国内の取引所で買った暗号資産(仮想通貨)は、取引所に預けたままにするほか、自分で管理するウォレットへ送って使うこともできます。
ただし、送金は一度実行すると取り消せず、出金画面で選ぶ項目を誤ると、送った資産を取り戻せなくなることがあります。Claboが2026年4月に暗号資産の投資経験者746名に行った調査では、418名(56.0%)が暗号資産の送金で何らかのトラブルを経験していました。
出金画面には、送り先のアドレスのほかに、ネットワークや宛先タグといった初めて見る項目が並ぶことがあります。送り先を登録する手続きも、取引所ごとに違います。
送る前に知っておきたいのは、ウォレット側で済ませておく準備と、出金画面の各項目の決め方です。この記事では、ウォレットの準備、ネットワークと宛先タグの確認、手数料、送付先の登録から着金の確認までの手順を、国内の主要取引所5社の仕様とあわせて解説します。
送金前にウォレットで準備すること
暗号資産を受け取るウォレットは、シードフレーズ(ウォレットを復元するための英単語の並び)を紙などに書き留めてから使い始めます。送金した後に、スマートフォンの故障や機種変更でウォレットのアプリを開けなくなっても、シードフレーズがあれば、別の端末でウォレットを復元して資産を取り出せます。同じ調査では、機種変更の際のウォレットのトラブルで「困って資産を失った」と答えた人が、回答者746名のうち150名(20.1%)いました。シードフレーズの控え方と保管の注意点は、暗号資産ウォレットのバックアップ方法で詳しく解説しています。
あわせて、送る暗号資産を、そのウォレットで受け取れるかを確かめます。ウォレットのアドレスはブロックチェーンの系統ごとに別で、イーサリアム系の暗号資産はどれも0xで始まる同じアドレス、ビットコインはそれとは別のビットコイン用のアドレスで受け取ります。対応するアドレスが無いウォレットには、その暗号資産を送れません。
送るネットワークと宛先タグの確認
取引所の出金画面には、送り先のアドレスのほかに、ネットワークを選ぶ欄や、宛先タグ(メモ)を入れる欄が出てくることがあります。どちらも送る側が好みで決めるものではなく、受け取る側がどう受け取るかで決まる項目です。ネットワークを選ぶときに何から確かめるかと、宛先タグが必要になるのはどんな相手に送るときかを、それぞれ確認します。
ネットワークの合わせ方
同じ暗号資産でも、記録されるネットワーク(ブロックチェーン)が違えば、別々の資産として管理されます。出金画面でネットワークを選べるときは、受け取るウォレットが対応しているか、受け取った後に何に使うか、手数料の3つを、下の表の順に確かめて決めます。
確かめる順 | 確認すること | 判断の基準 |
|---|---|---|
1番目 | 受け取るウォレットが対応しているか | ウォレットの対応ネットワークにあるものだけが候補になる |
2番目 | 受け取った後に何に使うか | 使いたいサービスがあるネットワークに合わせる。後から別のネットワークへ移すと、別に手数料がかかる |
3番目 | 手数料 | 候補が複数残った場合だけ、出金手数料の安いほうを選ぶ(額は「送金にかかる手数料」の表) |
受け取るウォレットが対応しているネットワークでも、送ったネットワークと、ウォレットで表示しているネットワークが違うと、残高に出ないことがあります。イーサリアムとArbitrumのようなイーサリアム互換のネットワーク同士なら、資産は届いたネットワークに残っていて、ウォレットでそのネットワークを表示すれば見えます。イーサリアム互換ではない、系統の違うネットワークとの取り違えは、ほぼ取り戻せません。同じ調査では、暗号資産の送金トラブルとして「ネットワークを間違えて送金」を挙げた人が、回答者746名のうち118名(15.8%)いました。取り違えたときの確認と対応は、暗号資産の送金ミスへの対応方法で解説しています。
宛先タグ・メモとは?
