「ハードウェアウォレットを買おう」と思い立つきっかけは、人それぞれ異なります。
資産が増えてから慌てて検討する人もいれば、ニュースで他者の被害を見て即座に行動する人もいます。

暗号資産経験者を対象としたアンケート調査の結果、ハードウェアウォレット(HW)の所有率は55.9%に達しました。
HW所有者417人を対象に購入の決め手を尋ねたところ、最多回答は「セキュリティが不安だった」の38.1%となり、漠然とした不安感が購入行動を最も強く後押ししている実態が浮き彫りになっています。

さらに保有額・年代・投資スタイル別のクロス分析を行うと、「誰がHWを持っていて、誰が持っていないのか」という構造が鮮明に見えてきました。
特に注目すべきは、20代以下の所有率が78.5%と全世代でトップである一方、50代では35.0%まで落ち込む世代間格差です。

本記事では、HWウォレット購入のリアルな動機と、所有層・非所有層の境界線を生データから読み解きます。
あなた自身がHWを買うべき投資家かどうか、判断する軸として活用してください。

HW購入実態──所有者の38.1%が「セキュリティ不安」で購入

購入の決め手

回答数

割合

セキュリティが不安だった

159人

38.1%

勉強して必要だと思った

146人

35.0%

ハッキング被害のニュースを見た

140人

33.6%

周りの人に勧められた

120人

28.8%

大きな金額を保有するようになった

108人

25.9%

「セキュリティが不安だった」38.1%──漠然とした不安が最大の動機

ハードウェアウォレットを購入した投資家417人に決め手を尋ねたところ、最多となったのは「セキュリティが不安だった」の38.1%でした。
具体的な被害体験ではなく、「漠然とした不安感」が購入行動を最も強く後押ししているという事実は、暗号資産投資家の心理を象徴的に表しています。

取引所に資産を預けたままで本当に大丈夫なのか、ハッキングや破綻のリスクは自分にも降りかかるのではないかといった不安は、市場に参加する以上、誰もが一度は抱くものです。
こうした不安を解消するための最終的な選択肢として、ハードウェアウォレットが選ばれている構図がデータから読み取れます。

「不安だから買う」というシンプルな動機こそ、実は最も健全な購入理由だといえるでしょう。
被害に遭ってから慌てるのではなく、リスクを未然に察知して行動する投資家は、長期的に資産を守り抜く可能性が高いのです。

「勉強して必要だと思った」35.0%──知識駆動型の購入層

購入動機の第2位となったのは、「勉強して必要だと思った」の35.0%でした。
書籍やオンライン記事、コミュニティでの情報収集を通じて、ハードウェアウォレットの必要性を自ら理解した上で購入に至った層が、HW所有者の3人に1人を占めています。

この層は、不安や流行に流されるのではなく、技術的な裏付けを持って意思決定しているのが特徴です。
公開鍵と秘密鍵の管理原則や、コールドウォレットとホットウォレットの違いを理解した上で、自分にとって必要なツールを能動的に選んでいます。

暗号資産投資においては、こうした「知識駆動型」のアプローチが最も再現性の高い防衛策となります。
情報を浴びるだけで終わらせず、自らの環境に落とし込んで実行できる投資家こそ、市場で長く生き残る素質を備えているといえるでしょう。

「ハッキング被害のニュース」33.6%──他者の被害を契機とする購入

第3位の「ハッキング被害のニュースを見た」33.6%は、業界全体の出来事が個人の投資行動に直接影響を与える現実を示しています。
取引所の流出事件や著名インフルエンサーのウォレット乗っ取りといったニュースは、投資家にとって対岸の火事ではなく、自分事として受け止められているのです。

「周りの人に勧められた」28.8%、「大きな金額を保有するようになった」25.9%という回答も上位に並びました。
人的なネットワークや、保有資産の増加といった具体的なライフイベントが、HW導入の引き金になっているケースも一定数存在します。

被害ニュースに触れた瞬間に行動できるかどうかが、その後の資産防衛力を大きく分ける分岐点です。
「いつか買おう」と先延ばしにする投資家と、ニュースを見た直後に注文する投資家とでは、同じ市場にいても抱えるリスクが根本的に異なってきます。

保有額50万円が分水嶺──1万円未満層21.3% vs 50万円以上74.5%

保有額

n数

HW所有率

1万円未満

155人

21.3%

1万〜10万円未満

203人

55.2%

10万〜50万円未満

152人

66.4%

50万〜100万円未満

137人

74.5%

100万〜500万円未満

74人

70.3%

1万円未満層の所有率21.3%──少額投資家の防御薄弱

保有資産額別にHW所有率を見ると、1万円未満の層では21.3%と、他の保有額帯と比較して圧倒的に低い数値となりました。
5人に1人しかハードウェアウォレットを持っていない計算であり、少額投資家層の防御体制が極めて手薄であることが浮き彫りになっています。

