暗号資産(仮想通貨)の税金というと、税率の高さに目が向きがちです。しかし実際に確定申告を経験した人がつまずいていたのは、税率よりも「その金額を、期限までに現金でどう用意するか」という納税資金の問題でした。

弊社が暗号資産の保有経験がある300人に実施したアンケート調査では、確定申告をしたことがある95人のうち6割超が、納税のための資金が足りず困った経験があると回答しました。さらに、納税のために本来は売るつもりのなかった暗号資産を売却した人は7割近くに上ります。含み益のある資産を持っていることと、納税資金があることは別の話です。

しかも、納税額そのものが事前の見込みを超えていました。納税額を知ったときの受け止め方は、8割強が「想定より多かった」というものです。利益が出た時点で額の見当はついていたという人が大半だったにもかかわらず、実際の額はその上をいっています。

この記事では、実際に納めた金額と想定とのギャップ、資金が足りなくなったときに取られた対処法、納税資金の確保状況、そして税負担が利益確定の判断にまで及んでいる実態を、調査データをもとに見ていきます。

この調査でわかったこと

  • 確定申告をしたことがある95人のうち、納税額を知って「想定より多かった」と答えた人は83.2%(79人)
  • 納税のための資金が足りず困った経験がある人は61.1%(58人)
  • 資金が足りなくなったときの対処法は1人あたり平均1.84個。最も多いのは「預貯金を取り崩した」で55.2%(32人・複数回答)
  • 納税のために、本来は売るつもりのなかった暗号資産を売却した人は67.4%(64人)
  • 納税資金を「常に確保している」人は45.3%(43人)で、半数に届かない
  • 回答者300人のうち**46.0%(138人)**が、税金の負担を理由に利益確定を控えた経験を持つ

納税額は「想定より多かった」人が8割強、事前の把握度も二分

今回の調査に回答した300人のうち、暗号資産の利益について確定申告をしたことがある人は95人(31.7%)でした。ここから先しばらくの数値は、いずれもこの95人を母数としています。

まず、利益が出た時点で、その年の納税額をどの程度把握していたかを尋ねました。「正確に把握していた」が42.1%(40人)、「おおよそ把握していた」が43.2%(41人)で、この2つは1人差でほぼ並びます。程度の差はあれ、納税額の見当はついていたという人が大半を占めた形です。一方で「あまり把握していなかった」は12.6%(12人)、「全く把握していなかった」は2.1%(2人)でした。

選択肢

割合

人数

正確に把握していた

42.1%

40

おおよそ把握していた

43.2%

41

あまり把握していなかった

12.6%

12

全く把握していなかった

2.1%

2

合計

100%

95

では、実際に納めた額はどのくらいだったのでしょうか。最も納税額が多かった年の金額を聞くと、「10万円以上30万円未満」が21.1%(20人)、「5万円以上10万円未満」が20.0%(19人)と、この2つが1人差で並びました。数万円から数十万円という帯に回答が集まっており、暗号資産の納税は一部の大口投資家だけの話ではないことがうかがえます。

金額が大きい層も一定数います。「50万円以上100万円未満」が11.6%(11人)、「100万円以上」が8.4%(8人)でした。ただしこの2つはいずれも回答者が10人前後と少ないため、参考値としてお読みください。

選択肢

割合

人数

1万円未満

7.4%

7

1万円以上5万円未満

14.7%

14

5万円以上10万円未満

20.0%

19

10万円以上30万円未満

21.1%

20

30万円以上50万円未満

14.7%

14

50万円以上100万円未満

11.6%

11

100万円以上

8.4%

8

覚えていない

2.1%

2

合計

100%

95

注目したいのは、この納税額を知ったときの受け止め方です。「想定より大幅に多かった」が32.6%(31人)、「想定よりやや多かった」が50.5%(48人)で、合わせて83.2%(79人)が想定を上回ったと回答しました。「想定通りだった」は15.8%(15人)、「想定より少なかった」は1.1%(1人)にとどまります。

