「セキュリティ対策が大事なのはわかっている。でも、設定が面倒だ」
そんな本音が、暗号資産投資家のリアルな防衛ラインを脅かしています。

暗号資産経験者を対象としたアンケート調査の結果、利用するすべてのサービスで二段階認証(2FA)を設定している投資家は、わずか29.4%にとどまることが判明しました。

最大層を占めたのは「一部のサービスのみ設定」という中途半端な防衛体制であり、約4.5割もの投資家が「設定したつもり」の状態に置かれています。

さらに、セキュリティに対する正直な感想を聞いたところ、「重要だとわかっているが面倒」と回答した層が43.7%で最多となりました。
安全性よりも目先の効率を優先してしまう、危うい実態が浮き彫りになっています。

本記事では、保有額や年代別のクロス分析を交えながら、投資家が抱く「セキュリティ意識と行動のギャップ」を紹介します。

あなたの資産を守るための「5分で終わる防衛策」についても解説し、ハッキング被害を未然に防ぐための本質的な対策をお届けします。

完全設定はわずか29.4%──投資家の2FA設定実態

回答

回答数

割合

一部のサービスに設定

333人

44.6%

全てのサービスに設定済み

219人

29.4%

未設定

148人

19.8%

2段階認証を知らない

46人

6.2%

「一部のサービスに設定」44.6%──最大層が抱える盲点

今回の調査で最も大きな割合を占めたのは、利用している暗号資産関連サービスのうち「一部のみ」で二段階認証(2FA)を設定している層でした。
44.6%という数値は、メインの取引所さえ守っていれば十分であるという、多くの投資家が抱く「限定的な防犯意識」を浮き彫りにしています。

しかし、攻撃者は防御の薄い箇所を執拗に狙うため、この設定状況は非常に危ういバランスの上に成り立っているといえます。
一箇所でもセキュリティに穴があれば、そこから芋づる式に他の資産や個人情報が危険にさらされるのは、暗号資産の世界では常識です。

「主要な場所は守っている」という安心感こそが、実は最大の脆弱性になりかねません。
利便性を優先して一部の認証を省く行為は、自ら資産を危険にさらしているのと同じであり、すべての接点での設定が強く求められます。

暗号資産は自己責任の原則が徹底されているため、一度のミスが取り返しのつかない事態を招きます。
「設定しているつもり」という油断を排除し、管理下にあるすべての口座やウォレットの防護を完遂することが、投資家としての最低限のたしなみです。

未設定19.8%+知らない6.2%──4人に1人がセキュリティ空白

暗号資産を保有しながら、二段階認証を一切「設定していない」投資家が19.8%、さらに「2段階認証を知らない」と回答した層が6.2%存在することは、看過できない事実です。
両者を合計すると26.0%、つまり約4人に1人もの投資家が無防備な状態で市場に参加している実態が見えてきました。

この層は、パスワードが一度流出するだけで、瞬時にすべての資産を失うリスクを常に背負っています。
現在の暗号資産市場において、2FAは「推奨」ではなく「必須」の防護策と考えるべきものです。

それにもかかわらず設定を行わない背景には、設定手順への苦手意識や、そもそもリスクを正しく認識できていないという教育の欠如が推測されます。
暗号資産取引所がどれほど堅牢なシステムを構築しても、ユーザー側の入り口が空いていれば防ぎようがありません。

セキュリティ空白地帯を放置することは、市場全体の信頼性をも損なう要因となります。
個人の資産防衛意識の向上が、結果として暗号資産のエコシステム全体を強固にすることに繋がります。

43.7%が「重要だとわかっているが面倒」──本音と行動のギャップ

セキュリティへの感想

回答数

割合

重要だとわかっているが面倒

326人

43.7%

最低限はやっている

205人

27.5%

しっかりやっている自信がある

160人

21.5%

あまり気にしていない

55人

7.4%

「一部のみ設定」層の59.5%が「面倒」を自認

セキュリティ対策に対する正直な感想を尋ねたところ、43.7%もの投資家が「重要だとわかっているが面倒」と回答しました。
特筆すべきは、2FAを「一部のサービスにのみ設定」している層に絞ると、この「面倒」を自認する割合が59.5%まで跳ね上がる点です。

重要性を理解していながら、最後まで設定をやり切れずに途中で挫折している投資家のリアルな姿が浮かび上がりました。
設定を始めたものの、複数の取引所やウォレットそれぞれで認証アプリを切り替える煩雑さに直面し、断念してしまうケースは少なくありません。

