暗号資産に関する被害で注意したい手口の一つが『ロマンス詐欺』です。ロマンス詐欺は、SNSやマッチングアプリで知り合った相手と親密な関係を築き、暗号資産の送金や現金の振込へ誘導する詐欺です。最初は日常会話や恋愛の話題から始まり、信頼関係ができた段階で投資話を持ちかけられるケースがあります。

警察庁の資料では、令和7年のSNS型ロマンス詐欺は認知件数5,604件、被害総額552.2億円とされており、暗号資産送信型の被害が急増しています(参照:令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺 の認知・検挙状況等について)。

実際に国内では、SNS型ロマンス詐欺によって暗号資産や現金など約1億3,000万円をだまし取られた事件も報じられています。報道によると、被害者はSNSで知り合った相手とやり取りを続けるうちに好意を抱き、その後、暗号資産の話を持ちかけられ、二十数回にわたって指定された口座などへ送金したとされています(参照:読売新聞オンライン)。

このようなロマンス詐欺の被害に遭わないためには、典型的な手口や危険なサインを知り、不審な点がある時点で送金を止めることが重要です。この記事では、暗号資産のロマンス詐欺でよくある手口、被害を防ぐための注意点、被害に遭ったときの対処法を解説します。

暗号資産のロマンス詐欺とは?実際の事例を基に解説

暗号資産のロマンス詐欺では、SNSやマッチングアプリで知り合った相手から投資を勧められ、最終的に出金できなくなる被害が発生しています。最初は日常会話や恋愛の話題から始まり、信頼関係を築いたあとに暗号資産の投資へ誘導する流れが一般的です。

実際に、国民生活センターの公式サイトには、以下のような相談事例が掲載されています。

マッチングアプリで知り合った自称外国人女性と、無料会話アプリでやり取りしていると、海外の暗号資産(仮想通貨)の取引所で投資をするように勧誘された。勧められたアプリで指示どおり投資したところ利益が出たので、アプリから資金を国内の暗号資産交換業者に送付しようとしたら、アプリの運営事業者から「保証金を支払う必要がある」と連絡があった。さらに「手数料」等の名目で次々に費用を請求されている。一部支払ったが、結局アプリ内の資金を出金できなかった。

参照:国民生活センター

このような手口では、最初に恋愛感情や親近感を持たせながら信頼関係を築き、その後に「自分も利益を出している投資」などとして暗号資産の投資話を持ちかけるケースが多く見られます。

また、投資サイト上では利益が増えているように表示されることがあります。しかし、実際には運営実態が不明なケースもあり、出金しようとすると「保証金・税金・手数料」など、さまざまな名目で追加費用を請求されることがあります。

暗号資産は、一度送金すると取り消しが難しく、被害回復が困難になる場合もあります。そのため、不審な点がある時点で送金や追加支払いを止め、第三者へ相談することが重要です。

暗号資産のロマンス詐欺が疑われる危険なサイン

暗号資産のロマンス詐欺では、特定の流れや共通した行動パターンが見られます。以下のような特徴に当てはまる場合は、ロマンス詐欺の可能性も考える必要があります。

  • SNSやマッチングアプリで接触し、恋愛感情や親近感を持ったやり取りが続く
  • 「もっと話しやすいアプリを使いたい」などと言い、LINEや無料会話アプリへ誘導される
  • 信頼関係ができたあとに「自分も利益を出している」といって投資話を持ちかけてくる
  • 指定された投資サイトやアプリへの登録を求められ、暗号資産の購入や送金を指示される
  • 出金時に保証金や税金、手数料などの追加費用を請求され、支払っても資金を引き出せない

特に注意したいのは、「利益が出ているから大丈夫」「保証金を払えば出金できる」などと言われ、追加の送金を求められるケースです。相手を信用している状態では冷静な判断が難しくなり、被害額が大きくなることがあります。

SNSで知り合った女性から、「今、投資するなら暗号資産がおすすめです」などと持ちかけられ、同人が勧める暗号資産取引アプリをダウンロード。取引をする中で、「保証金が必要です」「この手続きには税金として●%の額がかかります」などと言われ、指定された口座に複数回にわたって振り込んでしまい、合計1億円以上をだまし取られた。

