イーサリアム(ETH)は、ステーキングによって報酬を受け取れる代表的な暗号資産のひとつです。ETHを保有している場合、売買による値上がり益を狙うだけでなく、ステーキングを通じて追加のETHを受け取れる可能性があります。

ステーキングへの関心は高く、暗号資産の投資家309人を対象にしたアンケート調査では、8割以上がステーキングやレンディングを利用した経験があることが分かりました。

「ETHを預けるだけで報酬がもらえるならお得そう」と感じる人も多いでしょう。実際に、保有しているETHから追加で報酬を受け取れる可能性があるため、長期保有を考えている人から注目されているのは事実です。

しかし、ステーキングには知っておきたい注意点もあります。報酬を受け取れてもETH価格が下落すれば損失になる可能性がありますし、サービスによってはすぐに売却や出金ができない場合もあります。また、受け取った報酬には税金が発生する可能性があり、内容を理解しないまま利用すると、あとで困ってしまうかもしれません。

そこでこの記事では、イーサリアムをステーキングする主な方法や、メリット・デメリット、報酬の考え方、税金について、初心者にもわかりやすく解説します。まずは基本を理解し、自分に合った方法かどうかを判断していきましょう。

イーサリアムをステーキングする主な方法

イーサリアムをステーキングする方法は、大きく分けて3つあります。国内の暗号資産交換業者を利用する方法、ステーキングプールを利用する方法、自分でバリデーターを運用する方法です。

先に結論だけ申し上げておきますと、初心者が検討しやすいのは「国内の暗号資産交換業者が提供するステーキングサービス」の利用です。まずはそれぞれの特徴や違いを理解するために、以下で3つの方法を順番に見ていきましょう。

国内交換業者のサービスは初心者でも始めやすい

国内の暗号資産交換業者が提供するステーキングサービスは、初心者でも始めやすい方法です。一般的には、取引所でETHを購入し、対象となるステーキングサービスに申し込むことで利用できます。サービスによっては、口座内で対象銘柄を保有しているだけで自動的にステーキング対象となる場合もあります。

実際に国内では、複数の大手暗号資産交換業者がステーキングサービスを提供しています。例えば、以下のような事業者が代表例です。

サービス内容は各社で異なります。対応している暗号資産の種類、報酬率の考え方、報酬の付与タイミング、最低保有数量、途中売却の可否などは必ず確認しましょう。

ステーキングは、預けておけば必ず利益が出るわけではありません。報酬を受け取れる可能性はありますが、ETH価格が下落すれば日本円換算の資産価値は減少することがあります。さらに、交換業者によってはステーキング報酬から手数料が差し引かれる場合もあります。

そのため、利用する前には公式サイトや取引説明書を確認し、対象銘柄、報酬の計算方法、手数料、出金条件、サービス停止時の取り扱いなどを理解したうえで利用することが大切です。特に報酬率だけで比較するのではなく、「いつでも売却できるか」「報酬はどのくらいの頻度で付与されるか」といった実際の使いやすさも含めて検討するとよいでしょう。

ステーキングプールは少額で始めやすい一方で管理の難易度が上がる

ステーキングプールとは、複数の利用者がETHを出し合い、まとまった数量でステーキングに参加する方法です。後述します「自分でバリデーターを運用する方法」の場合、原則として32ETHが必要です。しかし、ステーキングプールを利用すれば、それより少ない数量のETHでもステーキングに参加しやすくなります。そのため、まとまった資金を用意するのが難しくても検討しやすい方法といえます。

一方で、ステーキングプールは、国内交換業者のサービスよりも管理の難易度が上がる場合があります。海外サービスや自己管理型ウォレットを利用するケースもあり、サービスの仕組み、手数料、出金方法、対応ネットワークなどを自分で確認しなければなりません。

また、サービスによっては、預けたETHと引き換えに別のトークンが発行される仕組みを採用している場合もあり、その仕組みを理解せずに利用すると想定外のリスクを負う可能性があります。

さらに、ステーキングプールごとに運営主体や手数料体系、報酬の分配方法が異なります。報酬率だけで比較するのではなく、運営実績や利用条件、出金のしやすさなども確認することが重要です。少額から参加しやすい一方で、サービス内容を十分に理解したうえで利用する必要があります。

自分でバリデーターを運用する方法は上級者向け

自分でバリデーターを運用する方法は、イーサリアムのステーキングに直接参加する方法です。バリデーターとは、イーサリアムのネットワーク上で取引の検証やブロック生成に関わる参加者を指します。

この方法では、原則として32ETHを用意し、専用のソフトウェアや安定した通信環境を管理する必要があります。単にETHを預けるだけではなく、自分で運用環境を整え、継続的に管理する必要があるため、初心者向けとはいえません(参照:ethereum.org)。

また、自分で運用する場合は、設定ミスや運用不備によって報酬が減る可能性があります。場合によっては、スラッシングと呼ばれるペナルティを受けることもあるため、暗号資産の初心者が検討する方法としては、国内交換業者のステーキングサービスなど、管理負担の少ない方法の方が現実的です。

