暗号資産市場における詐欺被害は、依然として深刻な課題です。
本記事では、過去または現在、暗号資産に投資経験のある方を対象に実施した調査結果を公開します。

調査からは、被害に遭った方の約3割が「泣き寝入り」せざるを得ない厳しい実態が浮かび上がりました。
相談先の選択肢は世代間で大きく異なり、20代と60代では全く異なる対応傾向が見られます。

また、SNS上では8割近くが詐欺的投稿を日常的に目撃しているという、被害と隣り合わせの投資環境も明らかになりました。
自身の資産を守るために必要な知識と、万が一の際の相談経路について、データに基づいた分析をお届けします。

詐欺被害者の29.5%が泣き寝入り

区分

回答数

割合

詐欺・フィッシングに遭遇したことがある

458人

61.4%

遭遇したことはない

288人

38.6%

相談先・対応

回答数

割合

取引所のサポート

37人

35.2%

SNSで相談

37人

35.2%

泣き寝入りした

31人

29.5%

どこに相談すればいいかわからない

29人

27.6%

消費者センター

28人

26.7%

弁護士

24人

22.9%

警察

22人

21.0%

相談先と泣き寝入りの実態

暗号資産に関連する詐欺被害に遭った際、投資家がどのような行動をとるのか。
調査の結果、被害者の約3割にあたる29.5%が「泣き寝入り」を選択していることが判明しました。

また、同じ程度の割合で、誰にも被害を報告できていない層が存在します。
資金を失うという精神的ショックに加え、どのように対処すべきかという不安が、投資家を追い詰めている状況が浮き彫りとなりました。

専門窓口への相談状況

暗号資産の被害発生時に、公的な相談機関や専門家へ頼るケースも散見されます。
取引所のサポートやSNSでの相談と並び、消費者センターや弁護士へ連絡を入れた投資家は全体の約2割を占めていました。

しかし、これらの窓口を利用しても必ずしも解決に至るとは限りません。
被害金額や証拠の有無、さらには詐欺の手口が巧妙化している現状が、専門家への相談ハードルを上げている側面があります。

警察への相談も21.0%にとどまりました。
現状では、法的な救済までたどり着くことの難しさが、多くの投資家にとっての課題といえるでしょう。

どこにも相談できない壁

一方で、27.6%の被害者は「どこに相談すればいいかわからない」と回答しています。
被害に遭った直後は冷静な判断ができず、情報の整理すらままならないケースも多いはずです。

被害事実を認めたくないという心理的障壁も無視できません。
結果として、多くの投資家が孤立したまま、被害を抱え込む構造が強固に存在しています。

暗号資産市場におけるこうした環境は、新規参入者にとって大きなリスクといえます。
被害を最小限に抑えるためには、事前の知識武装だけでなく、万が一の際の相談経路を確立しておくことが極めて重要です。

相談先は世代で大きく分かれる

年代

警察

SNS相談

消費者センター

20代

27.5%

26.7%

22.0%

30代

30.0%

20.0%

32.1%

40代

33.0%

15.0%

25.0%

50代

35.0%

8.0%

20.0%

60代

38.7%

3.2%

18.0%

20代はSNSでの相談が最多

20代の暗号資産投資家は、トラブルに直面した際、SNSを相談先として選ぶ傾向が極めて顕著です。
データによれば、26.7%がSNSを活用しており、これは全年代の中で突出した数値となっています。
身近なコミュニケーションツールとしてSNSが定着している背景から、公的機関よりも先に、同じ被害者や知識のあるユーザーへ繋がりを求める行動心理が働いているのでしょう。

デジタルネイティブ世代特有の、「オンラインで解決策を探す」という適応力の高さが表れています。
ただし、SNS上には詐欺師のなりすましアカウントも存在するため、安易な相談はさらなる二次被害を招くリスクも否定できません。

60代は警察への通報が中心

一方で、60代の投資家はトラブル発生時に公的機関である警察を頼る比率が高まっています。
調査結果では38.7%が警察を相談先に挙げており、SNSを相談先とする層はわずか3.2%に留まりました。
これは単なる世代間の嗜好の違いではなく、これまでの人生経験で培われた「公的な窓口への信頼感」が大きく影響していると考えられます。

何か問題が起きた際には、まず法的な裏付けを持つ組織を頼るべきだという、危機管理に対する堅実な姿勢が垣間見えます。
迅速な相談行動は非常に重要ですが、暗号資産という専門性の高い領域において、警察の対応が必ずしも即効性を持つとは限りません。