参照:特殊詐欺対策ページ

また、SNSや通話だけで投資や送金の話が進み、運営会社の実態や金融庁への登録状況が確認できない場合も注意が必要です。不審な点がある場合は、その場で送金せず、家族や第三者へ相談するようにしてください。

暗号資産のロマンス詐欺を防ぐための方法

ロマンス詐欺の特徴は、恋愛感情や親近感を利用して信頼関係を構築する点にあります。一度信頼関係ができてしまうと、「怪しい」と感じる場面があっても冷静な判断が難しくなり、相手の指示に従って送金や契約を進めてしまうことがあります。その結果、追加の支払いを繰り返し、被害額が大きくなってしまう可能性もあります。

そのため、暗号資産のロマンス詐欺を防ぐには、「どのようなケースを避けるべきか」を事前に知っておくことが重要です。ここでは、暗号資産のロマンス詐欺を防ぐために意識したい注意点を解説します。

SNSで知り合った人の投資話を信じない

ロマンス詐欺の被害は、SNSやマッチングアプリをきっかけに発生するケースが多く見られます。最初は日常会話や恋愛の話題から始まり、やり取りを続けるなかで親近感や信頼感を持たせ、その後に暗号資産の投資話へ誘導する手口が一般的です。

そのため、SNSで知り合った相手から投資話を持ちかけられても、説明をそのまま鵜呑みにしないことが重要です。特に、一度も直接会っていないにもかかわらず、将来の話や投資の話を繰り返す場合は注意が必要です。相手を信用させることで、送金や契約への心理的なハードルを下げようとしているケースもあります。

さらに、相手自身を信用できると感じても、紹介された投資サイトや送金先まで安全とは限りません。送金を求められた場合は、その場で判断せず、家族や第三者へ相談することが重要です。

送金や契約の話は確認する時間を設ける

ロマンス詐欺では、「今すぐ手続きした方がよい」「早く送金しないと利益を逃す」などと言い、判断を急がせるケースがあります。冷静に考える時間を与えず、その場の勢いで送金や契約を進めさせようとするためです。

SNSや通話だけで説明を受けている段階では、投資サイトの実態や契約内容を十分に確認できていない可能性があります。相手の言うことを信じて手続きを進めた結果、リスクや不自然な点に気づかず資産を失うケースは珍しくありません。

恋愛感情や信頼関係ができている状態では、「この人が言うなら大丈夫だろう」と、つい考えてしまいがちです。こうした状況では、まずはその場で判断せず、「一度確認してから判断します」と伝えて時間を置くことが大切です。

出金のための保証金や手数料を支払わない

暗号資産のロマンス詐欺では、出金しようとした段階で「保証金・税金・手数料」などを請求されるケースがあります。投資サイト上では利益が出ているように見えても、出金手続きに進むと追加費用を求められ、支払っても資金を引き出せないことがあります。

本来、正当な取引所や投資サービスであれば、出金のたびに不自然な追加費用を次々と求められることは考えにくいです。特に、「この費用を払えば出金できる」「支払わないと資金が凍結される」などと言われた場合は、詐欺の可能性を疑う必要があります。

また、出金のために追加費用を支払っても、それで問題が解決するとは限りません。一度支払うと、別の名目でさらに請求され、被害額が大きくなる可能性があります。

そのため、出金のために保証金や手数料を求められた場合は、その場で支払わないことが重要です。すでに支払ってしまった場合でも、追加送金は止め、相手とのやり取りや送金履歴を保存したうえで、消費生活センターや警察などへ相談してください。

暗号資産のロマンス詐欺に遭ったときの対処法

暗号資産のロマンス詐欺に遭った可能性がある場合は、焦って対応を進めないことが重要です。相手から出金や返金に関する説明を受けていると、「今すぐ対応すれば資金を戻せるかもしれない」と考えてしまうことがあります。

しかし、被害が疑われる状況では、相手の説明を前提に動くのではなく、状況を整理しながら対応しなくてはいけません。これは、誤った対応を続けることで、被害がさらに広がる可能性があるためです。

ここでは、暗号資産のロマンス詐欺に遭ったときに取るべき対応を解説します。

追加の送金や支払いを止める

暗号資産のロマンス詐欺が疑われる場合は、まず追加の送金や支払いを止めてください。相手から出金や返金のために費用が必要だと言われても、その支払いによって資金を引き出せるとは限らないためです。