イーサリアムをステーキングする前に知っておきたい注意点

預けることで報酬が得られるステーキングは一見するメリットしかないように思うかも知れませんが、事前に理解しておきたいリスクや注意点もあります。

例えば、ステーキング中は資産を自由に売却できない場合があるほか、ETHの価格変動によって資産価値が下落する可能性もあります。また、利用するサービスによって手数料や運用条件が異なるため、内容を十分に確認することが重要です。

ここでは、イーサリアムのステーキングを始める前に知っておきたい主な注意点について解説します。

ETHの価値が下がると損失になる可能性がある

ステーキングの報酬によってETHの数量が増えたとしても、ETHの価値が下がっていれば日本円換算では損失になる可能性があります。

例えば、1ETH=50万円のときに10ETH(500万円相当)をステーキングしたとします。1年間で5%の報酬を受け取り、保有数量が10.5ETHになったとしても、その時点でETH価格が1ETH=40万円まで下落していた場合、資産評価額は約420万円です。ETHの数量は増えているものの、日本円換算では元本の500万円を下回る結果になります。

反対に、ステーキング期間中にETH価格が上昇すれば、報酬による数量増加と価格上昇の両方の恩恵を受けられます。このように、最終的な損益はステーキング報酬だけでなく、ETH価格の動向にも大きく左右されます。

暗号資産は、株式や投資信託と比べても価格変動が大きくなる場合があります。実際に、短期間で価格が大きく上昇することもあれば、大幅に下落することもあるため、利回りだけを見るのではなく、「価格が大きく下落しても保有を続けられるか」という視点でリスクを考えることが重要です。

また、ステーキングは預金のように元本が保証される仕組みではありません。報酬を得られる可能性がある一方で、価格変動によって損失が発生する可能性もあるため、余裕資金の範囲で利用することが大切です。

売却や出金がすぐにできない場合がある

ステーキングでは、預けたETHをいつでも自由に売却・出金できるとは限りません。サービスによって仕組みは異なるものの、一定期間資産がロックされる場合や、ステーキング解除の申請から出金できるまで待機期間が設けられている場合があります。

このような制限があるため、急に資金が必要になった場合や、相場の変動を受けて売却したいと考えた場合でも、必要なタイミングで資産を動かせない可能性があります。

暗号資産は価格変動が大きいため、資産の流動性が制限されることはリスクの一つです。出金や売却までに時間がかかる間に価格が下落すれば、想定より不利な価格で売却せざるを得ない可能性があります。また、価格が上昇している局面でも、利益確定のタイミングを逃すことがあります。

そのため、ステーキングを始める前には、途中解約の可否、アンステーキング後の待機期間、出金制限の有無、最低預入期間の有無などを事前に確認し、自身の運用方針に合ったサービスを選ぶようにしましょう。

手数料や条件を見落とす可能性がある

ステーキングサービスを選ぶ際は、表示されている報酬率だけで判断しないことが重要です。なぜなら、実際に受け取れる報酬額は、各サービスが定める手数料や適用条件によって変わるためです。

まず確認したいのが、手数料です。交換業者やステーキングサービスのなかには、利用者が受け取るステーキング報酬から一定割合の手数料を差し引く仕組みを採用している場合があります。そのため、同じような年率が表示されていても、手数料の有無や料率によって最終的な受取額に差が生じることがあります。

また、報酬が適用される条件も確認が必要です。サービスによっては、一定数量以上のETHを保有していることが参加条件となっていたり、対象期間中のみ報酬が発生したりする場合があります。報酬の計算開始日や付与日があらかじめ決められているケースもあり、預け入れた直後から報酬が発生するとは限りません。

このように、ステーキングサービスを比較する際は、「年率が高いかどうか」だけを見るのではなく、手数料や報酬の適用条件などを総合的に確認する必要があります。実際に受け取れる報酬額や利用条件まで含めて比較することで、あなたに合ったサービスを選びやすくなるでしょう。

サービス停止や条件変更のリスクがある

暗号資産取引所のステーキングサービスを利用する場合、サービス提供事業者に依存するリスクがあることを理解しておかなければいけません。

例えば、ステーキング報酬に関する条件について。報酬率や手数料、対象銘柄などは、ネットワーク環境や事業者の方針変更によって見直される場合があります。そのため、現在の利率が将来も継続するとは限らず、期待した収益を得られない可能性があります。

また、交換業者のステーキングサービスでは、預けたETHを事業者が管理するため、システム障害やメンテナンスによって一時的にサービスを利用できなくなる可能性があります。

そのため、ステーキングを利用する際は、価格変動のリスクやサービスごとの利用条件もあわせて確認しましょう。

イーサリアムのステーキング報酬はどのくらい?

