2026年6月16日、Y Combinatorの2026年春バッチのデモデイが終わった。196社のスタートアップが投資家の前でピッチを終えた。しかしこのデモデイで最大のニュースは、どの企業でもなかった。YCはS26バッチの全スタートアップに、50万米ドルをUSDCで受け取るオプションを導入した。
2012年にYCがCoinbaseに投資したとき、ビットコインの価格は5〜13米ドルだった。その後14年間、YCは100社近くの暗号資産スタートアップに投資してきたが、投資金は常に伝統的な銀行振込で渡されてきた。その14年間が、今年変わった。なぜ今なのか。そして、この変化は日本の投資家と起業家に何を意味するのか。
規制という「地盤」の話
鍵は規制だ。このオプションを主導した、YCのクリプト(暗号通貨)担当のVisitingパートナーNemil Dalal氏は、元Coinbaseエグゼクティブだ。彼はこの決定が起業家からの強い「需要」によって動かされたものだと強調した。しかし需要は以前からあった。それが実現できなかったのは規制の不確実性という障壁があったからだ。
この動きは、YCが「規制の転換点」と呼ぶ状況、すなわちアメリカのGENIUS法の成立に伴い、ステーブルコインが制度的な枠組みを得たことと一致している。GENIUS法が成立したのは2025年7月。わずか7ヶ月後にYCはステーブルコインの支払いオプションを発表した。テクノロジーが変わったのではない。法的な地盤が固まったのだ。
その布石は1年前から打たれていた。2025年9月、YCはCoinbaseおよびBase Venturesとのパートナーシップのもと「Fintech 3.0」構想を発表した。コードで構築された金融システム、即時決済、セルフカストディウォレット、24時間グローバルで稼働する金融サービスへのシフトを宣言した。S26バッチの...
