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少し極端な話から始めよう。あなたが2017年に100万円でビットコインを買い、亡くなったとする。相続人がそのビットコインを相続し、現在価値の1,000万円で売却した場合、何が起きるか。
まず相続税がかかる。次に、相続した時点の評価額と売却額の差額に対して所得税がかかる。この所得税は「雑所得」として他の収入と合算されるため、高額所得者の場合、所得税と住民税を合わせた最高税率の約55%が適用される。相続税率と所得税・住民税率を合計して100%を超えるケースが生じ得ることが指摘されていた。
「相続した暗号資産を売ると、手元に何も残らない」どころか「持ち出しになる」可能性があった。これは法律の抜け穴ではなく、現行制度の設計上の問題だ。
この問題は10年近く放置されてきた。なぜ2025年12月、突然動いたのか。
日本政府はなぜ今、折れたのか
2025年12月19日、与党税制改正大綱が公表され、暗号資産の申告分離課税化が明記された。メディアの多くは「投資家への朗報」として報じたが、実態は少し違う。
メディアの多くは「投資家への朗報」として報じた。しかし正確には「贈り物」ではなく「撤退」だ。
日本政府が暗号資産課税を長年放置してきた背景には「暗号資産は投機であり、優遇する必要はない」という哲学があった。その哲学を変えたのは理念ではなく、三つの現実だ。
現実①:資本とともに、投資家が出ていった
最高税率55%という重い負担を嫌った高額所得者・経営者層が、シンガポール・ドバイ・ポルトガルといった暗号資産課税が有利な国へ資産移転を加速させた。事業所得や不動産所得、金融所得を幅広く有する富裕層にとっては、暗号資産による利益が他の所得と合算されることで限界税率が引き上げられ、