「少額だから盗まれても痛くない」や「HWを買うと逆に資産より高くつく」といった経済合理性が、購入見送りの背景にあると考えられます。
たしかに数千円規模の資産に対して数万円のデバイスを購入することは、コスト面で見合わないと判断する投資家がいても不思議ではありません。

しかし、ここで見落とされがちなのは「将来資産が増えたときにすでに防御体制が整っているか」という観点です。
資産が10倍、100倍に成長してから慌ててHWを購入するのではなく、少額のうちから運用に組み込んでおく姿勢こそ、長期的な投資家として正しい歩み方といえるでしょう。

50万〜100万円層で74.5%にピーク──「守る価値がある金額」の心理的閾値

HW所有率がピークに達するのは、保有額50万〜100万円未満の層で、74.5%という高水準を記録しました。
保有額1万円未満層の3.5倍にあたる数値であり、「守る価値がある金額」が投資家の心理的閾値として機能している様子が読み取れます。

50万円という金額は、多くの個人投資家にとって「失えば生活に影響が出る」境界線であり、この水準を超えるとセキュリティ意識が一気に高まる傾向があります。
取引所の不正アクセスや出金停止といったリスクを真剣に検討し始めるラインとも一致しているといえるでしょう。

興味深いのは、保有額が100万円を超えると所有率がやや低下する点です(100万〜500万円層で70.3%)。
この層では、複数のHWを使い分けるか、あるいは分散管理によってリスクヘッジを図っているケースも考えられ、単純な「持っているか否か」では測れない管理戦略が存在している可能性があります。

20代以下の78.5%が所有──意外な世代差の正体

年代

n数

HW所有率

20代以下

163人

78.5%

30代

207人

60.4%

40代

187人

49.7%

50代

120人

35.0%

60代以上

69人

42.0%

20代以下が78.5%でトップ──デジタルネイティブ世代の積極性

年代別のクロス集計を行うと、20代以下のHW所有率が78.5%と全世代で最高となりました。
4人に3人以上が物理的なセキュリティデバイスを所有している計算であり、若年層ほどハードウェアウォレットへの心理的障壁が低いという、一般的なイメージとは異なる構図が浮かび上がっています。

SNSやYouTubeで暗号資産関連の情報に日常的に触れている世代だからこそ、ハードウェアウォレットの存在や使い方が自然と認識されているのでしょう。
最新のセキュリティトレンドをキャッチアップする情報感度の高さが、HW導入を後押ししている要因と考えられます。

加えて、若年層は「設定が複雑そう」という心理的ハードルを感じにくい傾向があります。
スマートフォンや各種アプリの初期設定に慣れているため、HWの初期セットアップも「やればわかる」感覚で取り組めることが、所有率の高さに直結しているといえるでしょう。

50代の所有率35.0%──中高年層の慎重さの裏返し

対照的に、50代のHW所有率は35.0%と全世代でワーストの数値となりました。
20代以下と比較すると倍以上の差があり、世代間でHWに対するアプローチが根本的に異なっている実態が見て取れます。

50代といえば、退職金や老後資金の運用先として暗号資産に関心を寄せる層が増えている年代です。
にもかかわらず、ハードウェアウォレットという物理的な防御策が浸透していない現状は、業界全体で取り組むべき課題といえるでしょう。

背景には、HWのセットアップ手順や英語ベースのインターフェースに対する抵抗感があると推測されます。
「失敗して資産にアクセスできなくなったらどうしよう」という慎重さが、逆説的に防御策の導入を遅らせている可能性も否定できません。

60代以上が42.0%と50代より高い所有率を示していることからも、必ずしも年齢だけでは説明できない、世代ごとの情報接触経路の違いが影響していると考えられます。

投資スタイルが分けるHW所有──「両方派」71.3% vs 「ガチホ派」46.9%

投資スタイル

n数

HW所有率

両方(短期+長期)

178人

71.3%

短期トレード

210人

61.4%

運用メイン(ステーキング等)

78人

59.0%

ガチホ(長期保有)

226人

46.9%

「両方派」71.3%が最高──多軸運用ほどHWを必要とする

投資スタイル別に見ると、短期トレードと長期保有を併用する「両方派」のHW所有率が71.3%と最も高くなりました。
複数の運用スタイルを使い分ける投資家ほど、保有銘柄数や取引所アカウント数が増える傾向にあり、それに比例してセキュリティリスクも拡大します。

