暗号資産について調べていると、「ボラティリティが高い」という表現を目にすることがあります。ボラティリティとは、価格の振れ幅を示す言葉です。暗号資産は短期間で価格が大きく上下することがあり、この値動きの大きさを理解しておくことは、取引や保有を考えるうえで重要です。
ボラティリティが高いことは、単に危険という意味ではありません。価格が大きく動くという性質を示しており、利益が出る可能性と損失が出る可能性の両方に関係します。そのため、暗号資産を扱う際は、価格上昇だけでなく、急落時のリスクや冷静な判断の難しさも理解しておく必要があります。
この記事では、暗号資産におけるボラティリティの意味や、価格変動が大きくなりやすい理由、注意すべきリスクについて解説します。
暗号資産のボラティリティとは

暗号資産のボラティリティとは、価格の振れ幅の大きさを指す言葉です。価格が短期間で大きく上下する状態を「ボラティリティが高い」と言い、値動きが比較的安定している状態を「ボラティリティが低い」と表現します。
例えば、ある暗号資産の価格が1日で大きく上がったり、反対に短期間で大きく下がったりする場合、その暗号資産はボラティリティが高い状態にあるといえます。株式投資でも値動きの大きい銘柄はリスクが高いと見られますが、暗号資産でも同じように、価格の振れ幅は投資判断における重要な要素になります。
ただし、ボラティリティは単に「危険」という意味ではありません。あくまでも市場の価格変動の大きさを表す言葉です。価格の振れ幅が大きいほど利益が出る可能性もありますが、同じだけ損失が大きくなる可能性もあります。
そのため、暗号資産を取引する際は、価格が上がる可能性だけでなく、短期間で大きく下がる可能性も前提に考える必要があります。金融庁や消費者庁なども、暗号資産は価格が変動し、急落によって損をする可能性があると注意喚起しています。
暗号資産のボラティリティが高くなりやすい理由

暗号資産は、株式や投資信託と比べても価格が大きく動くことがあります。その背景には、暗号資産市場ならではの特徴があります。
株式であれば、企業業績、配当、財務状況、事業の成長性などをもとに価格を判断しやすい面があります。一方で、暗号資産は銘柄によって性質が大きく異なり、価値を判断する基準が分かりにくいものも少なくありません。
そのため、暗号資産の価格は、市場参加者の期待や不安、規制に関するニュース、取引量の変化などによって大きく動く場合があります。ここでは、暗号資産のボラティリティが高くなりやすい主な理由を整理します。
市場参加者の心理によって価格が大きく動くことがある
暗号資産の価格は、市場参加者の期待や不安によって大きく動くことがあります。将来性への期待が高まると買いが集まりやすくなり、反対に不安材料が出ると売りが増えやすくなるためです。
例えば、ビットコインなどの主要な暗号資産でも、相場全体が強気になると価格が短期間で上昇することがあります。一方で、規制強化や大手事業者のトラブルなどが報じられると、投資家心理が悪化し、価格が急落することもあります。
このような値動きは、株式市場でも見られます。ただし、暗号資産は市場の歴史が比較的浅く、価格の妥当性を判断する材料も限られやすいため、期待や不安が価格に反映されやすい面があります。
特に初心者の場合、価格が上がっている場面を見ると「今買わないと乗り遅れる」と感じやすくなります。しかし、感情に引っ張られて取引すると、高値で購入してしまう可能性があるため注意が必要です。
規制や政策に関するニュースの影響を受けやすい
暗号資産は、各国の規制や政策に関するニュースの影響を受けやすい資産です。暗号資産交換業者への規制、税制、取引制限、マネー・ローンダリング対策などの動きによって、市場参加者の見方が変わることがあるためです。
実際に、2023年6月には、米SECが大手暗号資産交換業者のBinanceと創業者を提訴し、ビットコインが約3ヶ月ぶりの安値に下落したと報じられました(参照:US sues Binance and founder Zhao over 'web of deception')。一方で、2024年1月には、米SECがビットコイン現物ETFを初めて承認し、ビットコインは2022年3月以来の高値付近で推移したと報じられています(参照:米SEC、ビットコイン現物ETF初承認)。
