暗号資産の利益が膨らんでくると、避けて通れないのが確定申告です。取引所をいくつもまたぎ、DeFiやNFTにも手を出していると、表計算ソフトでの手計算はあっという間に破綻します。年をまたいだ取引、海外取引所の履歴、ステーキングの報酬まで含めて損益を出すのは、もう専用ツールなしでは現実的ではありません。
この記事では、暗号資産の損益計算・確定申告に使えるサービスを、国内・代行・海外の3タイプに分けて紹介します。まず申告の基本を押さえ、選び方の軸を示したうえで、各サービスの対応範囲・料金・運営会社まで具体的に見ていきます。自分の取引スタイルに合う1本を見つける材料にしてください。
最初に確認しておきたいのが、いわゆる「20万円ライン」です。給与をもらっている会社員の場合、給与以外の所得(暗号資産の利益を含む雑所得)が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。暗号資産の利益は原則として雑所得の総合課税で、給与などと合算して税率が決まります。利益が出た年は、まず自分が申告の対象かどうかを確かめるところから始めてください。具体的な税額や控除は個別の事情で変わるので、最終的な判断は税理士や税務署に確認するのが安全です。
暗号資産の確定申告ソフトとは|なぜ必要か
暗号資産の損益計算ソフトは、取引所やウォレットの履歴を取り込んで、年間の損益を自動で算出し、申告に使える形に整えてくれるツールです。手作業でやると何時間もかかる集計を、数分から数十分に縮めてくれます。
損益計算ソフトの役割
やってくれることは大きく3つです。ひとつ目は履歴の取り込み。取引所のAPIやCSVをつないで、売買・送金・交換の記録をまとめて読み込みます。ふたつ目は損益の計算。日本円換算や取得価額の計算を、総平均法・移動平均法といった決められた方法に沿って自動で処理します。3つ目は書類の出力。年間の損益や、確定申告に転記できる集計データを出してくれます。
複数の取引所、海外取引所、DeFi、NFTが絡むほど、手計算のミスは増えます。ソフトを使う一番の価値は、計算の速さよりも「抜け漏れと計算違いを減らせる」ところにあります。
申告が必要になるライン
暗号資産で得た利益は、原則として雑所得に区分され、総合課税の対象になります。会社員で給与を1か所からもらっている人なら、給与以外の所得が年20万円を超えると申告が必要です。扶養に入っている人や個人事業主など、立場によって基準は変わります。利益が出たら、まず自分のケースで申告が要るのかを早めに確認しておきましょう。判断に迷うときは税務署や税理士に相談するのが確実です。
確定申告ソフトの選び方|5つのチェック
ソフトは数が多く、対応範囲も料金もばらばらです。自分の取引に必要な条件から逆算して選ぶと、迷いません。チェックすべきは次の5点です。
対応取引所・通貨数
自分が使っている取引所に対応しているかは大前提です。国内取引所はほとんどのソフトが押さえていますが、海外取引所やマイナーな通貨は対応に差が出ます。取扱通貨が多いソフトほど、アルトコインの履歴も取りこぼしにくくなります。
DeFi・NFT・海外取引所への対応
DeFiのスワップや流動性提供、NFTの売買は、取引所のCSVだけでは追いきれません。ウォレットをつないでオンチェーンの動きを取り込めるか、ブリッジやL2に対応しているかは、DeFi勢にとって重要な分かれ目です。
会計ソフト連携と法人対応
freee会計・弥生会計・マネーフォワードクラウドへ仕訳データを出せると、法人や個人事業主の経理がぐっと楽になります。法人として暗号資産を扱うなら、法人対応の有無も確認しておきましょう。
料金・無料枠(取引件数の上限)
多くのソフトに無料プランがありますが、たいていは取引件数に上限があります。年に数件しか売買しない人なら無料で足りますが、件数が増えると有料プランが前提になります。料金は取引件数や機能で段階分けされているので、自分の年間取引量に合うプランを見ます。料金は各社の公式情報(記載時点)で必ず確認してください。
サポート体制(税理士監修・計算代行・日本語対応)