特に注意したいのは、以下のような説明です。

  • 保証金を払えば出金できる
  • 税金を支払えば手続きが進む
  • 手数料を払えば返金できる

これらは資金を取り戻せるように見せかけて、さらに支払いを求める口実として使われます。実例を挙げますと、漫画家のたなかじゅん氏は、このような追加請求を支払い続けてしまい、総額583万円もの被害に遭いました。

そこからその100万円が自分の手で0円になってしまったり、追加した80万を投資グループの代表の手で720万に増えたりというお金の動きを見せられ、さらにはその720万円を引き出すための“代表の技術料”144万円を要求されたという。

参照:毎日新聞

お金を用意すれば次から次へと手数料の要求が続き、ついには「大金を送金するので犯罪を疑われてます。ついては専門の国際弁護士を紹介しますので着手金72万を払ってください」との連絡が。

参照:毎日新聞

「ここまで支払ったのだから取り戻したい」と考えると、追加請求に応じてしまいやすくなります。しかし、そのまま支払いを続けると、資金を回収できないまま被害額だけが大きくなる恐れがあります。

相手から支払いを急かされても、その場で送金してはいけません。まずはやり取りを止め、これ以上の被害を防ぐことを優先してください。

やり取りや送金履歴を保存する

暗号資産のロマンス詐欺が疑われる場合は、相手とのやり取りや送金履歴を削除せずに保存してください。あとから相談する際に、いつ・誰と・どのようなやり取りをし、どこへ送金したのかを確認できる情報が必要になるためです。

保存しておきたい情報には、以下などが挙げられます。

  • メッセージの内容
  • 通話履歴
  • 投資サイトの画面
  • 送金先アドレス
  • 振込明細

暗号資産で送金した場合は「送金日時・送金額・送金先アドレス・取引ID」なども確認できる形で残しておくとよいでしょう。

また、相手に不審感を伝える前に、必要な情報を保存しておくことも重要です。詐欺を疑っていることが相手に伝わると、アカウントや投資サイトが削除され、あとから証拠を確認できなくなる可能性があるからです。

スクリーンショットを撮るだけでなく、送金額や送金先、やり取りの日時が分かるように整理しておくと、相談時に状況を説明しやすくなります。消費生活センターや警察、金融機関へ相談する際にも、残っている情報が多いほど経緯を伝えやすくなります。

金融機関や公的窓口へ相談する

暗号資産のロマンス詐欺が疑われる場合は、自分だけで相手と交渉しようとせず、金融機関や公的窓口へ相談してください。相手に返金を求めても、言い訳をされたり、さらに支払いを求められたりする可能性があるためです。

銀行口座へ振り込んだ場合は、まず振込先の金融機関へ連絡しましょう。振込先の口座状況によっては、金融機関側で確認や対応を進められる可能性があります。暗号資産で送金した場合も、送金に使った取引所やウォレット、送金先アドレス、取引IDなどを整理しておくと、相談時に状況を伝えやすくなります。

相談先としては、警察相談専用窓口や、消費者ホットラインがあります。

警察相談専用窓口

#9110

消費者ホットライン

188

相談するときは、相手とのメッセージ、投資サイトの画面、送金履歴、振込明細などを手元に用意しておきましょう。被害回復をうたう業者から二次被害を受ける可能性もあるため、まずは公的窓口を優先して相談することが重要です。

まとめ

簡単に利益が出る投資話を安易に信用しないことが、暗号資産のロマンス詐欺を防ぐ第一歩です。特に、SNSやマッチングアプリで知り合っただけの相手から投資を勧められた場合は、基本的には信用しない姿勢が重要です。

暗号資産は、一度送金すると取り消しが難しい性質があります。そのため、被害に遭ったあとに資金を取り戻すことが難しいケースも多く、送金する前の確認が非常に重要になります。

被害が疑われる場合は、追加送金を止め、相手とのやり取りや送金履歴を保存してください。そのうえで、自分だけで解決しようとせず、消費生活センターや警察などへ早めに相談することが大切です。

ロマンス詐欺では、恋愛感情や信頼関係によって冷静な判断が難しくなることがあります。「自分は大丈夫」と考えていても、相手の言葉を信じてしまう状況は誰にでも起こり得ます。不審な点がある場合は一人で判断せず、第三者の意見を聞くことが被害拡大を防ぐことにつながります。