選択肢

割合

人数

想定より大幅に多かった

32.6%

31

想定よりやや多かった

50.5%

48

想定通りだった

15.8%

15

想定より少なかった

1.1%

1

合計

100%

95

納税額の見当はついていたと答えた人が大半だったにもかかわらず、実際の額を知った段階では8割強が「想定より多い」と感じています。事前の見積もりと実額の間に、それだけずれが生じやすいということです。なお、この設問が聞いているのは税額の大きさそのものへの評価ではなく、あくまで自分の見込みと実際の額との差です。

確定申告経験者の6割が直面した、納税資金という壁

納税額が想定を超えたとき、次に立ちはだかるのは「その金額を、期限までに現金で用意できるか」という問題です。暗号資産の利益に対する税金は、含み益のまま納めることはできません。値上がりした資産を持っていること自体は、納税資金があることを意味しないのです。

利益が出た年と、その税金を納める時期にはずれがあります。その間に手元の現金が減っていたり、価格が変わっていたりすれば、資金繰りは一気に難しくなります。ここからは、納税のための資金が足りなくなった人がどれくらいいるのか、そして足りなくなったとき実際にどう動いたのかを、順番に見ていきます。

納税資金が足りず困った経験は61.1%

確定申告をしたことがある95人に、納税のための資金が足りず困った経験があるかを尋ねたところ、**「ある」が61.1%(58人)**を占めました。「ない」は38.9%(37人)です。

選択肢

割合

人数

ある

61.1%

58

ない

38.9%

37

合計

100%

95

資金不足で困るのは、申告に慣れていない一部の人だけに起きる例外ではありません。申告を経験した人のうち多数派が、程度の差はあれ資金繰りに直面しています。納税額を把握していた人が大半だったことを踏まえると、「わかっていたのに用意できなかった」という状況が相当数含まれていると読めます。

対処法は平均1.84個、預貯金の取り崩しが最多

資金が足りず困ったと答えた58人に、そのときどう対処したかを複数回答で聞きました。最も多かったのは**「預貯金を取り崩した」で55.2%(32人)**、次いで「暗号資産以外の資産を売却した」が46.6%(27人)です。「暗号資産を売却した」も36.2%(21人)にのぼりました。

制度的な手段や、より切実な対処も挙がっています。「分割での納付を申請した」が19.0%(11人)、「借入をした」が15.5%(9人)、「納付期限に遅れた」が8.6%(5人)、「家族に援助してもらった」が3.4%(2人)でした。

選択肢

割合

人数

預貯金を取り崩した

55.2%

32

暗号資産以外の資産を売却した

46.6%

27

暗号資産を売却した

36.2%

21

分割での納付を申請した

19.0%

11

借入をした

15.5%

9

納付期限に遅れた

8.6%

5

家族に援助してもらった

3.4%

2

その他

0%

0

Q7は複数回答のため、各項目の割合を足すと100%を超え、人数を単純に合計しても母数の58人には一致しません。

この設問で見えてくるのは、対処法の内訳そのもの以上に、その数です。58人の回答は延べ107件にのぼり、1人あたり平均1.84個の手段を併用していたことになります。預貯金を取り崩すだけでは足りず、資産の売却や分割納付の申請を重ねている姿が浮かびます。不足額を1つの方法で埋められた人のほうが、むしろ少数だということです。

売るつもりのなかった暗号資産を売却した人は67.4%

納税のために、本来は売るつもりのなかった暗号資産を売却したことがあるかを尋ねると、**「ある」が67.4%(64人)**に達しました。「ない」は32.6%(31人)です。

選択肢

割合

人数

ある

67.4%

64

ない

32.6%

31

合計

100%

95

この設問は、先ほどの「資金が足りず困った経験」とは別に、確定申告をしたことがある95人全員に尋ねたものです。困った経験があると答えた人の67.4%が売却した、という関係ではありません。両者は同じ95人を母数とする、それぞれ独立した結果として見てください。