新規にサービスを増やすたびに2FAの再設定が必要となるため、運用が後手に回っているケースも多いと推測されます。
こうした「面倒さ」が積み重なることで、結果として防御に隙間が生まれてしまうのです。

しかし、この「わずかな手間」を惜しむ代償は、資産の全喪失という極めて重いリスクです。
利便性と安全性は常にトレードオフの関係にありますが、暗号資産管理においては安全性を最優先すべきなのは言うまでもありません。

「あまり気にしていない」7.4%──正常性バイアスの危険

「あまり気にしていない」と回答した7.4%の層は、セキュリティ対策における最大の落とし穴に陥っています。
これは典型的な「正常性バイアス」であり、根拠のない自信が客観的なリスクを覆い隠してしまっている状態を指します。

ハッキング被害は対岸の火事ではなく、インターネットに接続しているすべての端末が常に攻撃の対象であるという認識が欠如しています。
特に注目すべきは、保有額1万円未満の少額投資家層に絞ると、「あまり気にしていない」と回答した割合が18.7%まで跳ね上がる事実です。

「金額が小さいから狙われない」という心理が働いているのでしょうが、攻撃者にとっては金額の多寡よりも防御の薄さが標的選定の基準となります。
無知や過信は、攻撃者にとって最も侵入しやすい隙となるのです。

「自分だけは大丈夫」という思い込みが打ち砕かれたときには、すでに資産は手元にないのが暗号資産の世界の厳しさです。
過信を捨て、最悪の事態を想定して二重、三重の防壁を築くことこそが、賢明な投資家の歩むべき道でしょう。

保有額でくっきり分かれる2FA設定格差

保有額

n数

全設定

一部設定

未設定

知らない

1万円未満

155人

27.1%

25.2%

31.6%

16.1%

1万〜10万円未満

203人

24.6%

51.2%

18.2%

5.9%

10万〜50万円未満

152人

33.6%

51.3%

13.2%

2.0%

50万〜100万円未満

137人

26.3%

53.3%

19.7%

0.7%

100万〜500万円未満

74人

35.1%

43.2%

16.2%

5.4%

500万円以上

25人

56.0%

32.0%

12.0%

0.0%

1万円未満層の47.7%がノーガード

保有資産額と二段階認証の設定状況を掛け合わせると、資産額が少ない層ほどセキュリティを軽視する傾向が鮮明になりました。
特に資産額1万円未満の層では、「未設定」が31.6%、「2段階認証を知らない」が16.1%と、合計で47.7%もの投資家が無防備な状態にあります。

他の層の倍以上にあたる数値であり、「少額だから盗まれても痛くない」という心理的な油断が、基本的な防護策の放棄に直結していると考えられます。
しかし、暗号資産のセキュリティにおいて、保有額の多寡は本来関係ありません。

たとえ少額であっても、セキュリティに穴があれば、それを足がかりに他の個人情報や連携サービスが狙われるリスクがあるからです。
「守る価値がない」と投資家自身が判断してしまうことこそが、攻撃者にとって最大のチャンスとなってしまいます。

少額投資家であっても、将来的な資産拡大を見据えるのであれば、最初から鉄壁の防御を習慣化しておくべきです。
資産が増えてから慌てて設定するのではなく、入金額がゼロのうちから2FAを導入する姿勢こそが、長期的な投資家として正しい歩み方です。

500万円以上層の56.0%が完全設定

一方で、保有額が500万円を超える高額保有層では、「全てのサービスに設定済み」と回答した割合が56.0%まで上昇します。
1万円未満層の27.1%と比較すると約2倍の差があり、保有額とセキュリティ意識が明確に比例する構造が浮かび上がりました。

まとまった資金を運用する投資家ほど、不正アクセスによる損失が致命的なダメージとなることを理解しているのでしょう。
高額保有者は複数の認証手段を組み合わせ、リスクを最小限に抑えるための手間を惜しみません。

こうした「手間をかけてでも守る」という姿勢こそが、長期的に市場で生き残る投資家の共通項であると分析できます。
「全資産を失っても再起できる金額」と「失えば人生が変わる金額」では、当然ながら防御に対する真剣度が変わってくるのです。

ただし、本来であれば全ての保有額帯で完全設定が標準であるべきです。
資産規模を問わず、自分の資産は自分で守るという暗号資産投資の本質的な原則に立ち返る必要があります。

