庁は、暗号資産交換業者をはじめとする金融サービスを監督する行政機関です。そのため、暗号資産関連サービスがどのような制度の対象になるのか確認したい場合には、金融庁の相談窓口を利用することができます。また、暗号資産交換業者の登録制度や、暗号資産サービスに関する規制の内容について確認したい場合も、金融庁の公開情報や相談窓口を通じて情報を得ることが可能です。
暗号資産に関する制度や規制について疑問がある場合は、金融庁が公表している資料や相談窓口を確認すると良いでしょう。
まとめ

暗号資産に関するトラブルが発生した場合、状況に応じて適切な相談先を選ぶことが重要であり、トラブルの内容によって相談すべき窓口は異なります。
投資スクールやコミュニティなどの契約トラブルであれば消費生活センター、投資詐欺や不正アクセスなど犯罪の可能性がある場合は警察。暗号資産交換業者の登録状況や対応に関する問題であれば、金融庁への相談や情報提供をおこなうことも可能です。
暗号資産は仕組みが複雑なうえ、海外のサービスも多く利用されています。そのため、トラブルが発生した際にどこへ相談すべきか迷うことも少なくありません。被害の拡大を防ぐためにも、問題に気づいた場合は早めに相談窓口へ連絡し、状況に応じた対応を検討することが大切です。

