暗号資産は経済的価値のある財産であるため、家族間で無償で渡す場合でも、贈与税の確認が必要になることがあります。また、暗号資産を売却して現金で渡すのか、暗号資産のまま送るのかによって、贈与する側の税金の考え方も変わります。

この確認を怠ったまま家族に暗号資産を贈与すると、本来必要だった申告や納税が漏れる可能性があります。後から税務上の問題が判明すれば、本来の税額に加えて、加算税や延滞税などの負担が発生する恐れもあります。

さらに、暗号資産の送金履歴はブロックチェーン上に記録されます。家族間の送金であっても、「見つからなければ問題ない」と考えるのではなく、税金や記録管理を前提に進めることが重要です。

この記事では、暗号資産を家族に贈与するときの税金、主な贈与方法、贈与額の考え方、管理上の注意点を解説します。

暗号資産の家族贈与では贈与税の確認が必要

暗号資産を家族に渡す場合、まず確認すべきなのは、受け取る側の贈与税です。

暗号資産は価格が変動する財産であり、税務上も経済的価値のあるものとして扱われます。そのため、親子や夫婦などの家族間であっても、無償で暗号資産を移せば贈与税の確認が必要になる場合があります。

ここでは、暗号資産が贈与税の対象になる考え方と、年間110万円以内で贈与する場合の注意点を整理します。

暗号資産も贈与税の対象になる可能性がある

暗号資産を家族に贈与した場合、受け取った側に贈与税がかかる可能性があります。贈与税は、個人から財産をもらったときに関係する税金です。国税庁は、暗号資産を相続や贈与により取得した場合について、以下のように述べています。

被相続人等から暗号資産を相続若しくは遺贈又は贈与により取得した場合には、相続税又は贈与税が課税されます。

参照:暗号資産等に関する税務上の取扱いについて|国税庁

暗号資産は、金銭に見積もれる経済的価値のある財産にあたります。つまり、親から子供へ暗号資産を送った場合や、配偶者へ暗号資産を移した場合でも、税務上は贈与として扱われる可能性があります。

特に注意したいのは、暗号資産を日本円に換金せず、そのまま送金した場合です。現金を渡していなくても、経済的価値のある財産を移しているため、贈与税の確認が必要になります。

年間110万円以内でも確認すべき点がある

贈与税には、暦年課税の基礎控除があります。国税庁は、贈与税について「1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額」から、基礎控除額110万円を差し引いた残額に対してかかると説明しています。

そのため、1年間に受け取った贈与財産の合計額が110万円以下であれば、原則として贈与税はかかりません。

贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額から暦年課税に係る基礎控除額110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。したがって、1年間に贈与を受けた財産の価額の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。

参照:贈与税がかかる場合|国税庁

ただし、この110万円は「暗号資産だけ」で判断するものではありません。

例えば、同じ年に親から80万円分の暗号資産を受け取り、さらに現金50万円を受け取った場合、合計額は130万円になります。この場合、暗号資産だけを見ると110万円以下でも、年間の贈与財産の合計では110万円を超えます。

また、毎年110万円以内であれば必ず問題がないとも言い切れません。国税庁は、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合でも、最初から合計1,000万円を受け取る約束がある場合には、定期金に関する権利の贈与として扱われる可能性を示しています。

毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約(約束)をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。

参照:贈与税がかかる場合|国税庁

暗号資産を家族に少しずつ渡す場合でも、毎年の贈与額、贈与の目的、贈与した日付、家族間の合意内容を整理しておくことが大切です。

暗号資産を家族に贈与する主な方法

暗号資産を家族に贈与する方法は、大きく分けると以下の2つ。どちらを選ぶかによって、贈与額の分かりやすさ、税金の確認方法、送金や管理のリスクが変わります。

  • 現金に換えて渡す方法
  • 暗号資産のまま移す方法

現金で渡す場合は、受け取った金額が明確になる一方で、贈与する側に売却益が発生する可能性があります。暗号資産のまま送金する場合は、保有を続けたまま家族へ移せますが、送金ミスや時価評価の確認が必要です。