イーサリアムのステーキング報酬は、固定された利回りではありません。ネットワークの状況、ステーキング参加者の数、利用するサービス、手数料などによって変動します。そのため「イーサリアムのステーキング報酬は年率○%です」と断定することはできません。

目安として、国内交換業者が公表しているETHのステーキング報酬を見ると、手数料差引後で年率2%前後となっている例があります。例えばGMOコインは、2026年5月11日付のお知らせで、ETHの報酬年率を2.61%、手数料差引後を2.00%と公表しています(参照:GMOコイン)。

また、bitFlyerは、2026年5月の実績値として、同社がイーサリアムネットワークから受け取ったステーキング報酬の年利率を2.55%、利用者が受け取る年利率を1.79%と公表しています。

当社がイーサリアムネットワークから受け取ったステーキング報酬の年利率:2.55%
お客様が受取るステーキング報酬の年利率:1.79%

参照:ステーキング|bitFlyer

ただし、これらは各社が公表した一定期間の実績値であり、将来の報酬率を保証するものではありません。ステーキングを検討する際は、利用予定の暗号資産交換業者やステーキングサービスの公式サイトで、最新の報酬条件を確認することが重要です。

ステーキング報酬は税金が発生することがある

イーサリアムのステーキング報酬には、税金が発生する可能性があります。ETHで報酬を受け取った場合でも、税務上は「暗号資産を取得した」と扱われる場合があるためです。

国税庁は、マイニング、ステーキング、レンディングなどによって暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生じる利益は所得税または法人税の課税対象になると説明しています。つまり、報酬を日本円に換金していなくても、報酬を受け取った時点で課税関係が生じる可能性があります。

マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。

参照:暗号資産等に関する税務上の取扱いについて|国税庁

一方で、暗号資産の税金については、正しく申告できていない人も少なくありません。弊社が実施したアンケート調査では、暗号資産で利益が出た年は申告している人が22.9%にとどまる一方、「申告対象だと認識した後も申告していない」と回答した人は21.7%、申告しなければいけないことを知らなかったり判断できない人は合計17.4%も居ました。

個人がステーキング報酬を受け取った場合、通常は雑所得として扱われます。ただし、所得区分や申告の要否は、他の所得状況や取引規模、帳簿の有無などによって判断が変わる場合があります。判断に迷う場合は、税務署や税理士などの専門家に確認することが大切です(関連:暗号資産のステーキングにおける確定申告の考え方を解説)。

報酬を受け取った時点の時価を記録しておく

ステーキング報酬を受け取った場合、報酬を受け取った日付、ETHの数量、その時点の日本円換算額を確認できるようにしておくことが重要です。税務上、ステーキング報酬は受け取った時点の時価をもとに所得を計算する場合があるためです。

例えば、ETHで報酬を受け取った場合でも、税金の計算では「何ETHを受け取ったか」だけでなく、「受け取った時点で日本円に換算するといくらだったか」が必要になります。あとから売却した時点の価格だけを見ても、報酬取得時の所得を正しく把握できない場合がありますので、取得した時点で確認することが大切です。

交換業者を利用している場合は、取引履歴や年間取引報告書で報酬の付与状況を確認できることがあります。ただし、必要な情報がすべて分かりやすく整理されているとは限りません。申告時に困らないよう、報酬が付与されたタイミングで記録を残しておくとよいでしょう。

売却時の損益計算にも影響する可能性がある

ステーキング報酬として受け取ったETHは、その後に売却する際の損益計算にも関係します。報酬を受け取った時点の時価が、そのETHの取得価額として扱われる場合があるからです。

例えば、ステーキング報酬として0.1ETHを受け取り、その時点の時価が5万円だったとします。その後にETH価格が上昇し、同じ0.1ETHを7万円で売却した場合、取得価額は5万円で売却価額は7万円となるため、差額の2万円が利益として計算されます。

このように、ステーキング報酬は受け取った時点だけでなく、あとから売却したときの計算にも影響する可能性があります。そのため、報酬を受け取った日付、数量、時価を記録しておくことで、売却時の損益を確認しやすくなります。

暗号資産の税務処理は、取引内容や保有状況によって判断が変わる場合があります。判断に迷う場合は、税理士や税務署などの専門家にご相談ください。

おわりに

イーサリアムのステーキングは、ETHを長期保有する人にとって、保有数量を増やせる可能性がある方法です。特に国内交換業者のステーキングサービスを利用すれば、自分でバリデーターを運用する必要がないため、初心者でも始めやすいのが特徴です。

一方で、ステーキングは元本保証のある運用ではありませんので、ETH価格の下落、出金制限、手数料、サービス停止や条件変更などのリスクが伴いますし、報酬が発生しても日本円換算で利益が出るとは限りません。

また、ステーキング報酬には税金が発生する可能性があります。報酬を受け取った日付、数量、時価を記録し、売却時の損益計算にも備えておくことが重要です。

イーサリアムのステーキングを検討する場合は、報酬率だけで判断せず、利用するサービスの条件やリスクを確認したうえで、自分の保有方針に合っているかを考えるようにしましょう。