被害回復を目指すのであれば、専門的な知見を持つ弁護士や消費者センターとの併用も視野に入れるべきでしょう。

相談行動に見る世代間格差

相談先の選択肢には、世代ごとに明確なコントラストが存在しています。
20代がデジタル空間での相互扶助を重視するのに対し、高齢層は既存の社会インフラに救いを求める構造が浮かび上がりました。
特筆すべきは、30代において消費者センターの利用率が32.1%と全年代でピークを迎えている点です。

仕事や家計の管理において消費者トラブルに慣れている層が、公的機関をうまく活用できている現実を示唆しています。
自身の年齢や経験則だけでなく、現在の相場環境や被害の内容に合わせて、柔軟に相談先を使い分けるリテラシーこそが投資家には必要です。

20代40代の実質泣き寝入り率32.8%

年代

泣き寝入り率

実質泣き寝入り(不明含む)

20代

-

32.8%

30代

-

28.0%

40代

18.2%

32.8%

50代

1.3%

18.4%

60代

0.0%

10.0%

20代40代で高まる諦めの実態

暗号資産の詐欺被害において、20代と40代の実質的な泣き寝入り率が32.8%に達しています。
これは、調査対象の約3人に1人が、被害後に具体的な救済措置を講じることができていないことを意味します。
なぜ働き盛りの世代で、これほどまでに解決を諦める傾向が強いのでしょうか。

ひとつには、時間的余裕の欠如が考えられます。

業務や家事で忙殺される中、専門機関との煩雑なやり取りを回避したいという心理が働くのかもしれません。
また、少額被害であれば「勉強代」として処理してしまうケースも推察されます。

年齢とともに下がる泣き寝入り

一方で、年齢層が上がるにつれてこの割合は明確に低下しています。
50代では18.4%、60代に至っては10.0%まで減少しており、若年層や働き盛り世代とのギャップが浮き彫りになりました。

高齢層が救済措置に前向きな理由として、社会的な経験値が挙げられます。
これまで遭遇したトラブルや法的な問題に対して、冷静に対処する術を身につけているのではないでしょうか。
「失ったものは法的に取り返す」という強い意志が、行動を突き動かしている可能性があります。

もちろん、単純な比較はできません。
ただ、年齢を重ねるごとに被害を放置せず、公的な支援を求めるリテラシーが高まっているのは事実といえます。

世代間で対応力に生じる格差

データを見ると、若年層と高齢層の間には、実に3倍以上の泣き寝入り率の差が存在しています。
この数値は、単なる意識の差ではなく、投資環境や詐欺に対する「耐性」の違いを映し出しているのでしょう。
投資経験が浅い層は、被害に遭った際にショックが大きく、思考停止に陥りやすい傾向があります。

一方で、高齢層は万が一のトラブルを想定した備えができているのかもしれません。
重要なのは、どちらの層も被害に遭っているという点です。

どのような年齢であっても、暗号資産詐欺は身近に潜んでいます。
「自分は大丈夫」という過信を捨て、万が一の際の相談窓口を事前に把握しておくことこそが、最も有効な対策となります。

詐欺遭遇の実態は偽DM27.3%がトップ

種類

回答数

割合

偽DMが来た

204人

27.3%

SNSの投資話に誘われた

152人

20.4%

偽サイトにアクセスした

112人

15.0%

実際に資金を失った

105人

14.1%

Approve詐欺

85人

11.4%

遭遇したことはない

288人

38.6%

偽DMとSNS投資勧誘が日常化

暗号資産市場における詐欺の入口として、SNSや偽のダイレクトメッセージ(DM)が日常的な脅威となっています。
今回の調査では、27.3%が偽DMを受け取り、20.4%がSNSで投資勧誘を受けた経験があると回答しました。

これらは、攻撃者が不特定多数にリーチするための最も一般的な手法です。
魅力的な利益や限定情報を謳い、ユーザーの警戒心を巧みに解こうとします。

一見すると安易な勧誘に見えますが、SNSの利用が定着した現代では、誰しもがターゲットになり得ます。
「自分だけは大丈夫」という油断が、被害への第一歩であることを肝に銘じなければなりません。

フィッシング被害と資金喪失

勧誘をきっかけに、偽サイトへ誘導され被害に遭うケースも後を絶ちません。
回答者の15.0%が偽サイトへのアクセスを経験し、その結果として14.1%が実際に資金を失っています。

偽サイトは、取引所や有名なサービスと酷似したデザインで構築されており、一目で見抜くことは困難です。
URLの確認を怠るだけで、ログイン情報やウォレットの秘密鍵が即座に流出するリスクを孕んでいます。

被害者の中には、わずかな操作ミスが致命的な損失に繋がったという例も少なくありません。
一度アクセスしてしまうと、取り返しがつかない事態になるという緊張感を持つことが不可欠です。