また、ウォレットごと渡す方法も考えられますが、管理者や贈与時点が曖昧になりやすいため、慎重に判断する必要があります。ここでは、家族に暗号資産を贈与する主な方法を整理します。

暗号資産を売却して現金で贈与する

暗号資産を家族に渡す方法として分かりやすいのは、いったん暗号資産を売却し、現金に換えてから贈与する方法です。例えば、保有しているビットコインの一部を売却し、100万円を子供の銀行口座へ振り込むようなケースです。

この場合、子供が受け取った財産は現金100万円として整理できます。現金であれば、受け取った側も金額を把握しやすく、贈与額を記録しやすくなります。ただし、贈与する側が暗号資産を売却した時点で売却益が出ていれば、所得税や住民税の対象になる可能性があります。

暗号資産を売却又は使用することにより生ずる利益については、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され所得税の確定申告が必要となります。

参照:暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について|国税庁

例えば、50万円で購入した暗号資産を150万円で売却し、そのうち100万円を子供に贈与するケースを考えます。この場合、子供への贈与額は100万円ですが、親側では暗号資産を売却したことによる利益の税金が発生する可能性があります。

そのため、現金で贈与する方法は分かりやすい一方で、贈与する側の売却益も確認する必要があります。取得時の価格、売却時の価格、売却数量、手数料などを整理しておかないと、所得計算ができなくなる可能性があります。

暗号資産をそのまま家族へ送金する

暗号資産を売却せず、家族の取引所口座や自己管理ウォレットへ送金する方法もあります。例えば、親が保有しているイーサリアムを、子供の暗号資産交換業者の口座へ送金するケースです。この場合、暗号資産そのものを家族へ贈与したと考えられます。

この方法では、売却手続きを挟まないため、暗号資産をそのまま保有させたい場合に使いやすい面があります。一方で、贈与額を日本円で評価する必要があります。国税庁は、個人が贈与により暗号資産を移転させた場合、所得税の計算上、贈与時の暗号資産の価額、つまり時価を総収入金額に算入する必要があると説明しています(参照:暗号資産に関する税務上の取扱いについて)。

これは、暗号資産を売却していなくても、税務上は時価で移転したものとして扱われる可能性があるという意味です。そのため、「売っていないから贈与する側には税金が関係ない」とは言い切れません。

例えば、30万円で購入した暗号資産を、時価100万円の時点で子供へ贈与するケースを考えます。この場合、贈与を受けた側では100万円分の贈与として整理されます。一方で、贈与する側でも、時価100万円を基準に所得計算が必要になる可能性があります。

この部分は、通常の現金贈与よりも分かりにくい点です。暗号資産を家族に贈与する場合は、贈与税だけでなく、贈与する側の所得税も含めて確認する必要があります。金額が大きい場合や、含み益がある暗号資産を贈与する場合は、税理士に確認した方がよいでしょう。

ちなみに、送金先アドレスを間違えると、暗号資産を取り戻せない可能性があります。銀行振込のように、受取人名を確認して差し戻せる仕組みとは異なります。送金前には、銘柄、ネットワーク、送金先アドレス、タグやメモの要否を確認する必要があります。

ウォレットごと渡す方法は慎重に判断する

家族へ暗号資産を渡す方法として、ウォレットごと引き継がせる方法を考える人もいるかもしれません。例えば、ウォレットアプリのログイン情報やリカバリーフレーズを家族に渡し、そのウォレット内の暗号資産を管理させるようなケースです。

ただし、この方法は慎重に判断すべきです。ウォレットごと渡すと、いつ誰が資産を管理していたのかが分かりにくくなる可能性があります。また、リカバリーフレーズや秘密鍵を共有すると、第三者に漏れた場合に資産を失うリスクも高まります。

暗号資産の自己管理ウォレットでは、リカバリーフレーズや秘密鍵が資産へのアクセス手段になります。これらを知っている人は、ウォレット内の資産を動かせる可能性があるため、安易に共有すると、家族間であっても管理責任が曖昧になります。

家族に暗号資産を贈与する場合は、できる限り送金履歴が残る形で、贈与した日付や数量を明確にした方が管理しやすくなります。ウォレットごと渡す方法は、税務上の説明や資産管理の面で不明点が残りやすいため、事前に専門家へ確認した方が安全です。

暗号資産の贈与額はどの価格で判断する?