とはいえ、7割近くが意図しない売却を経験しているという事実は重く受け止める必要があります。保有を続けるつもりだった資産を、納税という外側の事情で手放す。その判断は、価格や相場観ではなく期限によって迫られます。売却のタイミングを自分で選べなかった以上、その後の値動きによっては、資産形成の計画そのものが崩れることになります。

納税資金を常に確保している人は半数未満、価格下落でさらに苦しくなる経験も

資金不足を防ぐ方法として、まず思い浮かぶのは納税分をあらかじめ取り分けておくことです。納税に使う資金を投資に回す資金とは別に確保しているかを聞いたところ、「常に確保している」と「利益が出た年だけ確保する」が、ともに45.3%(43人)で並びました。「確保していない」は9.5%(9人)、「考えたことがない」は0%です。

選択肢

割合

人数

常に確保している

45.3%

43

利益が出た年だけ確保する

45.3%

43

確保していない

9.5%

9

考えたことがない

0%

0

合計

100%

95

納税資金を意識している人が9割を超えている点は、申告を経験した層らしい結果です。ただし、常に確保していると答えた人は半数に届いていません。利益が出た年だけ確保するという形は、その年の利益に対して都度動く運用です。裏を返せば、確保するタイミングや金額の判断を毎回自分で下すことになり、見積もりを誤れば不足に直結します。前の章で、納税額の見当はついていた人が大半だったにもかかわらず8割強が想定を超えたと感じていたことを思い出すと、この方式の危うさが見えてきます。

さらに厄介なのが、価格の下落です。利益が出た翌年に価格が下がり、納税が苦しくなった経験があるかを尋ねたところ、**「ある」が58.9%(56人)**を占めました。「ない」は37.9%(36人)、「わからない」は3.2%(3人)です。

選択肢

割合

人数

ある

58.9%

56

ない

37.9%

36

わからない

3.2%

3

合計

100%

95

税額が決まるのは利益を確定させた時点であるのに対し、実際に納めるのはその後です。この時間差の間に相場が下がっても、納めるべき金額は変わりません。暗号資産のまま納税分を持っていた場合、下落によって同じ金額を用意するのに、より多くの数量を売らなければならなくなります。約6割がこの苦しさを経験しているという事実は、納税分を暗号資産のまま置いておくことのリスクを示しています。

税負担への不安が及ぼす、利益確定を避ける行動

ここからは、確定申告の経験を問わず、回答者300人全員に尋ねた結果を見ていきます。税金の負担を理由に利益確定を控えたことがあるかという質問に対し、「何度もある」が25.7%(77人)、「一度ある」が20.3%(61人)でした。**合わせて46.0%(138人)**が、税負担を理由に利益確定を見送った経験を持っています。「ない」は54.0%(162人)です。

選択肢

割合

人数

何度もある

25.7%

77

一度ある

20.3%

61

ない

54.0%

162

合計

100%

300

税金は本来、利益が出た後に発生するものです。ところがこの結果を見る限り、税負担への意識は納税の場面にとどまらず、売買の判断そのものに入り込んでいます。なお本調査は、利益確定を控えたことで実際にどれだけの利益を逃したか、あるいは結果的に得をしたかまでは尋ねていません。控えた経験の有無だけを聞いた数値としてお読みください。

では、税金について何が最も不安なのでしょうか。同じ300人に聞いたところ、最も多かったのは**「計算の複雑さ」で26.0%(78人)**でした。「税額の大きさ」が21.3%(64人)、「特に不安はない」が18.0%(54人)と続きます。「納税資金を用意できるか」は14.7%(44人)、「申告の手間」は13.3%(40人)、「税務署から指摘されないか」は6.7%(20人)でした。

選択肢

割合

人数

計算の複雑さ

26.0%

78

税額の大きさ

21.3%

64

特に不安はない

18.0%

54

納税資金を用意できるか

14.7%

44

申告の手間

13.3%

40

税務署から指摘されないか

6.7%

20

合計

100%

300

不安の中心は、金額よりも手続きの側にあります。計算の複雑さと申告の手間を挙げた人を見れば、税額そのものより「正しく処理しきれるか」への不安が大きいことがわかります。一方で「納税資金を用意できるか」を挙げた人は14.7%にとどまりました。