このように、規制強化に関するニュースは市場の不安材料になりやすく、制度整備や承認に関するニュースは市場の期待につながる場合があります。暗号資産は国や中央銀行が価値を保証する法定通貨ではないため、制度面の変化や当局の方針が価格に影響を与えやすい面があります。
価格だけを見ていると、急騰や急落の理由が分かりにくい場合があります。しかし、その背景には規制や政策に関するニュースが関係していることもあります。そのため、暗号資産のボラティリティを理解するうえでは、価格の動きだけでなく、規制や制度に関する情報にも目を向けることが重要です。
取引量や流動性によって値動きが大きくなることがある
暗号資産は、取引量や流動性によって値動きが大きくなることがあります。流動性とは、売買のしやすさを示す言葉です。取引量が少ない銘柄では、まとまった買い注文や売り注文が入るだけで価格が大きく動く場合があります。
株式市場でも、取引量の少ない銘柄は値動きが荒くなりやすい傾向があります。暗号資産でも同じように、取引参加者が少ない銘柄や市場規模の小さい銘柄では、価格が急に上がったり下がったりすることがあります。
特に、知名度の低い暗号資産や新しく発行された暗号資産は、主要銘柄よりも価格変動が大きくなる場合があります。買いたい人と売りたい人の数が限られているため、少しの需給変化でも価格に影響しやすいためです。
そのため、暗号資産を確認する際は、価格だけでなく、取引量や市場規模にも目を向ける必要があります。価格が大きく上がっている銘柄でも、取引量が少ない場合は、売りたいときに希望する価格で売れない可能性があります。
レバレッジ取引によって価格変動が拡大する場合がある
暗号資産のボラティリティには、レバレッジ取引も関係します。レバレッジ取引とは、預けた証拠金をもとに、実際の資金よりも大きな金額を取引できる仕組みです。
レバレッジを使うと、価格が想定どおりに動いた場合の利益は大きくなります。しかし、反対方向に動いた場合の損失も大きくなります。さらに、一定以上の損失が発生すると、ポジションが強制的に決済されることがあります(関連:暗号資産のロスカットとは?レバレッジ取引で必ず知っておくべき仕組みと注意点)。
このような強制決済が多く発生すると、売りが売りを呼ぶ形で価格変動が大きくなる場合があります。特に暗号資産はもともとの値動きが大きいため、レバレッジ取引と組み合わさることで、短時間に大きな価格変動が起きることがあります。
初心者の場合、レバレッジ取引を利益機会として見るよりも、損失が拡大しやすい仕組みとして理解しておくことが重要です。価格の振れ幅が大きい市場で無理に大きな取引をおこなうと、想定以上の損失につながる可能性があります。
暗号資産のボラティリティが高いことで起こるリスク

暗号資産のボラティリティが高いということは、価格が大きく動きやすいということです。価格が上がる場面では利益につながる可能性がありますが、反対に下がる場面では損失も大きくなります。
特に初心者は、価格上昇の印象だけで暗号資産を見てしまうことがあります。しかし、ボラティリティの高い資産では、短期間で状況が大きく変わることがあります。
ここでは、暗号資産のボラティリティが高いことで起こりやすいリスクを解説します。
短期間で含み益が含み損に変わる可能性がある
暗号資産では、短期間で「含み益」が「含み損」に変わる可能性があります。含み益とは、保有している資産の評価額が購入価格を上回っている状態です。反対に、含み損とは評価額が購入価格を下回っている状態です。
例えば、ある暗号資産を購入した直後に価格が上がれば、画面上では利益が出ているように見えます。しかし、その後に価格が急落すれば、数日や数時間で含み益が消え、含み損に変わることがあります。
このような値動きは、暗号資産では珍しいものではありません。価格が大きく上がる可能性がある一方で、同じように大きく下がる可能性もあります。
そのため、短期的な上昇だけを見て安心するのは危険です。暗号資産を保有する場合は、購入後に価格が大きく下がる場面も想定しておく必要があります。
急な価格変動によって冷静な判断が難しくなる
暗号資産の価格が大きく動くと、冷静な判断が難しくなることがあります。価格が急上昇している場面では買い遅れたくないという気持ちが強くなりやすく、価格が急落している場面では損失への不安から慌てて売ってしまうことがあるからです。