暗号資産を家族に贈与する場合は、数量だけでなく、日本円に換算した金額を確認する必要があります。贈与税は日本円で計算するため、「1BTCを渡した」や「10ETHを贈与した」という記録だけでは、贈与額を判断できないためです。

そのため、贈与額を判断するときは、どの時点の価格を使うのか、また後から確認できるようにどのような記録を残すのかを整理しておくことが重要です。ここでは、贈与額を日本円で評価する際の考え方と、取引所の価格や送金履歴を記録しておく必要性について解説します。

贈与した日の時価をもとに日本円で評価する

暗号資産を家族に贈与した場合、贈与額は日本円で評価する必要があります。

国税庁は、相続や贈与により取得した暗号資産の評価方法について、活発な市場が存在する暗号資産は、納税義務者が取引を行っている暗号資産交換業者が公表する課税時期の取引価格によって評価すると説明しています(参照:暗号資産に関する税務上の取扱いについて)。

例えば、1ETHを家族に贈与した場合でも、その日の価格が30万円であれば30万円分の贈与、50万円であれば50万円分の贈与として考える必要があります。同じ数量でも、贈与する時期によって評価額は変わります。

そのため、暗号資産を贈与する場合は、贈与した日付を明確にしておくことが重要です。価格変動が大きい銘柄では、数日違うだけで評価額が大きく変わることがあります。

取引所の価格や送金履歴を記録しておく

暗号資産を家族に贈与した場合は、後から説明できるように記録を残しておく必要があります。最低限、「贈与日・銘柄・数量・日本円換算額・価格を確認した取引所・送金先・送金履歴」を整理しておくとよいでしょう。

取引所を利用して送金した場合は、送金履歴や取引履歴をダウンロードできることがあります。自己管理ウォレットから送金した場合でも、トランザクションIDを記録しておけば、ブロックチェーン上で送金履歴を確認できます。

また、贈与時の価格については、利用している暗号資産交換業者の価格画面や取引履歴を保存しておくと、後から確認しやすくなります。スクリーンショットだけでは不十分な場合もあるため、可能であれば取引所の履歴データや帳票も残しておく方が安心です。

暗号資産の贈与では、「渡したこと」だけでなく、「その時点でいくら分だったのか」を説明できることが大切です。特に、家族間の贈与は口頭で済ませてしまいやすいため、記録を残さないと後から金額や時期が曖昧になります。

家族に暗号資産を贈与するときの注意点

暗号資産を家族に贈与する場合は、税金だけでなく、受け取った後の管理方法にも注意が必要です。暗号資産は、銀行預金のように金融機関へ問い合わせれば必ず確認できるものではなく、口座やウォレットの管理状況によっては、本人や家族でも資産にアクセスできなくなる可能性があります。

特に、家族が暗号資産の扱いに慣れていない場合は、送金後の管理方法、秘密鍵やリカバリーフレーズの保管方法、贈与した事実を示す記録の残し方まで整理しておく必要があります。ここでは、家族に暗号資産を贈与するときに確認しておきたい管理面の注意点を解説します。

家族が暗号資産の管理方法を理解している必要がある

暗号資産を家族に贈与する場合、受け取る側が管理方法を理解しているかを確認する必要があります。暗号資産は、銀行預金や証券口座の資産とは管理方法が異なるためです。

取引所で管理する場合は、ログイン情報、二段階認証、出金制限、本人確認などを理解しておく必要があります。自己管理ウォレットで管理する場合は、秘密鍵やリカバリーフレーズの重要性を理解していなければなりません。