巧妙化するApprove詐欺

昨今の暗号資産市場で特に警戒すべきなのが、ウォレットの権限を悪用する「Approve詐欺」です。
調査では11.4%が被害に遭遇しており、その手口の巧妙さが浮き彫りになりました。

この詐欺は、偽サイトなどで署名を要求することで、ウォレット内の資産を自由に引き出せる権限を奪うものです。
一度承認してしまうと、ユーザー自身が気づかないうちに資産が抜き取られる仕組みとなっています。

技術的な知識がない投資家にとって、コントラクトの承認画面を正しく判断するのは至難の業です。
未知のサイトでの操作を極力避け、信頼できるプラットフォーム以外での取引には細心の注意を払う必要があります。

SNSユーザーの79.5%が詐欺的投稿を見かける

目撃頻度

割合

たまに見かける

54.2%

頻繁に見かける

25.3%

ほとんど見かけない

13.9%

見かけたことがない

6.6%

詐欺的投稿の目撃頻度

暗号資産の投資家にとって、SNSは情報収集の場であると同時に、詐欺の温床にもなっています。

調査によれば、全体の79.5%が詐欺的投稿を「見かける」と回答しました。
具体的には「たまに見かける」が54.2%を占め、「頻繁に見かける」という回答も25.3%に達しています。

日常的に利用するタイムライン上で、これほど高い確率で悪意ある投稿に接触している現実は、非常に深刻です。

暗号資産に関連するキーワードで検索を行えば、被害に直結しかねない投稿がすぐに見つかる環境といえます。
投資家は、自分のタイムラインが常に危険と隣り合わせであることを認識しておくべきです。

日常的に潜む詐欺的投稿の脅威

特に注目すべきは、4人に1人が「頻繁に見かける」と回答している点です。
これは、SNS上のアルゴリズムや投稿手法が、悪意ある宣伝を拡散しやすい構造になっていることを示唆しています。

かつては怪しいと判断できた投稿も、巧妙に作成された偽のアカウントやインフルエンサーのなりすましによって、非常に見抜きにくくなっています。

「有名なプロジェクトだから安心」という先入観を利用し、ユーザーを偽サイトへと誘導する手口は、年々洗練されている印象です。

一時の気の緩みが、これまで積み上げた資産を失うきっかけになり得ます。
SNSの情報がすべて正しいわけではないという強い警戒心を持ち続けることこそ、現在の投資環境では必須の防衛線です。

投資家が備えるべき防衛策

これほど詐欺的投稿が溢れる環境では、能動的な防御策を講じる以外に手段はありません。
まずは「SNS上の投資話はすべて疑う」という原則を、投資の基本ルールとして確立させるべきです。

もし見慣れないアカウントから送金や署名を促された場合は、公式チャンネル以外の情報を即座に遮断してください。
信頼できる取引所やプロジェクトからの発表であるか、URLのドメインは正しいかを必ず確認する癖をつけましょう。

被害を未然に防ぐ力は、情報の真偽を見極めるリテラシーに直結します。
どれほど魅力的なリターンを謳う投稿であっても、一呼吸おいて冷静に分析する姿勢こそが、あなたの大切な暗号資産を守る最大の防壁となります。

まとめ

今回の調査を通じて、暗号資産詐欺の被害に遭った投資家のうち、約3割が泣き寝入りを選択しているという厳しい現実が明らかになりました。

被害直後の混乱の中で、どこに相談すべきか判断できず、孤立してしまう投資家は少なくありません。
特に20代や40代では実質的な泣き寝入り率が3割を超えており、働き盛り世代ほど適切な救済措置にたどり着けていない現状が浮き彫りとなりました。

一方で、SNS上には詐欺的な投稿が溢れており、8割近くのユーザーが日常的にこれらに接触しています。

被害に遭わないためには、SNSの投資話は疑うという警戒心を持ち、不審なリンクや署名要求には決して応じないリテラシーが不可欠です。

万が一の際は、世代特有の相談傾向に頼りすぎるのではなく、公的機関や専門家を組み合わせた多角的な対応が求められます。

被害を最小限に抑えるには、事前対策と相談経路の確保という「二段構えの備え」が、今の暗号資産市場を生き抜く投資家の必須条件といえるでしょう。

調査概要

調査実施日:2026年4月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:国内在住の男女(暗号資産に投資している人、投資したことのある人)
有効回答数:746名
実施機関:株式会社Clabo

調査設問項目

  • 暗号資産(仮想通貨)の投資経験はありますか?
  • 詐欺・フィッシングに遭遇したことはありますか?
  • SNSで詐欺的な投稿をどのくらい見かけますか?
  • 詐欺被害に遭った際、どこに相談しましたか?