不安が強い人は、税理士の監修が入っているか、計算そのものを代行してもらえるか、日本語のサポートがあるかを見ます。海外ツールはUIが日本語でも、問い合わせ窓口は英語というケースが多いので、そこは分けて考えてください。
【国内】暗号資産の確定申告に強いソフト
ここからは、日本語のサポートと日本の税制に対応した国内サービスを、1社ずつ紹介します。料金や対応内容は各社の公式情報(記載時点)にもとづきます。最新の料金は申し込み前に公式サイトで確認してください。
クリプタクト|株式会社pafin
公式サイト:https://www.cryptact.com
クリプタクトは、株式会社pafin(東京都千代田区麹町3-2-4 フロンティア麹町5階)が運営する、国内では定番格の損益計算ツールです。対応している取引所・通貨の数が多く、自動で履歴を取り込んで損益を計算します。総平均法と移動平均法の両方に対応し、計算結果はダウンロードして確定申告に使えます。無料プランがあり、有料プランは年6,600円から(公式による・記載時点)。DeFiやNFTの取引も自動で識別して計算できます。何を選べばいいか分からない人が、まず触ってみる1本として向いています。
Gtax|株式会社Aerial Partners
公式サイト:https://crypto-city.net
Gtaxは、株式会社Aerial Partners(東京都港区)が運営する損益計算サービスです。国内外70を超える取引所・ウォレットに対応し、総平均法と移動平均法の両方で計算できます。年間取引報告書や損益計算書を出力でき、freee会計・マネーフォワードクラウド・弥生会計などに仕訳データを渡せます。無料プランは年100件まで、有料は年5,500円から(公式による・記載時点)。会計ソフトとの連携を重視する人や、税理士に渡す前提で整えたい人に向いています。
クリプトリンク|クリプトリンク株式会社
公式サイト:https://cryptolinc.com
クリプトリンクは、クリプトリンク株式会社が運営するサービスです。損益計算ツールだけでなく、計算代行や税務調査サポート、暗号資産に詳しい税理士の紹介まで踏み込めるのが特徴です。複数の取引所・ウォレットの取引データをまとめて管理し、海外取引所やNFTの取引にも対応します。総平均法・移動平均法の両方に対応し、無料プランのほか、年間500件以下なら月300円からという比較的安価な料金設定です(公式による・記載時点)。自分で計算しつつ、いざとなったら専門家の手を借りたい、という人に合います。
defitact|株式会社pafin
公式サイト:https://defitact.com
defitactは、クリプタクトと同じ株式会社pafinが運営する、DeFiとNFTに特化したサービスです。「Web3の家計簿」をうたい、ウォレットをつなぐだけでDeFiの取引やNFTの動きを可視化します。Ethereum・Polygon・Arbitrum・Optimismなど複数のブロックチェーンに対応し、登録不要で無料から試せます。取引所の売買はクリプタクト、ウォレット側のDeFi・NFTはdefitact、と使い分けると取りこぼしが減ります。DeFiの取引が多くて損益が読めない、という人の入口になります。
暗号会計RIKYU|株式会社RIKYU
公式サイト:https://rikyu.io
暗号会計RIKYUは、株式会社RIKYUが運営する、オンチェーン資産に強いクラウドサービスです。ウォレット上の取引の損益計算から仕訳の生成、確定申告までを自動化します。個人向けの「RIKYU」、法人向けの「RIKYU Biz」、税理士・会計事務所向けの「RIKYU Partner」の3製品が用意され、freee・マネーフォワード・Xeroと連携できます。DeFiを含むオンチェーンの取引をまとめて会計まで通したい人に向いています。料金は製品ごとに分かれているので、公式サイトで確認してください。
【代行】自分で計算しない「丸投げ」という選択
取引が多すぎる、DeFiが複雑すぎる、そもそも時間がない。そういう人には、計算そのものを専門家に任せる「代行型」という選択肢があります。自動ツールを自分で操作する代わりに、履歴を渡して計算を丸ごとお願いする形です。