例えば、家族が暗号資産の管理に慣れていない場合、リカバリーフレーズをスマートフォンのメモ帳やクラウドに保存してしまうことがあります。しかし、このような保管方法は、不正アクセスや情報流出のリスクがあるため注意しなければいけません。

贈与する側が暗号資産に詳しくても、受け取る側が管理できなければ、紛失や不正送金のリスクが高まります。家族に贈与する前に、どの口座やウォレットで管理するのか、ログイン情報や認証手段をどう保管するのかを確認しておくことが重要です。

秘密鍵やリカバリーフレーズの共有には注意が必要である

自己管理ウォレットを使う場合、秘密鍵やリカバリーフレーズの扱いには特に注意が必要です。これらは、ウォレット内の暗号資産にアクセスするための重要な情報です。

リカバリーフレーズとは、ウォレットを復元するために使う複数の単語の組み合わせです。スマートフォンを紛失した場合や、ウォレットアプリが使えなくなった場合でも、リカバリーフレーズがあれば別のウォレットで資産を復元できる可能性があります。

一方で、リカバリーフレーズを第三者に知られると、ウォレット内の暗号資産を移される危険があります。家族に共有する場合でも、紙で保管するのか、金属プレートに記録するのか、誰がどこで管理するのかを明確にしておく必要があります。

また、ウォレットアプリのログインパスワードだけを共有しても、資産を安全に引き継げるとは限りません。アプリが使えなくなった場合や、端末を紛失した場合には、リカバリーフレーズや秘密鍵がなければ復元できないことがあります。

暗号資産を家族に贈与する場合は、税金だけでなく、資産へアクセスするための情報をどう管理するかも重要です。特に高額な暗号資産を贈与する場合は、安易にメッセージアプリやメールでリカバリーフレーズを送らないようにしましょう。

贈与契約書や記録を残しておく

家族間で暗号資産を贈与する場合でも、贈与契約書や記録を残しておくと説明しやすくなります。贈与は、贈与する側が「あげる」と意思表示し、受け取る側が「もらう」と承諾することで成立します。

口頭でも贈与は成立しますが、後から税務上の確認が必要になった場合、口頭だけでは説明が難しくなることがあります。特に暗号資産は価格変動が大きいため、いつ、どの銘柄を、どれだけ贈与したのかを明確にしておく必要があります。

贈与契約書には「贈与日・贈与者・受贈者・暗号資産の銘柄・数量・日本円換算額・送金先・贈与の意思」などを記載しておくと整理しやすくなります。あわせて、送金履歴や価格の記録も保存しておくと、後から確認しやすくなります。

家族間の贈与では、「親子だから大丈夫」と考えて記録を残さないケースがあります。しかし、税務上は家族間でも財産の移転として確認される可能性があります。贈与税の申告が必要になる場合もあるため、記録を残しておくことは重要です。

まとめ

暗号資産を家族に贈与する場合、受け取る側には贈与税がかかる可能性があります。年間110万円の基礎控除はありますが、暗号資産だけでなく、その年に受け取った現金やその他の財産も含めて判断する必要があります。

また、贈与する側にも税金が関係する場合があります。暗号資産を売却して現金化すれば売却益に所得税や住民税がかかる可能性がありますし、暗号資産のまま贈与する場合でも贈与時の時価をもとに所得計算が必要になる可能性があります。

暗号資産を贈与する際には、管理方法にも注意が必要です。家族がウォレットや取引所の使い方を理解していなければ、送金ミスやアクセス不能のリスクがあります。秘密鍵やリカバリーフレーズを共有する場合も、保管方法を慎重に決める必要があります。

家族に暗号資産を贈与する場合は、税金、記録、ウォレット管理を分けて考えることが大切です。金額が大きい場合や、含み益のある暗号資産を贈与する場合は、事前に税理士などの専門家へ確認するとよいでしょう。