年代・経験年数による2FAリテラシーの差

年代

n数

全設定

一部設定

未設定

知らない

20代以下

163人

30.1%

50.3%

17.8%

1.8%

30代

207人

30.4%

52.2%

12.6%

4.8%

40代

187人

28.3%

43.9%

20.9%

7.0%

50代

120人

28.3%

31.7%

30.8%

9.2%

60代以上

69人

29.0%

33.3%

24.6%

13.0%

50代の未設定+知らない率40.0%──中高年層に潜むリスク

年代別にクロス集計を行うと、50代における2FAの「未設定」率が30.8%、「2段階認証を知らない」が9.2%と、両者を合計した40.0%が全世代でワーストの数値となりました。
資産形成の中核を担う世代でありながら、セキュリティ意識が他年代と比較して大きく後れを取っている実態が浮き彫りになっています。

50代といえば、退職金や老後資金の運用先として暗号資産に目を向ける層が増えている年代です。
それにもかかわらず、最低限の防護策が浸透していないのは深刻な課題と言わざるを得ません。

60代以上でも「2段階認証を知らない」が13.0%と最も高く、シニア層への啓蒙が業界全体の急務となっています。
家族や周囲の若年層がサポートするか、あるいは取引所側がより親切な設定ガイドを提供するなど、世代間ギャップを埋める取り組みが不可欠です。

中高年層が安心して暗号資産投資を行える環境整備こそ、市場の健全な拡大に繋がる本質的な課題でしょう。

投資1年未満層の16.9%が「2FAを知らない」

経験年数

n数

全設定

一部設定

未設定

知らない

1年未満

142人

35.2%

23.9%

23.9%

16.9%

1〜2年未満

214人

26.6%

52.3%

15.9%

5.1%

2〜3年未満

195人

24.1%

50.3%

22.6%

3.1%

3〜5年未満

116人

31.0%

44.8%

20.7%

3.4%

5年以上

79人

36.7%

46.8%

15.2%

1.3%

投資経験年数別に見ると、興味深い二極化の構造が確認されました。
1年未満の新規参入層では、「全てのサービスに設定済み」が35.2%と高水準である一方、「2段階認証を知らない」も16.9%と全経験年数で最高となっています。

セキュリティ意識の高い層と、まったく知識のない層が混在している状態で、参入時の知識ギャップが極めて大きいことが分かりました。
経験年数が伸びるにつれて「知らない」率は劇的に低下し、5年以上のベテラン層では1.3%まで減少します。

取引を重ねるなかで自然とセキュリティ知識が身についていく構造が見て取れますが、その間に被害に遭ってしまっては元も子もありません。
新規参入時の最初の1ヶ月で2FAを完全設定できるかどうかが、その後の投資人生における資産防衛力を大きく左右するといえるでしょう。

5年以上のベテラン層が「全設定」率36.7%でトップとなっている事実は、長く市場で生き残るためにセキュリティが必須要件であることを物語っています。
新規参入者こそ、ベテランの行動を真似ることが最短の生存戦略となります。

まとめ

本調査を通じて、暗号資産投資家の多くがセキュリティの重要性を理解しつつも、「面倒」という心理的な壁に阻まれている実態が浮き彫りとなりました。
二段階認証(2FA)を全てのサービスで設定している投資家はわずか29.4%にとどまり、43.7%もの投資家が「重要だとわかっているが面倒」と本音を吐露しています。

特に保有額1万円未満の層では47.7%がノーガード状態にあり、50代の未設定+知らない率は40.0%と全世代でワーストです。
利便性を優先して防御を疎かにする代償は、資産の全喪失という取り返しのつかないリスクであることを肝に銘じるべきでしょう。

「面倒」の壁を超えるための具体的な3ステップは、以下の通りです。

第一に、Google Authenticatorなどの認証アプリをスマートフォンにインストールします。

第二に、保有している全ての取引所・ウォレットを棚卸しし、例外なく2FAを有効化します。

第三に、復旧用のバックアップコードを必ず紙に書き出し、オフラインで安全に保管します。

設定作業は実質5分程度で完了する単純な作業であり、その数分を惜しんで将来の資産喪失リスクを背負い続けるのは、投資判断として極めて非効率です。
わずか5分の手間が、あなたの将来の資産と安心を確実に守り抜くことに繋がります。

調査概要

調査実施日:2026年4月10日
調査方法:インターネット調査
調査対象:国内在住の男女(暗号資産に投資している人、投資したことのある人)
有効回答数:746名
実施機関:株式会社Clabo

調査設問項目

  • 暗号資産(仮想通貨)の投資経験はありますか?
  • 暗号資産への投資経験年数はどのくらいですか?
  • 保有している暗号資産の総額はどのくらいですか?
  • 2段階認証(2FA)は設定していますか?
  • セキュリティ対策について正直にどう感じていますか?