宛先タグ(メモ)は、XRPなどの送金で、誰あての支払いかを示す番号です。1つのアドレスで多くの利用者の入金を受ける取引所などが、どの利用者の入金かを見分けるために使います。自分だけが使うウォレットのアドレスに送るときは、通常は要りません。
ただし、出金画面のタグ欄の扱いは取引所で違います。2026年9月30日時点で、SBI VCトレードでは送り先のアドレスを登録するときに宛先タグが必須入力になっていて、タグの指定が無い送り先には「0」を入れます。欄があって迷うときは、使っている取引所の案内に従ってください。
送金にかかる手数料
取引所からウォレットへ送るときは、ブロックチェーン上の手数料(ネットワーク手数料)も発生していますが、利用者が払うのは、取引所が暗号資産ごとに決めた出金手数料です。ネットワーク手数料が、受け取るウォレットの残高から引かれることはありません。主な国内取引所5社の出金手数料は、次のとおりです。
取引所 | BTC | ETH | XRP |
|---|---|---|---|
0.0004 BTC | 0.005 ETH | 無料 | |
0.0005〜0.016 BTC(変動制) | 0.005〜0.16 ETH(変動制) | 手数料ページに記載なし | |
0.0006 BTC | イーサリアム:0.005 ETH<br>Arbitrum・OP Mainnet:0.00042 ETH | 0.1 XRP | |
無料 | 無料 | 無料 | |
無料 | 無料 | 無料 |
表の額は2026年9月30日時点のもので、改定されることがあるため、送る前に各社の手数料ページで確かめてください。Coincheckは、ネットワーク手数料の水準に応じて額が変わる変動手数料制で、適用中の区分は送金画面に表示されます。
受け取った暗号資産をウォレットから動かすときは、そのネットワークの通貨でガス代を払います。イーサリアムやArbitrum・OP MainnetではETH、PolygonではPOLです。イーサリアム上のトークンだけを送ると、ガス代のETHが無くて動かせないことがあるため、ガス代の通貨も一緒に送っておきます。ガス代の仕組みは、暗号資産のガス代を解説した記事をご覧ください。
出金手数料がかかる取引所では、手数料は送る量に関係なく、1回送るごとにかかります。少額を何度にも分けて送ると、送った額に対する手数料の割合が大きくなります。
取引所からウォレットへ送金する手順
取引所によって、画面の呼び方(bitFlyerとGMOコインは「送付」、Coincheckは「送金」、bitbankは「出金」、SBI VCトレードは「出庫」)や、入力する項目は違います。それでも、自分のウォレットへ送るまでの流れはどの取引所でも共通で、送り先の登録、出金の申請、ウォレットでの着金の確認という3つの段階で進みます。
手順1:送付先アドレスの登録
ウォレットの受取画面でアドレスをコピーし、取引所の送付先(出金先)として登録します。2026年9月30日時点で、主な国内取引所5社はどれも、登録していないアドレスには送れません。
登録では、送付先の種類で「プライベートウォレット」(自分で管理するウォレット)にあたるものを選び、受取人は本人を選びます。自分のウォレット宛てはトラベルルールの通知義務の対象外ですが、取引所には送り先のウォレットの情報を集めて記録する義務があるため、自分宛てでも申告を求められます。登録や送金を断られたときの原因は、トラベルルールで送金できない原因で解説しています。選ぶ項目と、登録後に送れるようになるまでの時間は、取引所によって違います(2026年9月30日時点・各社公式FAQ)。
取引所 | 自分のウォレットを登録するときに選ぶ種類 | 登録後の待機 |
|---|---|---|
送付先リストの「プライベートウォレット」(2025年7月30日から送付先リストから選ぶ方式) | 一時的な機能制限あり(時間の記載なし) | |
「プライベートウォレット(MetaMask等)」 | 登録後、一定時間は送金できない(時間の記載なし) | |
「プライベートウォレット」(登録住所の確認と、出金目的の選択も必要) | 審査あり(結果はメールで通知) | |