ただしQ10とQ11は、確定申告の経験を問わず300人全員に尋ねた設問です。申告を経験した95人だけを取り出した数字ではないため、ここまで見てきた資金不足の結果とそのまま重ねて読むことはできません。実際に納税を経験する前の段階では、資金の確保はまだ具体的な不安として意識されにくい、という読み方にとどめるのが妥当です。

まとめ

暗号資産の利益で確定申告をした95人のうち、納税額を知って「想定より多かった」と感じた人は83.2%にのぼりました。利益が出た時点で納税額の見当はついていたという人が大半だったにもかかわらず、実際の額は見込みを超えています。

その結果として、納税資金が足りず困った経験がある人は61.1%を占めました。対処法は1つでは足りず、預貯金の取り崩しを筆頭に、1人あたり平均1.84個の手段を併用しています。

本来は売るつもりのなかった暗号資産を売却した人も67.4%にのぼりました。納税の期限は相場の都合を待ってくれないため、売却のタイミングを自分で選べないまま資産を手放すことになります。

一方で、納税資金を常に確保している人は半数に届いていません。利益が出た翌年に価格が下がり納税が苦しくなった経験も、約6割が挙げています。納税分を暗号資産のまま置いておく限り、下落は納税資金の目減りに直結します。

税負担への意識は、納税の場面だけにとどまりません。回答者300人のうち46.0%が、税金の負担を理由に利益確定を控えた経験を持っています。税金について最も不安なこととしては、金額よりも計算の複雑さを挙げる人が多数でした。

利益が確定した時点で、納税分を投資用の資金とは切り離し、価格変動を受けない形で取り分けておく。この調査からは、それが資産を意図せず手放さないための、現実的な備えであることが見えてきます。実際の税額の計算や納付の方法で判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

調査概要と数値の読み方

調査名:暗号資産の納税資金に関する実態調査

調査方法:Webアンケートパネル(モニタリスト会員)によるインターネット調査

調査対象:暗号資産を保有している、または過去に保有していた方

調査期間:2026年8月13日

有効回答数:300人(男性230人・女性70人)

本記事の数値をお読みいただく際の前提です。

  • 設問によって母数が異なります。Q2〜Q6・Q8・Q9は、確定申告をしたことがあると答えた95人が母数です。Q7はさらにそのうち、納税資金が足りず困った経験があると答えた58人が母数です。Q1・Q10・Q11は回答者300人全員が母数です。
  • 母数が異なる設問の数値は、そのまま足したり、一方を他方の結果として結び付けたりすることはできません。
  • Q7は複数回答です。各項目の割合の合計は100%を超えます。
  • 割合は小数第2位を四捨五入して表示しています。表示の都合で合計が100%にならない場合があります。
  • 確定申告をしたことがあると答えた95人のうち女性は21人と少数のため、本記事では男女別の内訳は扱っていません。また回答者全体の性別構成は男性が76.7%と偏っており、本調査では性別間の差について統計的な検定を行っていません。

主な調査設問

  • Q1:暗号資産の利益について、確定申告をしたことがありますか。
  • Q2:最も納税額が多かった年は、暗号資産の利益に対していくら納めましたか。
  • Q3:利益が出た時点で、その年の納税額をおおよそ把握していましたか。
  • Q4:納税額を知ったとき、どう感じましたか。
  • Q5:納税に使う資金を、投資に回す資金とは別に確保していますか。
  • Q6:納税のための資金が足りず、困った経験はありますか。
  • Q7:そのとき、どのように対処しましたか(複数回答)。
  • Q8:利益が出た翌年に価格が下がり、納税が苦しくなった経験はありますか。
  • Q9:納税のために、本来は売るつもりのなかった暗号資産を売却したことがありますか。
  • Q10:税金の負担を理由に、利益確定を控えたことがありますか。
  • Q11:暗号資産の税金について、最も不安に感じることは何ですか。