計算代行の使いどころ
代行が向くのは、海外取引所やDeFi、NFT、ブロックチェーンゲームが入り混じって、自動ツールでもエラーが多発するケースです。取引件数が数千・数万に達している人や、確定申告の期限が迫っていて自分で手を動かす余裕がない人にも合います。費用はかかりますが、計算ミスのリスクと時間を買う、という考え方です。
Cryp-tax(クリプタックス)|株式会社トライデントリサーチ
公式サイト:https://cryp-tax.net
Cryp-tax(クリプタックス)は、株式会社トライデントリサーチが運営する、損益計算の代行サービスです。自動ツールではなく、専門のスタッフが取引履歴をもとに計算を代行します。海外取引所・NFT・DeFi・ブロックチェーンゲームにも対応し、提携税理士による確定申告のサポートまでつなげられます。料金は取引の規模で分かれ、LINEでの無料相談から始められます(公式による・記載時点)。履歴を渡すだけで終わらせたい人向けです。
なお、前のセクションで紹介したクリプトリンクも、ツールに加えて計算代行のサービスを持っています。普段はツールで自分で計算しつつ、難しい年だけ代行に切り替える、といった使い方もできます。
【海外ツール】グローバル対応で選ぶなら
海外取引所をいくつも使っている人は、海外発のツールが選択肢に入ります。連携できる取引所やチェーンの数が多いのが強みです。ただし注意点があります。UIが日本語でも、問い合わせ窓口は英語というケースがほとんどで、日本の税制(日本円換算や総平均法・移動平均法)への対応にも差があります。比較表の注記をよく見て、日本での使い勝手を確かめてください。
ツール名 | 本拠 | 主な機能 | 無料枠 | 日本語UI | 日本語サポート窓口 | 日本の税制対応 | 公式URL |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
Koinly | 英・ロンドン | 損益計算・税レポート | あり(レポートDLは有料) | あり(日本語サイト) | 未確認 | あり(ただし移動平均法のみ・総平均法は非対応に注意) | |
CoinTracking | 独・ミュンヘン | 税計算・損益・ポートフォリオ | あり(閲覧中心) | 未確認 | 未確認 | 多数国に対応(日本対応は要確認) | |
CoinTracker | 米・サンフランシスコ | 損益・税レポート・管理 | あり(税フォームDLは有料) | 未確認 | 未確認 | 対応国に日本が含まれるか要確認 | |
ZenLedger | 米・シアトル | 税レポート(米国向け) | 無料プランあり | なし | なし | 日本非対応(米国IRS特化) | |
Coinpanda | ノルウェー・オスロ | 損益・税レポート | あり(クレカ不要) | あり(言語切替) | 未確認 | 多数国に対応(日本対応は要確認) | |
CoinLedger | 米国 | 損益・税レポート | あり(レポートDLは有料) | UIは英語(日本向けページあり) | 未確認 | 日本向けページで日本の税ルール対応を公称(方式の詳細は要確認) |
海外ツールの中で日本を意識しているのはKoinlyとCoinLedgerですが、Koinlyは移動平均法のみの対応で、日本でよく使われる総平均法に対応していない点には注意が必要です。ZenLedgerのように米国の申告に特化したツールは、日本の確定申告には向きません。結局のところ、日本の取引所が中心なら国内ツール、海外取引所が大半なら海外ツールで取り込んでから国内ツールや税理士で仕上げる、という併用が現実的です。
比較一覧表(全12サービス)
ここまで紹介したサービスを1枚にまとめます。タイプと運営、無料枠、日本の税制対応、公式URLで俯瞰してください。
サービス名 | タイプ | 運営・本拠 | 無料枠 | 日本の税制対応 | 公式URL |
|---|---|---|---|---|---|