このような判断は、必ずしも合理的とは限りません。価格の動きだけを見て取引すると、本来は買う予定のなかった場面で購入したり、長期で保有するつもりだった資産を一時的な下落で売却したりする可能性があります。
そのため、暗号資産を取引する前に、どの程度の下落まで許容できるのか、どのような条件で売買するのかを考えておくことが重要です。相場が大きく動いてから判断しようとすると、冷静さを保つことが難しくなります。
レバレッジ取引では損失が大きくなりやすい
暗号資産のレバレッジ取引では、損失が大きくなりやすい点に注意が必要です。レバレッジを使うと、少ない資金で大きな取引ができますが、その分だけ価格変動の影響も大きくなります。
特に注意しないといけないのは「ロスカット」で、レバレッジ取引では証拠金をもとに取引するため、一定以上の損失が発生すると、強制決済によってポジションが解消される場合があります(関連:暗号資産のロスカットとは?レバレッジ取引で必ず知っておくべき仕組みと注意点)。
暗号資産は価格の振れ幅が大きいため、短時間の値動きでも証拠金維持率が悪化する可能性があります。想定よりも早く損失が拡大し、取引を続けられなくなることも珍しくありません。
初心者が暗号資産の値動きに慣れていない状態でレバレッジ取引をおこなうと、リスクを正確に把握しにくくなります。まずは、レバレッジ取引が利益だけでなく損失も拡大させる仕組みであることを理解する必要があります。
価格上昇時の勧誘や詐欺に注意が必要になる
暗号資産の価格が大きく上がっている場面では、投資勧誘や詐欺にも注意が必要です。暗号資産に関連して「必ずもうかる」「元本保証」「限定情報」などを謳い、資産を狙う悪徳業者は珍しくありません。事実、消費者庁や金融庁なども、暗号資産に関する投資トラブルについて注意喚起をおこなっています。
特に、SNSやマッチングアプリで知り合った相手から投資を勧められるケースでは、慎重な判断が必要です。相手が親切そうに見えても、暗号資産の購入や送金を急がせる場合は、詐欺の可能性を疑うべきです。
ボラティリティが高い市場では、価格上昇そのものが勧誘の材料に使われることがあります。値上がりしているという事実だけで信用せず、取引先やサービスの登録状況、勧誘内容の不自然さを確認することが重要です。
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ボラティリティの高い暗号資産と向き合うための考え方

暗号資産のボラティリティを完全になくすことはできません。価格の振れ幅が大きいことは、暗号資産市場の特徴の一つだからです。
そのため、重要なのはボラティリティを避けようとすることではなく、価格が大きく動く可能性を前提に行動することです。どのような資金で取引するのか、どのような場面で売買するのか、相場急変時にどう対応するのかを事前に考えておく必要があります。
ここでは、ボラティリティの高い暗号資産と向き合うための考え方を説明します。
生活に支障のない余剰資金で取引する
暗号資産を取引する場合は、生活に支障のない余剰資金でおこなうことが重要です。余剰資金とは、生活費や近い将来使う予定のある資金を除いた、当面使う予定のない資金を指します。
暗号資産は短期間で価格が大きく下がることがあります。そのため、生活費や住宅費、教育費、税金の支払いに使う予定の資金を暗号資産に回すと、急落時に生活へ直接影響が出る可能性があります。
また、生活に必要な資金で取引していると、価格が下がったときに冷静な判断が難しくなります。本来であれば落ち着いて状況を確認すべき場面でも、損失への不安から慌てて売却してしまうことがあります。
暗号資産のボラティリティを考えるうえで、最初に確認すべきなのは「どの銘柄を買うか」ではなく、「価格が大きく下がっても生活に影響しない資金かどうか」です。
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購入時期や金額を一度に集中させない
暗号資産を購入する場合は、購入時期や金額を一度に集中させない考え方があります。価格が大きく動く資産では、購入するタイミングによって、その後の損益が大きく変わるためです。
例えば、価格が急上昇している場面で一度に大きな金額を購入すると、その後に価格が下がったときの損失も大きくなります。一方で、購入時期を分けることで、特定の価格でまとめて購入するリスクを抑えやすくなります。