両方派は、短期売買に使う資金と長期保有に回す資金を物理的に分離する必要があるため、コールドウォレットとホットウォレットの併用が前提となります。
ハードウェアウォレットは、こうした複線的な運用を前提とした投資家にとって必須のインフラであり、所有率の高さは合理的な結果といえるでしょう。

短期トレード派の61.4%、運用メイン派の59.0%も、それぞれ運用の活発さに比例した防御体制を整えている層が多いことを示唆しています。

ガチホ派の46.9%が意外な低水準──戦略と実装のギャップ

驚きの結果となったのが、長期保有を主軸とする「ガチホ派」のHW所有率が46.9%にとどまった点です。
長期保有とは本来、頻繁な売買を行わずに資産を長期間ホールドする戦略であり、論理的にはコールドウォレットでの保管が最も適しているはずです。

それにもかかわらず半数以上のガチホ派がHWを所有していないというのは、戦略と実装の間に大きなギャップがあることを示しています。
取引所のウォレットに資産を預けたまま「長期保有している」と認識している層が一定数存在しており、これは流動性リスクや取引所破綻リスクを軽視した運用といわざるを得ません。

本気で長期保有を考えているのであれば、ハードウェアウォレットへの資産移管は避けて通れない選択です。
自らの投資スタイルと管理体制を一致させる意識改革が求められます。

経験年数で安定する所有率──1年未満37.3%が新規参入時の壁

投資経験年数

n数

HW所有率

1年未満

142人

37.3%

1〜2年未満

214人

59.8%

2〜3年未満

195人

60.0%

3〜5年未満

116人

60.3%

5年以上

79人

62.0%

投資経験年数別にHW所有率を見ると、1年未満の新規参入層では37.3%にとどまる一方、1年以上のすべての経験年数帯で約60%前後の水準で安定しています。 1年を経過するタイミングで、HW導入が一段階進む構造が読み取れます。

新規参入直後の1年間は、まず取引そのものに慣れることが優先され、セキュリティ設定までは手が回らないのが実情でしょう。

しかし、この「最初の1年」こそが詐欺被害や紛失トラブルが集中する時期でもあり、本来であれば最も防御を固めるべきフェーズだといえます。
5年以上のベテラン層が62.0%と最高水準にあることからも、経験を積むほどHWの必要性を実感する構造が浮き彫りになっています。

新規参入者が真似るべきは、ベテラン投資家の行動原理です。
取引に慣れる前にハードウェアウォレットを導入しておくことが、長期的に資産を守り抜く最短ルートとなります。

まとめ

本調査を通じて、ハードウェアウォレット購入の決め手は「セキュリティが不安だった」という回答が38.1%で最多となりました。
漠然とした不安感こそが、最も健全な購入動機となっている実態が明らかになっています。

保有額50万円が一つの分水嶺となり、1万円未満層(21.3%)と50万〜100万円層(74.5%)の間には、3倍以上の所有率格差が存在します。
年代別では20代以下が78.5%でトップ、50代が35.0%でワーストとなり、保守的な世代ほど慎重とは限らない構造が見えてきました。

投資スタイル別では、短期と長期を併用する「両方派」が71.3%で最高水準を記録しています。
一方で、本来HWが最も必要なはずの「ガチホ派」が46.9%にとどまる矛盾も浮き彫りになりました。

経験年数別では1年未満層が37.3%と最も低く、新規参入時の防御体制構築が遅れている実態も明らかです。
ハードウェアウォレットを「買うべき人」の判定軸は明確です。

保有額が50万円を超える投資家、短期と長期を併用する両方派、セキュリティニュースに敏感な層、そして「面倒」を言い訳にしない投資姿勢を持つ人にとって、HWはもはや選択肢ではなく必須のインフラです。

「いつか買おう」と先延ばしにする時間が、最大のリスクを生み出します。

調査概要

調査実施日:2026年4月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:国内在住の男女(暗号資産に投資している人、投資したことのある人)
有効回答数:746名
実施機関:株式会社Clabo

調査設問項目

  • 暗号資産(仮想通貨)の投資経験はありますか?
  • 暗号資産への投資経験年数はどのくらいですか?
  • 保有している暗号資産の総額はどのくらいですか?
  • あなたの投資スタイルはどれですか?
  • ハードウェアウォレットを持っていますか?
  • ハードウェアウォレットを購入した決め手は何ですか?