「プライベートウォレット」(送付時に目的を選ぶ) | 審査完了メールから24時間は送付できない | |
受取先で「その他」を選び、ウォレット名を入力(移転の目的も選ぶ) | 記載なし(本人確認書類の提出を求められる場合あり) |
貼り付けたアドレスは、先頭と末尾だけでなく中ほどの文字まで、ウォレットの受取画面と照らし合わせます。送金履歴に似たアドレスを紛れ込ませ、先頭と末尾だけを本物に似せる手口があるため、アドレスは送金履歴ではなく受取画面からコピーします。コピーした内容を別のアドレスにすり替えるマルウェアについては、暗号資産を狙うマルウェアで解説しています。
手順2:ネットワークと数量を選んで出金
出金画面で、送る暗号資産と登録したアドレスを選び、ネットワークを選べる場合は「ネットワークの合わせ方」で決めたものを選んで、数量を入れます。表示される出金手数料と、ウォレットに届く数量を確かめ、2段階認証などの確認を経て申請します。
初めて送る先には、先に少額を送り、ウォレットに届いたのを確かめてから残りを送ります。出金手数料がかかる取引所では、テストの分だけ手数料が1回分余分にかかります。
取引所によっては、1回に送れる最小の数量や、出金を処理する時間帯が決まっています。2026年9月30日時点で、GMOコインではBTCを1回に送れる最小の数量が0.02 BTCです(保有する全数量を送る場合を除く)。SBI VCトレードは、平日午前10時までの出庫依頼を、原則として翌銀行営業日までに出庫する予定としています。初めて送るときは、当日中に届かない前提で進めてください。
手順3:ウォレットでの着金確認
ウォレットで、取引所が送ったネットワークを表示して残高を見ます。まだ表示されないときは、取引所の出金履歴にあるトランザクションID(取引ごとの番号)を、そのネットワークのブロックエクスプローラー(取引の記録を検索できるサイト)で調べ、処理が完了しているかを確かめます。処理が完了していないときの原因と確認手順は、暗号資産の送金が反映されない原因と対処法で解説しています。
届くまでの時間は、ネットワークと取引所の処理で変わります。ビットコインは記録のまとまり(ブロック)が平均約10分ごとに作られ、XRPは数秒で確定します。これに、取引所が申請を処理する時間が加わります。
エクスプローラーで処理が完了しているのに残高に出ない場合は、そのトークンがウォレットに表示されていないだけのことがあります。残高が0に見えるときの確認は、暗号資産ウォレットの残高が0表示になる原因と対処法で解説しています。
ウォレットへ移すと税金はかかる?
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)が所得の計算方法を示しているのは、暗号資産の売却や、暗号資産での商品の購入、暗号資産同士の交換などの場面です。取引所から自分のウォレットへ移すことは、このどれにも当たりません。移しただけで税金がかかることは、通常ありません。
移した暗号資産を後で売ったときの所得は、取引所で買ったときの取得価額をもとに計算します。取引所の年間取引報告書には、移した数量が「移出数量」として載るだけなので、移した日時・数量・送付先のアドレス・トランザクションID・手数料を自分で控えておきます。手数料の扱いや、ウォレットで保管している間の税金は、コールドウォレットで保管中の暗号資産にかかる税金で解説しています。
まとめ
取引所から自分のウォレットへ送る手順がそろったら、次は、受け取った暗号資産をどのウォレットでどう持つかを決めます。
- 使うウォレットをまだ決めていない場合は、暗号資産ウォレットの種類と選び方で、目的に合う種類を確かめられます。
- まとまった額を長く保管したい場合は、ハードウェアウォレットの選び方で、資産額と用途に合う1台を選べます。
- ハードウェアウォレットへ移す場合は、コールドウォレットの使い方で、初期設定から送金までの手順を確かめられます。


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