クリプタクト | ソフト(国内) | 株式会社pafin(東京・千代田区) | あり | 総平均・移動平均 両対応 | |
Gtax | ソフト(国内) | 株式会社Aerial Partners(東京・港区) | あり(年100件) | 総平均・移動平均 両対応 | |
クリプトリンク | ソフト+代行(国内) | クリプトリンク株式会社(埼玉・さいたま市) | あり | 対応(詳細は公式確認) | |
defitact | DeFi可視化(国内) | 株式会社pafin(東京・千代田区) | あり(お試し) | DeFi/NFTの可視化中心 | |
暗号会計RIKYU | ソフト(国内・オンチェーン特化) | 株式会社RIKYU(東京・渋谷区) | 製品別(公式確認) | 申告まで自動化 | |
Cryp-tax | 代行(国内) | 株式会社トライデントリサーチ(東京・港区) | 無料相談あり | 提携税理士が申告サポート | |
Koinly | ソフト(海外) | 英・ロンドン | あり | 移動平均法のみ(総平均法は非対応) | |
CoinTracking | ソフト(海外) | 独・ミュンヘン | あり | 日本対応は要確認 | |
CoinTracker | ソフト(海外) | 米・サンフランシスコ | あり | 日本対応は要確認 | |
ZenLedger | ソフト(海外) | 米・シアトル | あり | 日本非対応(米国向け) | |
Coinpanda | ソフト(海外) | ノルウェー | あり | 日本対応は要確認 | |
CoinLedger | ソフト(海外) | 米国 | あり | 日本向けページあり(詳細は要確認) |
まとめ|タイプ別のおすすめ
最後に、読者のタイプ別に整理します。国内取引所が中心で手軽に始めたいなら、定番のクリプタクトかGtax。コストを抑えつつ専門家の手も借りたいならクリプトリンク。DeFiやNFTが多いならdefitactやRIKYUでオンチェーンを押さえる。自分では手に負えないと感じたら、Cryp-taxのような代行に丸投げする。海外取引所が大半なら、Koinlyなどの海外ツールで取り込んでから日本の税制で仕上げる。この順で当てはめると、自分に合う1本が絞れます。
どのツールを使っても、最終的な申告の責任は本人にあります。計算結果に不安が残るときや、取引が複雑なときは、暗号資産に強い税理士に確認してもらうのが安全です。資産の全体像を整理したい場合は、別記事の暗号資産ポートフォリオ管理アプリの比較もあわせて読んでみてください。
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FAQ|暗号資産の確定申告でよくある質問
Q. 利益がいくらから申告が必要ですか?
A. 給与を1か所からもらう会社員の場合、給与以外の所得(暗号資産の利益を含む雑所得)が年20万円を超えると申告が必要です。扶養に入っている人や個人事業主は基準が異なるため、自分のケースを税務署や税理士に確認してください。
Q. 無料ツールだけで完結できますか?
A. 取引件数が少なければ、無料プランの範囲で損益計算まで終わることもあります。ただ、多くのソフトは無料枠の件数に上限があり、件数が増えると有料プランが前提になります。確定申告の手続き自体は、計算結果をもとに自分で行うか、税理士に依頼します。
Q. 海外取引所やDeFiの損益も計算できますか?
A. ツールによります。国内ツールでも海外取引所やDeFiに対応するものはありますが、対応範囲に差があります。DeFiやNFTが多い場合は、ウォレットを直接つないで取り込めるツール(defitactやRIKYUなど)や、計算代行の利用が現実的です。
Q. 自分で計算するのと税理士に丸投げするの、どちらが得ですか?
A. 取引が少なくシンプルなら、ツールで自分で計算したほうが費用を抑えられます。取引が膨大、海外やDeFiが複雑、時間がない、という場合は、計算ミスのリスクと手間を考えると代行や税理士依頼のほうが結果的に安く付くこともあります。取引量と複雑さで判断してください。