これは、投資信託の積立投資にも近い考え方です。ただし、暗号資産では銘柄ごとのリスクや市場環境が大きく異なるため、購入時期を分ければ必ず安全になるわけではありません。
重要なのは、価格が上がっているからといって一度に大きな金額を投じないことです。ボラティリティが高い市場では、買うタイミングを分けることもリスク管理の一つになります。
短期の値動きだけで売買を判断しない
暗号資産では、短期の値動きだけで売買を判断しないことが重要です。数時間や数日の価格変動だけを見て判断すると、感情的な取引につながりやすいためです。
例えば、価格が急上昇している場面では、さらに上がると考えて購入したくなることがあります。しかし、その上昇が一時的な期待やニュースによるものだった場合、その後に価格が下がる可能性もあります。
反対に、価格が急落している場面では、損失を避けるためにすぐ売却したくなることがあります。しかし、下落の理由や市場全体の状況を確認しないまま売却すると、後から判断を誤ったと感じる可能性もあります。
暗号資産の価格を見るときは、短期的な上下だけでなく、なぜ価格が動いているのかを確認することが大切です。ニュース、取引量、市場全体の動き、保有している銘柄の状況を合わせて見る必要があります。
価格が大きく動いたときほど焦って操作しない
暗号資産の価格が大きく動いたときほど、焦って操作しないことが重要です。急騰や急落の場面では、早く売買しなければならないと感じやすく、確認不足のまま操作を進めてしまう可能性があるためです。
例えば、価格が急落しているときに慌てて売却しようとすると、注文内容や数量を間違えることがあります。また、別の取引所やウォレットに送金しようとして、送金先アドレスやネットワークの確認を怠ると、資産を失う原因になる場合があります。
暗号資産の送金は、銀行振込のように簡単に取り消せるものではありません。送金先アドレスを間違えたり、対応していないネットワークを選択したりすると、資産を取り戻すことが難しくなる可能性があります。
価格が大きく動いている場面では、相場だけでなく自分の操作も不安定になりやすい状態です。売買や送金をおこなう場合は、金額、通貨、送金先、ネットワーク、手数料などを落ち着いて確認する必要があります。
長期保有する場合でも価格変動リスクを理解しておく
暗号資産を長期保有する場合でも、価格変動リスクを理解しておく必要があります。長期保有は短期の値動きに振り回されにくい考え方ですが、価格が大きく下がるリスクがなくなるわけではありません。
株式や投資信託では、長期保有によって短期的な価格変動の影響をならす考え方があります。しかし、暗号資産では銘柄ごとの性質や継続性に差があり、長く持てば必ず報われるとはいえません。
特に、知名度の低い暗号資産や実態の分かりにくいプロジェクトでは、価格が大きく下がったまま戻らない可能性もあります。長期保有を考える場合でも、その銘柄の仕組みやリスクを理解しておくことが重要です。
長期保有は、ボラティリティへの対処法の一つになり得ます。しかし、それは価格変動を受け入れられる資金で保有し、銘柄の内容を理解している場合に限られます。単に「長く持てば安全」と考えるのは避けるべきです。
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まとめ
暗号資産のボラティリティとは、価格の振れ幅の大きさを表す言葉です。暗号資産は短期間で価格が大きく上下することがあり、ボラティリティの高さは投資判断において重要な要素になります。
暗号資産の価格は、市場参加者の心理、規制や政策に関するニュース、取引量や流動性、レバレッジ取引などの影響を受けて大きく動くことがあります。そのため、価格が上がっている場面だけを見て判断するのではなく、下落時のリスクも含めて理解することが重要です。
特に初心者の場合は、生活に支障のない余剰資金で取引し、購入時期や金額を一度に集中させないことが大切です。また、急な価格変動が起きたときほど、売買や送金を焦って進めず、内容を落ち着いて確認する必要があります。
暗号資産は値動きの大きい資産です。ボラティリティを正しく理解し、自分が許容できるリスクの範囲内で判断することが、暗号資産と向き合ううえで重要になります。

